ペットの平均寿命は延びる傾向に
人生100年時代が現実化してきた昨今、ペットの寿命も同様に延びてきています。一般社団法人 ペットフード協会の2016年の全国犬猫飼育実態調査によると犬の平均寿命が14.36歳、猫の平均寿命は15.04歳といわれています。ここ20年でペットの高齢化がさらに進んでいると感じています。
このようにペットの高齢化が進む現在、より健康に長生きしてもらうためにどのようなことを心掛けていけばよいかを解説します。
ペットの高齢化について3つの環境要因
近年、ペットの平均寿命の延長については、2016年6月24日に本誌へ寄稿しましたが、①栄養環境、②生活環境、③医療環境、これら3つの環境の向上によるものと考えられます。
1.栄養環境の向上動物栄養学の発達により、ドッグフードにもより質の良い物が求められるようになりました。一昔前、人の食べ残しを与えていた時代を振り返ると、今日の食餌は栄養バランスの整ったものが多く、またたくさんのメーカーがこぞって商品開発に取り組んでいることもペットショップのドッグフード陳列棚を見るとわかります。
2.生活環境の向上屋外飼育から室内飼育へと人と同じ環境下での生活が当たり前となってきました。これは、ペットの小型化が進んできたこと、ストレス社会に生きる我々人間が癒しを動物に求めてきていることなどの社会的な変化が、その生活環境の変化につながっているのではないでしょうか。このような背景のもと人と同様、あるいはそれ以上の生活環境が確保され、愛犬の環境的ストレスが軽減されているように思います。
3.医療環境の向上近年、獣医療の発展と予防医療の浸透が顕著に認められます。CT、MRIなどの高度医療機器を用いての診断技術の発達はもちろんですが、診療現場においては一般検査機器の発達も著しいものがあります。血液検査、レントゲン検査、超音波検査などはどの動物病院でも日常的に行う検査となりました。
このような検査機器の発達と充実により病気の早期発見、確定診断技術の向上、治療方法の確立へと繋がるようになりました。また、フィラリア症予防、混合ワクチン接種など予防医学の発達とそれら予防をすることが常識的になってきていることにも医療環境の向上につながってきています。
ペットに健康で長生きしてもらうために注意すべきポイント
このようにペットの高齢化が進む中で、健康で長生きしてもらうためにどのような点に注意していけばよいか考えていきたいと思います。これに関しては、獣医療の観点からいくつかのポイントをあげていきたいと思います。
1.定期的な健康診断を受けること若齢動物から高齢動物に至るまで共通していえることです。
1歳~6歳: 年に1回の血液検査、超音波検査など
6歳~11歳: 年に2回の血液検査、超音波検査、レントゲン検査
12歳以降: 年に3~4回の血液検査、超音波検査、
年に2~3回のレントゲン検査
若齢期においては、消化器症状、呼吸器症状で受診する動物が多くみられます。これらは、季節の変わり目など気候・気圧の変化によるストレスから発症することがよくあります。また、偏食・過食に伴う下痢・嘔吐も少なくありません。シニア期(6歳以降)に入ると、腫瘍疾患、循環器疾患を筆頭に多くの病気の発現が見られます。日常的に動物の様子を観察し、いつもと違う様子が見られたら早めの受診をお勧めします。
3.病気のサインを見逃さないこと多くの病気には、その前兆が認められることがあります。一般的に気付きやすい前兆としては、食欲・元気低下、ふるえ、嘔吐、下痢、他などです。腫瘍疾患の場合は、その部位により異なりますが、体に腫瘤が触れ次第に増大してくる、痩せてくる、下痢が続く、便の形が変形し血液がついてくる、鼻血が出る、他があります。
循環器疾患では、散歩を嫌う、咳が出る、突然倒れるなどが見られたら注意が必要です。完全に眠った時の呼吸数が1分間に30回以上だと肺水腫に対する注意が、40回以上だと肺水腫の警戒が必要となりますので参考にしてください。
4.早期発見早期治療を心がけることいつもと違う様子が認められたら、まずはかかりつけの動物病院に相談することが大切です。場合によってはセカンドオピニオンを求めるのも重要となります。
ペットにいつまでも健康で元気でいてもらいたいという想いは、飼い主の皆様同様、私たち獣医師の想いでもあります。栄養面、環境面、健康面、これらすべてに対し私たちも一緒に協力し合いペットを支えていきたいと思っています。一人で悩むことなく、自己判断に頼ることなく、気軽に動物病院に来ていただきたいと思います。ペットが健康で長生きしてもらうためには、まずは相談することから始めましょう。
(田村 兼人/獣医師)