骨盤位(逆子)の改善を目的とする鍼灸治療希望者が増加傾向
逆子(さかご)の改善を希望して来院される方が、毎日のようにおられます。多い日には、一日5人程いらっしゃいます。40年来診療していますが、最近特に多くなった印象があります。以前は、逆子の場合でも通常分娩を行っていましたが、近年は38週の時点で帝王切開を推奨する産院が増えています。そのため手術を避けたいと思う妊婦さんが多くなった事が来院増加の背景にあると思います。
赤ちゃんは、成長すると、頭が大きくなりますので、自然に重みで頭が下になります。その状態を「頭位(とうい)」と言います。頭位が、自然な胎位(たいい)です。しかしながら、母体の身体状況や自然環境により、赤ちゃんはいろいろな姿勢をしてお母さんの体内にいます。中には、「横位(おうい)」や「斜位(しゃい)」のお子さんもおります。胎位とは、胎児がお腹にいる(全体の)姿の事です。
もう一つの見方に胎向(たいこう)があります。胎向とは、胎児が正面と背中のどちらを向いているかという事です。最も一般的で安全な胎向と胎位の組合せは次のような状態です。
1. 頭は下にある 2. 顎は引いている 3. 首は前へ曲げている 4. 顔や体が右か左に傾いている 5. 両腕を胸の前で組んでいる 6. 後ろを向いている
胎児の胎向や胎位が上記以外の場合は、経腟分娩が困難になります。このような情報が手軽に入手しやすくなっている事も、逆子を早期に治療しようとする人が増えている理由かもしれません。
骨盤位(逆子)のままだと帝王切開による出産の確率が高い
頭が上にある状態の事を、「骨盤位(こつばんい)」と言います。その状態を、一般的に逆子と言います。最終的に逆子のままで出産期を迎えるのは3~4%と言われています。2018年の出生数は91万8,400人、2019年の出生数は1899年の調査開始以来もっとも少ない86万5,234人 です。このデータに基づけば、年間35,000人程度が逆子という事になります。逆子の原因は、明らかではありませんが、一般的に、
A. 子宮筋腫 B 先天的子宮形態異常 C. 前置胎盤 D. 多胎妊娠(双子以上の妊娠) E. 帝王切開の妊娠経験あり F. 胎児の形態異常(水頭症など) G. 胎児の子宮内発育遅延
などが原因と考えられています。 いずれにしても、骨盤位(逆子)の場合は、出産時にいろいろなリスクがあるため、危険回避を目的に帝王切開を選択する産院は、多くなっている印象です。
逆子になっている妊婦さんの下腹部は冷たい
来院される妊婦さんはすでにA~Gの確認はしていますので、他の要因があるかもしれないと思われています。それは、妊婦さんの生活スタイルです。今の妊婦さんは、働いている方が多く、出産予定日の8週間前まで働いています。26~28週目頃に逆子と診断されても、「そのうち治る場合がある」と医師に言われれば、あまり逆子を問題視せず、仕事に専念しています。30~31週目に逆子と言われても、多くの妊婦さんは逆子の改善に時間を使う事が、難しい状況に置かれています。
勤務を継続して逆子の改善にいらっしゃる妊婦さんの生活スタイルを伺っていると、23時以降に就寝している方がとても多い印象です。中には、午前1時から2時という方もいらっしゃいます。夕食時間が22時を過ぎ、入浴時間も23時以降または朝入浴してから出勤しています。自分の健康を維持する事すらままならぬ状態です。そのような生活をしている妊婦さんは、体温の維持が困難となっている印象です。 妊婦さんのお腹を触ると、例外なく下腹部が冷たい状態です。逆子と判明した時期が早い人ほど、冷たい範囲が広い傾向にあります。その範囲は、お腹全体のみならず、下肢全体に及びます。最近、逆子の治療を希望する方が増えているのは、24時間活動している社会構造が原因ではないかと考えています。
逆子は、妊婦さんの不調を知らせるサインです。逆子と言われたら、直ちに生活を改め、鍼灸治療で解消する事を推奨します。逆子になる原因は医学上不明とされていますが、私は不規則な生活に起因すると考えています。32週を過ぎると、多くの妊婦さんは「産休」に入りますので、規則正しい生活をする事が可能になります。
1. 夕方頃38℃の湯船に2~3分入り体温を上げる 2. 18時~19時の間に夕食を取る 3. 22時までには就寝する 4. 冬季の場合安静時は室温を26℃~28℃に保つ 5. 夏季の場合冷房は極力避けるか使用する際は28℃以上にする 6. お腹に晒(さらし)を巻き腹部の保温と胎児の位置が安定する事に努める
上記の指導を行う事により、体温が上昇しています。また、身体が冷える事につながる飲食は控える必要があります。逆子の方は、是非実行して戴きたく思います。
逆子に有効な鍼灸治療の最適期間は28~32週
逆子になった時、鍼灸治療は有効です。28週から32週の方であれば、90%以上が5回以内の治療で正常位になります。33週以上になると、胎児が大きくなるため、逆子は治りにくくなります。その他に、治りにくい状態が5つあります。
1) 臍帯が1m以上あり胎児の首に巻き付き動きが制限されている 2) 臍帯が30cm未満のため胎児の動きが制限されている 3) 胎児が正面を向き胡坐(あぐら)の姿勢を取っているため動きにくい 4) 妊婦に基礎疾患がある 5) 前置胎盤である
上記5つ以外でも、毎年何度治療しても正常位にならない妊婦さんがおります。40年の経験だけではその理由を推し量れませんが、40週まで鍼灸治療をしていると子宮が柔軟になるため、片脚が先に出て来る状態以外は、出産が可能だと聞いています。陣痛が始まり子宮が強く収縮する事によって逆子が治る例も少なくありません。
しかしながら、38週で帝王切開して出産する場合は、その事が期待出来ません。通院されている産院が帝王切開を推奨している場合は、28週から32週の間に改善する事を奨めます。人によっては、33週から36週の間に逆子になる場合があります。その場合でも正常位に改善された例は数多くありますので、生活を改善し、38週まで諦めずに毎日鍼灸治療を受けて戴きたく思います。
逆子の鍼灸治療にご興味がある方は、清野鍼灸整骨院ホームページ「お母さんのための子育て学」をご参照戴きたく思います。
逆子の鍼灸治療をご希望の方は、お近くの鍼灸院や鍼灸師が勤務する医療機関に相談してみてください。 また、清野が呼称する養正(ようせい)治療は、日常の適正な生活です。詳しくお知りになりたい方は、清野鍼灸整骨院ホームページ「くらしと養生」をご参照願います。
(清野 充典/鍼灸師)