成長過程に応じて「お金との接点」を広げていく
国民生活センターによれば、小学生の子どもが親のクレジットカードを勝手に使用し、後日、親の元に高額の請求書が送られてきたというような相談が、ここ数年で急増しているそうです。クレジットカードという現実的な実感がない決済方法を子どもが理解していないことが、トラブルの元かもしれません。
子どもの金銭感覚を育むためには、成長過程に応じて「お金との接点」を広げていくことが大切です。「幼児期→買ってもらう」「小学校低学年→お金を使う・貯める」「小学校高学年→働いてお金を得る・備える」と、お金にまつわる概念が形成されていきます。
幼児期においては、「買ってもらう」が欲しいモノを手に入れる手段となります。やがて成長していく過程で、お金を使えばモノと交換ができることを知り、欲しいモノを手にする術を覚えます。しかしこの時点では、そのお金も「もらう」ものに過ぎません。お金は、保護者が苦労しながら「働いて得ている」ことをしっかりと理解させましょう。
「安易なお金の貸し借りは、信頼関係を壊す」を教える
依頼を受けて小学校5年生に出前授業を行ったときのことです。そのときは、おこづかい帳を使った体験学習を行いましたが、クジ引きの結果に応じてお金を使う場面で、参加していた一人の児童に「お金が足りなくなってしまう」という事態がおきました。原因は使いすぎ。すると、別の児童が「借りればいいじゃん」と発言。お金を借りる行為自体が、何もかも悪というわけではありません。しかし、安易なお金の貸し借りは、信頼関係を壊すことに結びつきやすく、取り返しのつかない事態に陥る可能性もあります。
このとき発言した児童の心情は、鉛筆や消しゴムを貸し借りするような感覚だったと思います。しかし、放置するわけにはいきません。頭ごなしに「貸し借りはダメ」と突き放すことは簡単ですが、子どもは理解できず、かえって反発を招く結果になります。多少時間がかかりましたが、「借りたお金を返すためには何が必要か」「返せなかったときはどうなってしまうのか」「返すお金は誰のお金か」など、質問を交えながらわかるように説明に努めました。
欲しいモノと必要なモノの違いを理解させ、家庭でルール決めを
また、お金の使い方についても、「少額であれば大丈夫」という感覚が積み重なり「お金が足りなくなる事態を招いた」ともいえるので、見過ごすことはできません。最近、問題視されている「ネットゲーム課金」。少額な支払いが積み重なり、高額請求を受けるという事態も起きています。ネットゲームの課金方法は、クリックさえすれば支払が完了するという仕組みで運営されています。現金支払であれば、財布の中身を限度として一定の歯止めがかかるものが、「お金を使っている」という感覚がマヒしやすくなってしまうのです。
このような仕組みには、家庭内でルールを決めて対処することが必要です。例えば、「保護者の許可なしにクリック課金を利用しない」や「利用金額と同額の現金を、子どものおこづかいから徴収する」といった方法が考えられます。現金を徴収するというやり方は、限られたおこづかいの範囲で「お金を使う」という練習にも役立つでしょう。
お金は、使わずに放置すれば、紙幣は紙くず、硬貨も金属片と同じかもしれません。しかし、使って足りなくなっても、天から降ってくることはありません。また、予期せぬ支払は起こりえるものです。金銭感覚を育むためには、まずは「欲しいモノ」と「必要なモノ」の違いを理解させ、各家庭内でお金の使い方のルールを決めて、子どもにもわかるように対話をすることが不可欠です。
(石村 衛/ファイナンシャルプランナー)