プリンで嚙み締めるべきは味だけじゃない。その楽しみは、眺めることから始まる。
「プリンの型から抜かれた富士山形にノスタルジーを感じるし、垂れるカラメルの質感に新たな発見があるんです」
そんな編集キタオカが激しく頷きたくなる名言を聞かせてくれたのは、プリン好きが高じてプリンのレシピ本『魅惑のプリン』を上梓するまでに至った、も。けん氏だ。
今回は「カラメル」と「トッピング」の2軸から「映えプリン」を分類。味覚と視覚で人を喜びの頂きへと導く、魅惑のプリンたちを味わい尽くそう。
◆新橋・50年変わらないこだわりのジャンボプリン「ヘッケルン」
映えプリンのスタート地点として、オススメしたい場所がある。50年以上、港区・新橋の路地裏に佇み続ける老舗喫茶「ヘッケルン」だ。
オープン当時、どのビルにも必ず入っていたという純喫茶の中で個性を出すべく、店主の森静雄さんが研究を積み重ね考案した「ジャンボプリン」がそこにはある。
名前の通り、通常の2.5倍ほどある型から生み出された存在感。数秒タイミングを伸ばすだけで別物になってしまうという、1時間かけて煮詰められた琥珀色に輝くカラメル。材料に添加物は一切使われていないため、毎日お店でその日の分が仕込まれている。
◆「プリン巡りをするならまずはここ!」
取材時、ズラリとカウンターに並ぶプリンの型に「すごい数ですね」と声をかけると「一つ一つ手作りなの」とニッコリ。店主が「かわいい、かわいいプリンですよ」「おいしい、おいしいプリンですよ」と声をかけながら、お客さんたちの元へ送り出されるプリンをずっと眺め続けたいが、型から抜きたてだからこそ残るカラメルの香りが消えないうちに食べ始めよう。
も。けん氏も「プリン巡りをするなら、まずはここ!という外せないお店です。『ヘッケルン』起点でプリンを知れば、自分のプリン軸をつくれると思います」と推奨する。
「たしかに最初は入りづらい雰囲気があるかもしれない」とマスター自身も言う趣に臆せず、ドアを開ければ心温まるプリンとマスターが待っている。
◆も。けん氏のプリン巡りの原点「東出珈琲店(金沢)」
プリン巡りには忘れられない原体験がつき物だ。も。けん氏が「とにかくおいしい」と衝撃を受けたと明かすのが、金沢の「東出珈琲店」。
「一見したら普通のプリン。でも、見た目以上に口どけがよく、コクや焦がされたカラメルの味わいがあります」
小さなころにホテルで食べたケーキのようなホールから切り出された懐かしい三角形も美しい。
◆プリン好き編集部員の運命を決めた「ドース イスピーガ(神保町)」
そして私、編集キタオカの運命を決めたプリンは、2017年7月にオープンした神保町のポルトガル菓子店「ドース イスピーガ」に。
名物はパステル・デ・ナタ(エッグタルト)。事前予約は先々まで埋まっており、当日分も早めに売り切れてしまうほどの人気だ。しかし、店主の高村美祐記さんはもともと製菓の勉強をしていたわけでも、ポルトガル菓子店を開こうと思っていたわけでもなかったという。
2004年~2005年までポルトガルに住んでいた経験から、帰国後もポルトガルと繋がる仕事をしたいという思いを抱いた高村さん。日本でポルトガルレストランに就職し、調理師免許などを取得していく中で、家庭的な設備でも作れて、自分で売れるものを考えた末、現在の「ポルトガルのお菓子」に辿り着いた。最初は自転車での行商からスタートし、2017年からは現在の店舗型に。
ちなみに、プリンの誕生は2008年まで遡る。北部の大学の学食で働く調理師のイザベルさんという女性が作る子供のころに食べていたような弾力のあるプリンのレシピが元になっているのだそう。
最後に、恥ずかしいが、「ドース イスピーガ」のプリンを初めて食べた当時の感想メモを抜粋してみよう。「しっかりした立ち姿。しっかりした重み。得られる満足感、プライスレス」はじまりのプリンはきっとどこかであなたを待っている。
◆見逃せないブラジル発のネクストブレイクプリン
「やっぱりおいしいんですよ、ここのプリン」とも。けん氏がしみじみ語るのは清澄白河に’20年にリニューアルオープンした「TOKAKU Coffee+」の「中津さんのブラジルプヂン」だ。
ブラジルプヂンとは、コンデンスミルクをベースに作る濃厚なブラジル式プリンがココアスポンジの上にのった2層のプリンのこと。真ん中に穴の開いたリング状の型に材料をすべて入れ、一気に蒸し焼きにして出来上がる。
◆味のしっかりとしたプヂンには深煎り珈琲がオススメ
日本でただ一人のブラジルプヂン研究家である中津雄春氏考案のレシピで作られたプヂンを食べられるのは、東京では1か所だけ(ちなみに、大阪では吹田市に位置する自家焙煎コーヒー店「COLINA COFFEE」で提供されている)。店長の松本順さんいわく、「味のしっかりとしたプヂンには深煎りの珈琲がオススメ」。
ネクストブレイクプリンと注目を集める「プヂン」を先取りだ。
【プリニスト・も。けん氏】
’19年から本格的にプリン巡りに開眼し、年間200店舗を訪問。プリンのレシピも発信中。インスタは@mxoxkxexn
【SPA!偏愛者・プリニスト見習い キタオカ】
オハヨー乳業の「新鮮卵のこんがり焼プリン」信者。自身の披露宴ではプリンについて綴った冊子を参列者に配布
<取材・文/週刊SPA!編集部 撮影/五十嵐一晴(ヘッケルン)、難波雄史(ドース イスピーガ、TOKAKU Coffee+)、も。けん(東出珈琲店)>
