「健康のための運動をしていますか?」と聞かれると、ランニングやストレッチ、スポーツなどを想像する方も多いかも知れません。 健康にはなりたいけれど、朝から晩まで仕事をしている方、育児や受験などで忙しい方は、運動の時間を取るのもなかなか難しいものです。
厚労省では、運動強度として「メッツ(METs Metabolic Equivalents)」という数値を用いた、身体活動の向上を提案しています。
■身体活動を数値化したメッツ
メッツとは、例えば安静に座っている状態を1.0メッツとして、歩行は3.0メッツ、階段を登るのは4.0メッツというように、身体活動を数値化したものです。 「歩行(walk)」という項目だけで30以上の分類があり、性行動やボランティア活動などの分類もあります。 スポーツはもちろん、家事や庭仕事、お風呂などのセルフケアや日常の作業、職業も細かくメッツとして数値化されています。
↓どんな身体活動が何メッツになるのか、一覧を参考にしてみてください。 国立健康・栄養研究所改訂版 『身体活動のメッツ(METs)表』 参照元:(独)国立健康・栄養研究所
■日常生活を「運動」にする
運動不足だと、何となく将来の健康が不安になったり、気持ちがモヤモヤしたりするものです。今回なぜメッツを取り上げたかというと、メッツという数値を意識することによって、日常生活の一つ一つを身体活動として前向きに捉えるきっかけになるからです。
例えば、いつもより早く歩く、重い荷物を持って歩く、坂道を歩くなどによってメッツ数値が上がっていきます。階段も同様です。メッツを意識して、いつもの行動を少しアクティブにしてみましょう。
重いものを持って階段を登る時などは、きつくてため息をついてしまいそうですが、健康のための身体活動だと切り替えてみましょう。きつい時は大体メッツ数値の高い身体活動が行われています。通勤時のエレベーターやエスカレーターを階段にすることで、メッツ数値は一気にアップします。
運動の苦手な方も、趣味や音楽活動、犬の散歩や庭いじりなど、ご自分の好きなことを身体活動として意識することで、楽しみながら運動が促進されます。
効果的な運動は下記サイトを参照してみてください。 「運動強度(METs)」で見る、効果的な身体活動は? 参照元:スポーツ庁
■健康のためにできること
日本は高齢社会に突入していますが、この先には超高齢社会が待っています。 健康寿命を伸ばすために必要なことは、適切な運動と睡眠と飲食です。気をつけようと頭ではわかっていても、今までの生活習慣が無意識に繰り返されてしまうので、健康を損ねる前に、強く意識しておくことが必要です。
人間の身体は約60%が水分といわれていますが、その水分はみずみずしい素肌、内臓や脳の働きになくてはならないものです。また、身体中に張り巡らされた血管やリンパ管の水分は約90%を占め、全身を循環しています。動脈と違って血圧を持たない静脈とリンパ管は、筋肉の収縮と弛緩によるポンプ運動によって運搬されため、筋肉を動かすことが少ないと、途中で留まり、老廃物が溜まり浮腫(むくみ)などの原因になります。 排出するべき老廃物が、体内に吸収されていくのは恐ろしいことです。 栄養や免疫が全身を巡るためにも、運動と水分は必須です。
さて、運動する時間がないと心配している方も、「メッツ」を意識することで日常の行動ひとつひとつが健康のための運動になります。楽しみながら日常生活をアクティブに過ごしてみてください。
(中里 えみこ/ヨガインストラクター)