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どんな願いでも叶う似顔絵の魔法。似顔絵はその人の魅力を再認識する最高のツール

JIJICO 2019年11月15日 7時30分

有名漫画家が描いたラグビー稲垣選手の似顔絵がSNSで話題に

にわかファンも歓迎する懐の深さと、選手のプレーや力強いルックスに惹かれ、日本中がラグビーに夢中になりました。 そんなにわかファンの中にも著名人がいたそうで、わたしが気になったベストオブにわかファンは漫画家さんでした。 【ROOKIES】を描いた先生が、ラグビー稲垣選手の似顔絵を描きまして、それがSNSで大きな話題となりました。

イラストだけ見ても「たしかに上手で男前だけど、カラーでもないのに、なぜ?」というのが感想でした。市原隼人さん主演で実写化しそうな超絶ハンサムでもありません。 そこで、これまたラグビーにわかファンの友人に理由を聞くと「笑っているからよ!」と答えてくれました。にわかのくせに詳しいね!と褒めると、一言多いと叱られました。

笑顔の似顔絵はその人の魅力を引き出す

話を戻しますが、似顔絵描きのわたしにとって笑顔で描くのは当たり前のことすぎて、なかなかピンとこなかったのです。 なんでもその選手は【めったに笑顔を見せない】というストイックなイメージなんだそうです。 その選手が自然な笑顔で、しかも似ている!しかもカッコいい!ということで湧き立ったそうです。

当店によく寄せられるお問い合わせの1つが【笑っている写真が無いのですが…】という内容です。 ご年配の方や小さなお子さまがモデルさんの時によくあります。 対面でお描きするときも、緊張してしまってどんな顔をしてよいか分からないとおっしゃるお客さまもおられます。

結論から申し上げますと、似顔絵描きはモデルさんの真顔を見て、笑顔を描くことができます。

ほとんどの絵描きは 表情を作る筋肉のつくりを勉強しているので、口角がニコッと上がったとき、おおよそどんな笑顔になるかが分かるのです。 歯並びだけは見てみないことには分からないのですが、それでも「似ている!」「たしかに、こんな笑い方する!」とおっしゃっていただけるくらいにはイメージできるし描けるのです。そのため「似てる!でも八重歯だけ付け足してもらえますか?」とお客さまから言われることもあります。

画家と似顔絵描きと違いはそこかな、と感じます。 画家さんは描いている人が望むとおり、似顔絵は描かれている人が望むとおり、お描きする必要があります。

写真や絵画には無い似顔絵の魅力

どれほど「あ、この人かわいい!」と多くの人が思うようなモデルさんであっても「クールな雰囲気で」とご本人さまからリクエストいただいたら、そう見せることができます。なんてったってイラストですから。 日本人のお客さまなのに「似ても似つかないけどK-POPアイドル風に描いてほしい」とリクエストいただくこともあれば、「男性ですが女の人として描いてほしい」とオーダーいただくこともあります。どんな願いでも叶うのが似顔絵の魔法です。わたしも自分の父親と、亡き母親のツーショット似顔絵を描いて「もしも生きていたら」と楽しんだことがあります。

数年前に亡くなった幼い息子さんのお写真を見せながら「この子が小学生になった姿を想像して描いてもらいたい」とおっしゃるお客さまがお見えになったこともありました。描き上がったあとに「この子の弟にちょっと似てる」と喜んでいただけて安堵しました。

お客さまのご要望にお応えするのが似顔絵の基本です。 しかし、今回のニュースは例外でしょうか。 描いている人が描きたいように描いた結果、それを見たファンも喜んだというケースですもんね。 どちらも有名人なので、ここまで注目を集めるハッピーな現象となったのでしょうか。

なんにせよ似顔絵描きとしては「おおお!」となるニュースでした。わたしのような似顔絵描きは、特に対面でお描きする時に、モデルさんの少しの表情の魅力や変化も決して見逃してはならないなと襟を正すキッカケとなりました。

緊張しているお客さまでも世間話の合間に一瞬だけ顔がほころんだりします。 その瞬間を捉え、少しだけ誇張して鮮やかに表現するのが、プロの似顔絵描きなのです。

と、ここまで小難しく語ってしまいましたが、誰でも笑顔の似顔絵を描くことができます。

あなたも似顔絵にチャレンジしてみませんか?

似顔絵を描くときに目や鼻や口といった顔のパーツは記号のようなものです。 インターネットで誰しも目にしたことのあるこの顔文字(^^)を見て、「あ、笑っている」と分かる人なら、描けます。笑顔の似顔絵を、描けてしまうのです。 細い山なりの目が笑顔を表していると知っているのですから。

それでは口は逆三角がふさわしいかな?それとも閉じてスマイル?歯を見せたほうがあの人らしいかな?などと煮詰めていけば自ずと似てきます。

そして主観ではありますが大きなポイントだと思っているのは「性格をそこそこ知ってから描く」ということです。 笑顔を見たことがない相手でも、例えば豪快な性格の方なら、目をクシャッと細めて大きな口でガッハッハと笑ったように描くと「似てるかも!」と感じていただけます。

ここにシワができて…と細かい部分にはこだわらないほうが案外うまく仕上がるものです。 肖像画ではなく、顔文字で表現するとしたらどの記号を使おうかなあという感覚です。 鼻は△、目は・、眉毛はヘ、そんな感じです。

もしかするとお化粧が上手な方は、似顔絵描きに向いているかもしれません。どんな線や色が、どんな印象を人に与えるか、よくご存知でしょうから。私には無理と思わず、身近な人を練習台にして似顔絵にチャレンジしてみてはいかがでしょうか? 似顔絵を描いている間にその人の魅力を再認識することにもなりますし、楽しいコミュニケーションの時間が過ごせると思いますよ。

(川上 奈々/イラストレーター)

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