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アキレス腱が切れたらどうしたらいいの?腱は元に戻るのか

JIJICO 2021年4月28日 13時30分

■腱は筋肉の先端部分 筋肉疲労が腱損傷の原因

腱とは何か、身体のどこの部分かと聞かれても、ピンと来ない人が多いのではないでしょうか。誰もが聞いた事がある腱の名前は、アキレス腱でしょう。「アキレス」は、ギリシャ神話の英雄「アキレウス」のラテン語名です。アキレウスは、踵の腱を弓で射られて命を落とした事から、アキレス腱(踵骨腱)は致命的な弱点の代名詞となりました。アキレス腱の場所は分からず、諺として知っているという人もいるのではないでしょうか。 筋肉は全身に600を超える数があり、骨格筋、心筋、内臓筋に分類されます。腱は、「骨格筋(こっかくきん)」の両端です。骨格筋は別名「随意筋(ずいいきん)」と言われ、意識的に筋肉を収縮させて関節を自由に動かす事が出来ますので、腱を損傷すると関節を動かすことが出来なくなります。(肉離れって何?筋肉は切れたら元に戻るの https://mbp-japan.com/jijico/articles/32252/ 参照)  筋肉や腱は、その形状から「筋線維」や「腱線維」と言われます。筋線維と腱線維は、違う名称ですが、別々のものではありません。筋線維末端である腱は、筋線維を包んでいる筋内膜だけで構成される膠原線維(こうげんせんい)という性状の細胞です。膠原線維は、主にコラーゲンで出来ています。コラーゲンが入ったサプリメント商品を、良く耳にする事があるのではないでしょうか。腱は、伸び縮みする筋肉線維が含まれていませんので、硬い一本の束となっています。腱と靭帯は同じ膠原線維ですが、役割が違います。骨と骨を繋ぐのが靭帯で、筋肉の末端として関節をまたいで骨に付着するのが腱です。 筋肉が疲労してくると、伸び縮みがスムースでなくなり、腱に負荷がかかります。腱の付着部が引っ張られ、付着している部分の骨膜(筋肉の起始部・停止部)に炎症が生じると、その部分に痛みが生じて熱を持ちます。ひどくなると発赤して腫れて来ます。活動を止めないと、腱の付着部(骨膜)がはく離、骨格筋の断裂(肉離れ)や腱の断裂が起きます。

■運動不足の人が急に運動するとアキレス腱を断裂する事がある その前兆はふくらはぎの張り

テレワークが続き、全く運動していない人が増えています。運動不足を解消するために、ランニングやスポーツ等を急に長時間すると、筋肉疲労を生じます。筋肉痛は2~3日休めば回復しますが、体力が低下している人は、痛みがそれ以上の期間続きます。 ふくらはぎの痛みがある状態で運動を続けると、筋肉疲労が軽度の場合、運動中、ふくらはぎが痙攣します。足がつるのは、血行不良の現れですが、疲労している筋肉に血液を呼び込もうとする自己補正現象です。 筋肉疲労が中等度の場合、肉離れ(筋肉の部分断裂)を発症します。 筋肉疲労が重度になると、筋肉の完全断裂か腱の部分もしくは完全断裂が起きます。 普段運動していない人は、筋肉に柔軟性がありませんので、左程準備体操をせずスポーツをしたりすると、ふくらはぎに張りを感じたと思った直後にアキレス腱を断裂する場合もあります。 運動で筋肉を疲労させると、肝臓も疲労します。筋肉痛を軽く考えず、飲酒を控える事が大切です。40℃以上の熱いお風呂に長い時間(10分以上)入る事も、疲労を助長します。運動後は睡眠を7時間半取る事が肝要です。

■アキレス腱の完全断裂か部分断裂かを判断する方法は?

バレーボールでスパイクをした後着地する時や剣道をして踏み込んだ時等、「ブチッ」と鋭い音が本人にも周りの人にもはっきりと聞こえた後倒れこむ、そんな光景に出会った事はありませんか? アキレス腱を切った人によると「鞭で後ろからぶたれたようだった」と言います。 アキレス腱の断裂は、ふくらはぎの筋肉がパンパンに張っている時起こります。切れる前に何度も強い筋肉痛に襲われ、やや歩行動作も困難になっている場合に起きますので、本来なら防げる外傷とも言えます。 アキレス腱は、踵骨腱ともいい、かかと(踵)についている腱の事を指します。腓腹筋(左右)とヒラメ筋という3つの筋肉で構成されています。アキレス腱の断裂は、上記3つの筋肉の損傷程度により、完全断裂か部分断裂に分かれます。 アキレス腱の完全断裂か部分断裂かは、素人でも判断出来ます。 1つ目は、ケガ人の状態から判断する方法です。足関節をまともに動かす事が出来なければ完全断裂、動かす事が出来れば部分断裂と考えてよいでしょう。