「プリンの型から抜かれた富士山形にノスタルジーを感じるし、垂れるカラメルの質感に新たな発見があるんです」
そんな編集キタオカが激しく頷きたくなる名言を聞かせてくれたのは、プリン好きが高じてプリンのレシピ本『魅惑のプリン』を上梓するまでに至った、も。けん氏だ。
今回は「カラメル」と「トッピング」の2軸から「映えプリン」を分類。味覚と視覚で人を喜びの頂きへと導く、魅惑のプリンたちを味わい尽くそう。
◆新橋・50年変わらないこだわりのジャンボプリン「ヘッケルン」
映えプリンのスタート地点として、オススメしたい場所がある。50年以上、港区・新橋の路地裏に佇み続ける老舗喫茶「ヘッケルン」だ。
オープン当時、どのビルにも必ず入っていたという純喫茶の中で個性を出すべく、店主の森静雄さんが研究を積み重ね考案した「ジャンボプリン」がそこにはある。
名前の通り、通常の2.5倍ほどある型から生み出された存在感。数秒タイミングを伸ばすだけで別物になってしまうという、1時間かけて煮詰められた琥珀色に輝くカラメル。材料に添加物は一切使われていないため、毎日お店でその日の分が仕込まれている。
◆「プリン巡りをするならまずはここ!」
取材時、ズラリとカウンターに並ぶプリンの型に「すごい数ですね」と声をかけると「一つ一つ手作りなの」とニッコリ。店主が「かわいい、かわいいプリンですよ」「おいしい、おいしいプリンですよ」と声をかけながら、お客さんたちの元へ送り出されるプリンをずっと眺め続けたいが、型から抜きたてだからこそ残るカラメルの香りが消えないうちに食べ始めよう。
も。けん氏も「プリン巡りをするなら、まずはここ!という外せないお店です。『ヘッケルン』起点でプリンを知れば、自分のプリン軸をつくれると思います」と推奨する。
「たしかに最初は入りづらい雰囲気があるかもしれない」とマスター自身も言う趣に臆せず、ドアを開ければ心温まるプリンとマスターが待っている。
◆も。けん氏のプリン巡りの原点「東出珈琲店(金沢)」
プリン巡りには忘れられない原体験がつき物だ。も。けん氏が「とにかくおいしい」と衝撃を受けたと明かすのが、金沢の「東出珈琲店」。
「一見したら普通のプリン。でも、見た目以上に口どけがよく、コクや焦がされたカラメルの味わいがあります」
小さなころにホテルで食べたケーキのようなホールから切り出された懐かしい三角形も美しい。
◆プリン好き編集部員の運命を決めた「ドース イスピーガ(神保町)」
そして私、編集キタオカの運命を決めたプリンは、2017年7月にオープンした神保町のポルトガル菓子店「ドース イスピーガ」に。
名物はパステル・デ・ナタ(エッグタルト)。事前予約は先々まで埋まっており、当日分も早めに売り切れてしまうほどの人気だ。しかし、店主の高村美祐記さんはもともと製菓の勉強をしていたわけでも、ポルトガル菓子店を開こうと思っていたわけでもなかったという。
2004年~2005年までポルトガルに住んでいた経験から、帰国後もポルトガルと繋がる仕事をしたいという思いを抱いた高村さん。日本でポルトガルレストランに就職し、調理師免許などを取得していく中で、家庭的な設備でも作れて、自分で売れるものを考えた末、現在の「ポルトガルのお菓子」に辿り着いた。最初は自転車での行商からスタートし、2017年からは現在の店舗型に。
ちなみに、プリンの誕生は2008年まで遡る。北部の大学の学食で働く調理師のイザベルさんという女性が作る子供のころに食べていたような弾力のあるプリンのレシピが元になっているのだそう。
最後に、恥ずかしいが、「ドース イスピーガ」のプリンを初めて食べた当時の感想メモを抜粋してみよう。「しっかりした立ち姿。しっかりした重み。得られる満足感、プライスレス」はじまりのプリンはきっとどこかであなたを待っている。
◆見逃せないブラジル発のネクストブレイクプリン
「やっぱりおいしいんですよ、ここのプリン」とも。けん氏がしみじみ語るのは清澄白河に’20年にリニューアルオープンした「TOKAKU Coffee+」の「中津さんのブラジルプヂン」だ。
ブラジルプヂンとは、コンデンスミルクをベースに作る濃厚なブラジル式プリンがココアスポンジの上にのった2層のプリンのこと。真ん中に穴の開いたリング状の型に材料をすべて入れ、一気に蒸し焼きにして出来上がる。
◆味のしっかりとしたプヂンには深煎り珈琲がオススメ
日本でただ一人のブラジルプヂン研究家である中津雄春氏考案のレシピで作られたプヂンを食べられるのは、東京では1か所だけ(ちなみに、大阪では吹田市に位置する自家焙煎コーヒー店「COLINA COFFEE」で提供されている)。店長の松本順さんいわく、「味のしっかりとしたプヂンには深煎りの珈琲がオススメ」。
ネクストブレイクプリンと注目を集める「プヂン」を先取りだ。
【プリニスト・も。けん氏】
’19年から本格的にプリン巡りに開眼し、年間200店舗を訪問。プリンのレシピも発信中。インスタは@mxoxkxexn
【SPA!偏愛者・プリニスト見習い キタオカ】
オハヨー乳業の「新鮮卵のこんがり焼プリン」信者。自身の披露宴ではプリンについて綴った冊子を参列者に配布
<取材・文/週刊SPA!編集部 撮影/五十嵐一晴(ヘッケルン)、難波雄史(ドース イスピーガ、TOKAKU Coffee+)、も。けん(東出珈琲店)>