限られた時間の中で良い「人財」を採用したいのが企業の本音
大学生の就職や就職活動において、毎年、様々な問題点が指摘されています。代表的なのが、「就職活動の開始時期」「学歴フィルターと呼ばれるもの」「就職後の早期離職」。今回は、「学歴フィルター」について考えてみます。全ての企業が当てはまるわけではありませんが、実在することがあります。
企業にとっては、採用でさえ、合理的に考えています。限られた時間の中で、「良い人財を採用したい」というのが企業の本音。大学生と同様、企業にとっても内々定を出すタイミングまで時間が限られているのです。そういった意味では、「学歴フィルター」も仕方のないことかもしれません。
企業が大学生を選ぶのではなく、大学生が企業を選ぶ
就職活動において、企業の思惑と大学生の戸惑いを解決することは、非常に難しい社会問題のひとつ。しかし、「解決できないのか」というと、時間は必要ですが、解決に向かうことはできると思います。
大学生側からの解決方法を考えてみます。それは、簡単に言えば、大学生が企業を選ぶようにすること。一般的には企業が大学生を選んでいるように見えますが、企業は大学生に選ばれることが怖いのです。例えば、企業の人事担当者は「内定を出したけど、本当にわが社に来てくれるのだろうか」と不安を抱いています。採用したい「人財」は、「どの企業も欲しいと思っているに違いない」と考えているからです。
学歴フィルターで選考から外されることがあったとすれば、「縁がなかった」ぐらいに思えば良いでしょう。採用が出た企業で、一緒に企業を創り上げていく一員になれば良いのですから。創り上げる楽しさを知れば、より多くの楽しみが見えてきます。
自らが働くことで「企業を創り上げる」という意識を
では、企業を選ぶ大学生になるために大切なことを3つ挙げてみます。1つ目は、情報に翻弄されない行動を就職活動までに継続的に行うこと。「人気=優良企業」とは限りません。もっと考えると、この「優良」とは、どのような定義でしょうか。安易に人気企業ランキングなどに流されていませんか?
社会に流れている情報は、CM化しているものが多々あります。「CM化情報」から脱する意識が、就職活動において必要不可欠です。大学生という期間に、自分自身が生きている社会、そして自分の生き方も感じながら行動しないと惑わされていきます。それには、検討に値する情報を数多く持つことが早道。つまり、多くの人と会い、数多くの話をし、物事が起こっている現場を感じることです。画面上の情報だけでは、判断がつかないことがたくさんあります。
2つ目は、自ら「創る」という意識を持つこと。ここでの「創る」とは、自分自身を「創る」ことでもあるし、雇われる感覚ではなく、自らが働くことで社員のみんなと一緒に企業を「創り上げる」という意識です。「自分を創り上げる意識」「企業を一緒に創り上げる意識」・これらを持つ人が、企業にとっても魅力ある人であるのは間違いありません。
「学歴フィルター」に惑わされない学生が増えれば状況は変わる
そして、3つ目は、便利なものに使われないこと。便利なものを使えば、大体のことはできてしまいます。例を挙げてみます。行ったことのない場所に移動しなければならないとき、どうしますか?おそらく、乗る路線や乗換の駅などをスマートフォンで検索して目的地まで行く人が多いと思われます。
日頃から自分で考えて行動する人であれば、スマートフォンを使って目的を達したことになりますが、考えて行動しない人にとっては指示通りに動いただけになります。この違いが非常に大きいのです。「便利なものを使っている」つもりが、いつの間にか「便利なものに使われている」ことになります。
指示通り動く習慣の人は、物事が起こった結果に往々にして「人のせい」や「モノのせい」にすることがよくあります。就活の壁も「学歴フィルターのせい」にするのではなく、それまでの自分の行動を確認する作業が必要です。
「学歴フィルター」に惑わされない学生が増えれば、企業はフィルター越しに人を見ることをやめるでしょう。また、「学歴フィルター」を使うことで業績が下がる状況が生まれれば、企業は即時見直しを始めます。
(木村 文俊/大学生塾 理事長)