■尻もちをした後翌日も痛かったら骨折している可能性も
テレワークが増えた今日、自宅内で作業をしていて、尻もちを付く事はありませんか。草取りをしている時、思いっきり引き抜いたとき力余って尻もちを付く事は良くあると思います。そんな時は、お尻の筋肉も緊張していますので、あまりケガをする事はありません。数分間立てば痛みは引きます。問題は、不用意に尻もちを付いた時です。 椅子に座ろうと思ったら、椅子がなかった。 椅子に腰かけた瞬間、椅子が後方に動いた。 物を両手に持って歩いている時、足が滑った。 上記の時尻もちを付くと、強い打撲を生じます。地面が硬ければ固いほど、ケガの程度は大きくなります。お尻の筋肉は大きく、脂肪も多い事から、尻もちを付いてもクッションになりますが、力が直接体に加わると、脊椎の圧迫骨折を引き起こします。 尻もちを付いた後、すぐに立てない 急に腰が痛くなった という方は、腰椎の圧迫骨折が考えられます。 動く事は出来ても、ぶつけた所の痛みがなかなか治まらず、お尻を見たら、あざ(内出血)が出来ているという方は、尾骨や仙骨など、どこか骨折している事が考えられます。お風呂に入ったら痛みが強くなった、一晩寝ても痛みが引かないという方は、翌日専門医を受診する必要があります。
■椅子に座る動作や座っている時痛みが強くなるのは脊骨や仙骨・尾骨の骨折かも?
お尻にあざ(内出血)が出来ると、その部位周辺を触ると痛いため、打撲と思い、放置しがちです。4~5日すると打撲は軽くなります。あざが消えても打撲した周囲が痛く、椅子に腰かけると痛くて座っていられないという場合は、骨折が考えられます。 ドーナッツ型の座布団に座れば大丈夫という人は、尾骨骨折が考えられます。 立っていないと食事が出来ないという人は、仙骨骨折が考えられます。 姿勢を伸ばして座っていると痛みは出ないものの少しでも姿勢を変えると痛みが出るという方は、脊椎圧迫骨折が考えられます。 尻もちを付いて1週間以上経過すると上記症状は増悪傾向になります。人によっては、発熱、食欲減退、全身にだるさ等を発症します。鎮痛剤を飲んでも軽くならない場合が多く、寝ていると楽なので、その後2~3週間寝たきり状態という人も少なくありません。放置していても、なかなか改善せず、痛みが解消されるまで数か月を要する人が少なくありません。経験上、尻もちを軽く考えない方が良いと思います。
■尻もちはスポーツ選手に良く見られるケガの原因
日常生活を送っている際、尻もちは殆どしませんが、スポーツ選手には珍しくありません。スケートやスノーボード選手に尻もちは付き物です。最近人気があるラグビーの試合を見ても、良くお尻から落ちています。筋肉が守ってくれますので、鍛えている人は問題ないようですが、久しぶりに運動を始めたという人が尻もちを付くと、大けがに繋がります。運動不足を感じている方は、毎日スクワットを5回から10回行い、臀部周囲の筋力低下を防ぐ必要があります。また、ふくらはぎや足の裏の筋力が低下する事により、転倒しやすくなります。踵を上げつま先で立つ運動とつま先を上げ踵で立つ運動を毎日5回から10回行うと効果的です。バランスを取りにくい方は、壁に手を当てるか椅子につかまると安定します。いずれの場合も、可能な限り背筋を伸ばして行う事が肝要です。
■尾骨や仙骨骨折の癒合期間は約4週間 鍼灸治療は腰やお尻の痛み解消に有効
脊椎圧迫骨折の癒合は、年齢により3か月程度を要します。骨折をした直後は、骨折部位を中心に、お腹周りまで強い痛みが出ます。鎮痛剤を服用しても痛みが治まらない方には、鍼灸治療が有効です。2003年(平成15年)第52回全日本鍼灸学会で、脊椎圧迫骨折の痛みに対する治療法を、初めて発表しました(清野鍼灸整骨院ホームページに掲載)。痛みでお悩みの方は、鍼灸治療をご検討いただきたく思います。 尾骨骨折は、骨折の程度によりますが保存療法による癒合期間は2~3か月と考えられています。その後もお尻周囲の痛みがなかなか消えないようです。お尻周囲の痛みには、鍼灸治療が有効ですので、医療の選択肢の一つとしてお近くの鍼灸院をご利用してみては、いかがでしょうか。 非観血療法による外科手術である徒手整復術を行い、尾骨の位置を正常な位置に近づけると、癒合期間は約4週間になります。仙骨骨折の癒合期間は過去に示された事がなかったので、2013年(平成25年)第22回日本柔道整復接骨医学会で、癒合期間が約4週間であるという見解を、清野鍼灸整骨院が初めて発表しました(清野鍼灸整骨院ホームページに掲載)。 尻もちを付いた後、鎮痛薬を服用しても痛みがなかなか引かない方は、柔道整復治療や鍼灸治療を行っている医療機関にご相談いただきたく思います。
(清野 充典/鍼灸師)