新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、政府が春休み前までの一斉休校を要請してから3週間がたちました。現在、公立小中学校の99.0%、公立高校の98.8%が臨時休校中です(文部科学省、3月16日時点)。3月20日、政府は、休校要請の延長をしない方針を固めました。しかしながら、多くの子どもたちは、これから4月の新学期まで、家庭で過ごします。
収束のめどがつかず、外出自粛ムードが続くものの、ずっと家の中で過ごすのは親子ともに限界があります。文部科学省も「(休校は)健康維持のための屋外での適度な運動や散歩などを妨げるものではない」と、見解を示しました。ただ、休校による子どものストレスや、学習の遅れ、ゲームやインターネットへの依存など、保護者の心配は尽きません。これから新学期まで家庭で有意義に過ごすには。家庭学習を指導する長谷川満さんに聞きました。
子ども自身も先行きや勉強に不安を感じている。ゲームや学習時間を管理するではなく、親子で一緒に考えて一緒に遊び学ぶ姿勢で安心感を
Q:新型コロナの影響による臨時休校が子どもに与える影響には、どのようなものがありますか。 -------- このたびの休校で、子どもたちが奪われたものは、「安心」「楽しみ」「自由」の3つです。
毎日学校に行くという日常が突然奪われ、先行きも見えないことで、子どもは不安に感じています。学校や部活などで友達と触れ合う楽しみもなくなりました。また、不要不急の外出を控えるという学校からの指導のもと、子どもだけでウロウロしていると近所の人から注意されたり、学校の先生が地域を巡回していたりと、不自由さも感じているようです。
一方、保護者も子どもがずっと家にいることでストレスを感じています。「ゲームばかりしている」「勉強をしていない」などが気になり、普段以上に、つい親子の衝突が生まれてしまうというケースもあるようです。
休校期間中、「子どもをどう過ごさせるか」と考える保護者が多いようです。子どもを「管理・マネジメントしなければいけない」という意識は、親自身の責任や負担を増やすことになります。「大変な時期を家族で支え合おう」「子どもの不安を少しでも軽くできるケアは何か」など、発想を変えてみましょう。
Q:外出の予定も立てられない中、休校中の時間管理はどのようにすればいいのでしょうか。 -------- どう過ごすかを子どもと一緒に考えた上で、1日の時間割を決めてみましょう。ポイントは、子どもが主体的に決め、子どもの意見を尊重すること。親は提案するだけで、親の意見は反映しません。
突然の休校を受けて、子どもなりに、勉強に対する不安も感じており、「勉強をまったくやりたくない」と思っているわけではありません。起床、勉強、運動、お手伝い、ゲームなどの時間を組み込んで、生活のリズムを作るといいですね。
勉強時間は、1日2時間程度でいいでしょう。「学校があるときは6時間くらい勉強しているのに」という声もありますが、授業もないのに6時間も勉強に費やすことは難しいと言えます。
学校に行かず、運動が不足すると就寝時間にも影響が出ますので、ウオーキングやなわとびなど体を動かす時間はとりましょう。また、料理や洗濯など親子で一緒に家事に取り組む時間もこの機会に作るといいと思います。
また、時間割通りにいかなくても叱ったり、罰を設けたりする必要はありません。「ゆるい」計画にしておくことも大切です。
Q:学年末の授業が途中で終わっており、新学年での学習の遅れが心配されます。家でできる学習法は? -------- 前述の1日2時間程度の勉強時間は、学校で出された課題をこなすのに必要な時間です。「3月分の学習が遅れている」という声がありますが、同級生はみんな同じ状況です。学校が再開したときに、遅れを取り戻せるよう、補完する授業もあるはずですし、必要以上に心配しなくても大丈夫です。
また、せっかくの休校期間を利用して、親子で共有体験の機会を作ってほしいですね。昼食を一緒に作る、キャッチボールをするなど、ちょっとしたことでも一緒にすることで、豊かな時間になります。
「一緒にする」ことは、勉強においても効果的です。一人で黙々と机に向かうよりも、誰かと相談しながら考える方が、楽しく取り組むことができます。例えば、私の指導では、生徒の宿題を、教師が一緒に解いてみます。お互い解答を見せ合い、答え合わせをしてみると、時には生徒が正解、教師が不正解となることも。その際に、生徒が教師に対して解き方を教えるという方法をとると、本人の考えがより整理され、記憶にも残ります。
人に教えることは、最も効果的な勉強法です。親がどんな問題でも理解し、子どもに教える必要はありません。一緒に調べてみたり、相談し合ったり、時には子どもが親に教えたりすることで、子どもは勉強の面白さを発見したり、興味を持ったりします。
Q:インターネットやゲームへの依存を気にする声も多く聞かれます。香川県で4月1日から施行される「ネット・ゲーム依存症対策条例」のように、「平日1日60分」「中学生以下は午後9時まで」など、利用に何らかの制限が必要ですか。 -------- 例えば、大人でスマートフォンを1日5時間以上利用する人もいるのに、子どものゲームやインターネットを1日60分などと制限する条例には違和感を覚えます。依存か否かの判断は、日常生活に支障が出ているかどうかと言えます。
休校中で時間がたっぷりあり、自由に外出もできない子どもに、あまり厳しく制限をするより、上手に付き合えるようなルールづくりができるといいですね。
ゲームが好きな子どもに、1日60分と制限し、毎回「物足りない」気持ちにさせるよりも、例えば2時間で「十分やり切った」と満足感を得られる方が、依存になりにくいのではないでしょうか。小学生のときに1日30分など厳しく制限され、いつも抑圧を感じていると、反抗期を迎えた中高生になると、親も強く言えなくなり、反動で1日6~8時間ゲームばかりしてしまうという例もあります。
もちろん、あまりにも長時間や深夜までゲームやインターネットをすることは、健康上もよくないので、「2時間まで」「午後10時まで」などと時間を区切ることは必要なルールだと思います。ただ、条例で一律に判断するよりも、各家庭の方針に任せる形でいいのではないでしょうか。
Q:子どものストレスをできるだけ軽減するために、親ができることはありますか。 -------- 親子で何かを一緒にやってみることは、子どものストレス軽減に効果的です。毎日でなくても、例えば週末の夜に一緒にウオーキング、休日に自然の中でキャンプなど、できる範囲で共有体験の機会を作ってみてください。何かを一緒にすることで、普段はお互いに話さないようなことも話すきっかけになります。
また、子どもが好きなゲームやマンガを一緒に楽しむこともおすすめです。子ども自身が興味を持っていることについて共通の話題ができると、会話が増えます。良好な親子関係は子どもの成績にも影響します。これまでの経験から、親子関係が良いと成績が伸びやすい傾向があります。
普段とは違う臨時休校により、子どもも不安を感じています。「こんな時期だから少しくらい仕方がない」「ゲームやアニメも子どもが楽しいならあり」など、おおらかに子どもに向き合い、のびのびと過ごせるようにケアをしていく意識を持ちましょう。「どう過ごさせたらいいのか」ではなく、子どもが少しでも「安心・楽しい」と感じるにはどうすればいいのかという視点を持ってみてください。
(長谷川 満/家庭教師)