3つの筋肉が完全に切れても、足関節の位置を保つ事が出来ます。その理由は、足の動きを補助している足底筋という細長い筋肉が腓腹筋とヒラメ筋の間にあるからです。この筋肉を含めた4つの筋肉が完全断裂すると、足関節を足の裏側へ動かす事はほぼ出来なくなります。但し、後脛骨筋という小さな筋肉が足関節の動揺を抑制しますので、ぶらぶらする状態にはなりません。つま先で立つ事は可能ですが、移動は不可能です。病院へ行くためには肩を借りて歩くか担架もしくは車椅子が必要です。 足関節を動かせる場合、病院へ行く前に、けがの悪化を防ぐ意味でも、うつ伏せになり、足首の下にタオル等を置き、足関節が曲がらない姿勢を保つ事が肝要です。痛みが出ない姿勢です。 2つ目は、触って判断する方法です。完全断裂と部分断裂は、どちらの場合も、つま先立ちになることが出来ます。足関節がだらりとしていれば、上記全ての腱が断裂している事になりますので、次の方法をする必要はありません。まず、うつ伏せの体勢になり、足関節の下にタオル等を巻いて入れます。受傷直後は、アキレス腱の一部が大きく窪んでいます。その部分へ人差し指を横にして(骨の固い部分が当たるようにして)アキレス腱に対して直角に置きます。手の指をぴんと伸ばした状態でゆっくり沈めてみてください。そのまま骨が当たるまで指を沈める事が出来る様だと、神経を直接圧迫する事になるため激痛が走ります。この病態は、完全断裂です。足底筋がありますので足先を着いて歩く事は可能ですが、階段を降りる時等、体重がかかると、足底筋断裂を起こす恐れがあります。足関節はぐらつかないような工夫をする必要があります。その際、つま先立ちが出来るような角度を保つ事が肝要です。指を下まで沈める事が出来ず、抵抗感がある時は、部分断裂です。歩く事は可能ですが、数歩歩くだけで完全断裂する恐れがあります。 ブチっとした音を本人または周囲が聞いた時は、歩かない・歩かせない事が大切です。 いずれにしても、必ず医療機関の受診が必要です。患部にアイシング等をすると、その重みで断裂を助長しますので、痛みを我慢して直ちに治療を受ける事が最善策です。

■アキレス腱断裂の治癒期間は約5週間 アキレス腱縫合術(観血療法)と徒手整復術(非観血療法)のどちらを選択する?

    アキレス腱を完全断裂した際、アキレス腱縫合術(観血療法)か徒手整復術(非観血療法)を行うと、ともに約5週間程度で癒合が認められます。患部を受傷時のままギプス等で固定する保存療法でも癒合しますが、約8週間を要します。日常生活を問題なく送れるようになるためには、その後3週間程必要です。 徒手整復術とアキレス腱縫合術の術後を比べると、双方日常生活に支障はありませんが、徒手整復術を選択した場合は、 1.アキレス腱部がやや太くなる 2.運動性がやや落ちる ように感じています。 そのため、完全断裂の際は、「観血療法による外科手術」か「非観血療法による外科手術」を選択するか悩むところでしょう。一流のアスリートであれば、前者がおすすめです。手術の痕(あと)は残りますが、その事は元の運動機能に近づけたいがための代償だと考えるべきでしょう。スポーツは楽しみ程度で良いと考える方であれば、後者がおすすめです。アキレス腱がやや太くなる事を除けば、手術痕が残りませんし、後遺症は殆どありません。腱が癒合に至る期間はほぼ同じ5週間ですが、社会復帰という点に限れば徒手整復術を用いた治療をした方がやや早いと言えます。

■アキレス腱の部分断裂はお近くの整骨院へ 6時間以内に徒手整復して固定すると腱の再生が可能 筋肉疲労解消には鍼灸治療が有効

腱が完全に断裂し断端が離れている場合、断裂部が挫滅している場合や損傷部位が広範囲にわたっている場合等は、腱縫合術・腱移行術・腱移植術等の「観血療法による外科手術」が必要です。関節を全く動かす事が出来ない時は、整形外科医にご相談ください。 腱の部分断裂は、骨格筋の収縮を抑え関節運動を制限し損傷した腱を固定する事により修復が可能です。「非観血療法による外科手術・徒手整復術」を行った後、関節部の固定を行う事で、早期回復が可能です。柔道整復師は、骨折・脱臼・捻挫・打撲・挫傷(筋損傷・腱損傷・靭帯損傷)が専門の医療資格者です。腱を損傷したかもしれないと思ったら、6時間以内に、お近くの整骨院・接骨院を受診していただきたく思います。 軽度の腱損傷は、2週間程度で修復され痛みが消失します。中等度の腱損傷は、再生に約3~4週間を要します。重度の腱損傷は、約5~6週間程度必要です。 筋肉疲労を感じる場合、軽度の場合は肉離れを起こしますが、場所によっては前兆となる症状がなく腱を損傷します。強い筋肉疲労を感じたら、まずは4~5日疲労の原因となっている運動や労働を止めてみてください。それでも痛みが取れない場合は、鍼灸治療をすれば1週間程度で、痛みの解消が可能です。お近くの鍼灸師がいる鍼灸院や医療施設にご相談ください。

(清野 充典/鍼灸師)

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