働き方改革は日本経済をダメにする?
働き方改革関連法案が施行されました。働き方改革の最大のポイントは、労働時間法制の見直しと雇用形態に関わらない公正な待遇の確保(同一労働同一賃金)。残業の上限規制や有給休暇取得の義務付けなどには罰則も設けられるなど、労使双方に戸惑いが広がっているようです。
ある程度の準備期間が設けられましたが、確かに「残業するなといわれてもやらなきゃいけないことは変わらない。家で仕事するしかない。」という労働者や「忙しい時期に、残業してくれなかったり、休まれたりして、受注できなかったりしたら、死活問題だ。」と嘆く社長の声が聞こえてきます。
「仕事があっても仕事ができなかったり、注文があっても受注できなかったりという事態が続くなんて、日本の経済大丈夫?」と心配になります。
これからの日本経済に大きな影響を及ぼす生産年齢人口の急減
わが国は少子高齢化が進み、人口は減少に転じました。総人口の減少もそうですが、生産年齢人口(15~65歳)の減少スピードはもっと急速です。(図表-1)
働き手がいなくなるのですから、経済活動そのものに大きな影響が出てくるのは目に見えています。
問題の働き方改革は、人口、特に生産年齢人口が減少する社会に対応するため、労働力の確保と労働生産性向上を目的として進められています。労働力の減少は、経営規模の大小に関わらず人手不足に悩む経営者の皆さんにとって、まさに非常事態ですよね。働き方改革を迫られているわが国の状況は、すでに、企業経営の足元を脅かしているのです。
労働者の身であれば、「家で残業だよ。」とか「残業代がなくなると、生活が・・・。」などと、ヤキトリ屋で愚痴っていれば済みますが、社長はそうは行きません。愚痴っている従業員にやる気になってもらい、元気な新人に来てもらわなければならないのです。
中小企業従業員の満足度向上に必要な要素とは?
仕事に対する満足や不満足について、ハーズバーグ※1は、満たされても満足を感じないが満たされないと不満足を覚える衛生要因と、満たされれば満足を覚えるが満たされなくとも不満を感じない動機付け要因があると説いています。
衛生要因とは、作業条件、職場環境、政策・管理などで、給料も多ければ多いほうがいい(満足しない)という意味でこちらに含まれます。動機付け要因とは、仕事上の達成感ややりがいといった仕事の内容に関わるものです。
働き方改革の中心となるのは、衛生要因が中心になっています。ヤキトリ屋の愚痴は、常に満足を感じないという衛生要因の発露と言えるでしょう。その上、衛生要因への対応は、大企業が得意とするところです。働き方対策として週休3日制を発表したマイクロソフトはその典型でしょう。
一方、動機付け要因は、従業員一人ひとりの心に働きかける必要があります。従業員を数で考える大企業が不得意な分野です。社員数が少ない中小企業は、動機付け要因に注力すべきなのです。
また、人間は意味を求める生き物です。「何故、自分は働くのか?この会社で働くことの社会的意義は何か?」、より根源的な意義を会社や社長と共有できれば、社員のやる気は燃え上がります。これは、週休3日制など制度改革だけで、社員のやる気が起きると考える大企業には理解できないかもしれません。
企業の負担が懸念され、多くの支援策が用意されている今こそ中小企業が成長するチャンスなのです。中小企業への適用が始まる、来年4月までに会社の心身の強化を進めましょう。
「仕事は生活の方便ではない。生活の目的であり、働くことが人生の価値であり、人生の歓喜である。」(オーギュスト・ロダン「人生心得帖」(藤尾英昭・監修/致知出版社)
※1:フレデリック・ハーズバーグ・・・アメリカの臨床心理学者。二要因(動機付け・衛生)理論が有名
(岡部 眞明/経営コンサルタント)