2019年の「M-1グランプリ」で優勝したミルクボーイや3位のぺこぱの大旋風を契機として、「人を傷つけない笑い」に大きな注目が集まりました。先行き不安な世の中で、誰も嫌な思いをすることがなく楽しく笑って過ごせる時間を多くの人が求めている証かもしれません。実は、プロの芸人のような巧みな話術がなくても、人を傷つけない笑いを生み出すことができます。今回は、人を傷つけない笑いの作り方を解説します。
「人を傷つけない笑い」の4つのポイント
笑いを生み出すためには巧みな話術が必要だと思うかもしれませんが、職場や地域で関わる周りの人と笑顔で楽しく過ごすためには、話術よりも話題の選び方がはるかに重要です。話題の選び方には4つのポイントがあります。
・話題選びの基準は、共感とシェア ・自己開示は他の人には強要しない ・目上の立場の人は、誰かにがまんを強いていないか注意する ・話題に困ったときの「鉄板ネタ」を用意する
以下、各項目について解説します。
話題選びの基準は、共感とシェア
笑いを生み出す大原則は、共感です。「あるあるネタ」が人気なのは、思わず話に共感してしまうからです。
M-1グランプリで歴代最高得点を叩き出したミルクボーイのコーンフレークのネタも、子どもからお年寄りまで誰もが情景を思い浮かべることができて、思わず「そうだよね」と共感できるネタでした。
周囲の人と楽しく笑って過ごしたいときには、故郷や趣味、知人など共通のテーマから、共感できる話題を見つけるところから始めてみてください。
そして、人を傷つけないための大事なポイントは、多くの人とシェアした時に誰かが嫌な思いをする話題でないか意識することです。誰も嫌な思いをすることがなく、共感できる話題を多くの人とシェアできれば自然と笑いが生まれます。
自己開示は他の人には強要しない
自分の失敗談や欠点などを笑いにくるめて自らオープンにすると、相手との心の距離を縮めることができます。
しかし、他の人の失敗や欠点を本人の意向を無視して周囲の人に話すことは望ましいとは言えません。自分にとっては全然気にならないことでも、他の人は真剣に悩んでいて、触れてほしくない話題かもしれません。
自己開示を通じて相手との距離を縮めつつも、相手の気持ちを尊重して心の中に土足で踏み込んでいないか配慮することも大切です。
目上の立場の人は、誰かにがまんを強いていないか注意する
日本は上下関係を意識する社会です。特に立場が下の人は、自分の意見を押さえ、目上の人に気を使ってがまんする傾向があります。立場が上になればなるほど、相手の気持ちに対する想像力が必要になります。
例えば、部下が仕事で大きなミスをして、上司が本人を励ますつもりで同僚の前でネタにして笑うことがあるかもしれません。しかし、もし部下が顔から火が出るほど恥ずかしい思いをしていたとしたらどうでしょう?上司にとっては励ましのつもりでも、部下にとっては心の傷になってしまう恐れがあります。
業務上の厳しいフィードバックは必要ですが、励ますならば時を改めて別の話題でコミュニケーションをはかった方がよい場合もあります。
やたらと自慢話をすることにも気をつけたいところです。延々と続く自慢話はがまんして聞かなければならず、共感もできないから嫌われるのです。
話題に困ったときの「鉄板ネタ」を用意する
初対面の人と会話をする時や公の場でスピーチをする時に、何を話していいか話題に困ることがあるでしょう。そのような時に備えて「鉄板ネタ」をいくつか用意しておくことをがおすすめします。
どこで話しても絶対にウケるネタのことを鉄板ネタと呼びます。お笑い芸人が使う用語ですが、今では一般的に広く浸透しています。誰にでも、1つ2つ笑えるエピソードがあるはずです。
この記事でこれまで解説したポイントを踏まえて、自分だけの鉄板ネタを用意してみてください。ただ、飲み会などで同じ人に何度も同じ話をすると逆効果ですのでご注意ください。
(田久 朋寛/ヨガ・ピラティスインストラクター)