「人生の節目には、いつも猫との出会いがあった」。そんな風に語るのは、『ちびすけmeetsおおきい猫さんたち』(三笠書房)の著者、椹野道流さん。医師、非常勤講師、そして作家の椹野さんの自宅には、常に複数匹の猫がいました。ある大雨の夜、一匹の子猫と出会います。それがちびすけです。母猫とはぐれてしまったちびすけは、椹野さんに抱かれるなりゴロゴロと喉を鳴らしました。椹野さんを信頼し、心を許した瞬間でした。
私も猫を飼った経験がありますが、猫はきちんと人を見ています。安心できる人なのか、頼っていい人なのか、その研ぎ澄まされた瞳で人の本質を見抜くのです。生きるか死ぬかの瀬戸際で、ちびすけは椹野さんに命をあずけると決めたのでしょう。
◆ちびすけと先住猫
人間社会にルールがあるように、猫社会にもルールがあります。もしかしたら、人間よりも上下関係に厳しいかもしれません。ちびすけは新参者、子猫だからといって甘えは許されないのです(たぶん)。
好奇心旺盛のちびすけは、大きい猫さんたちとお近づきになりたくて、背後から懸命に視線を送ります。大きい猫さんたちがあまりにも大きいので、威厳に満ちているように感じたのでしょう。
じりじりと控えめにすりよって、隣でゴハンをいただくことに成功。ちびすけを見つめる甘利兄さんのまなざしも、すっかりやさしくなりました。
「甘利兄さん、遊びませんか?」。そう問いかけていそうなちびすけ。ぐいーんと伸びた体と上目遣いに、のんびり休憩していた甘利兄さんも根負けしたようです。茶目っ気あふれるちびすけには、どっしりかまえた大きい猫さんも相好を崩してしまいます。
◆最高の愛情表現
猫の愛情表現といえばグルーミング。猫同士がお互いを舐め合うことをアログルーミングといいますが、これは相手に自分の匂いをつけて信頼関係を築いているのです。「あなたのことが大好き」という気持ちを、余すことなく伝える行為でもあります。
ちびすけは甘利兄さんの心をついにノックアウト。甘利兄さんのふわふわで大きく、あたたかな被毛に包まれ、グルーミングを堪能しています。安心しきって体をあずけているちびすけの、うっとりした目にこちらまでキュンとします。
◆ちびすけ、家族の一員になる
甘利兄さん、福本兄さん、波多野姉さん、そしてママこととびちゃんも、ちびすけを家族と認めたようです。椹野さんいわく、「ちびすけ持ち前の、物怖じしない、開けっぴろげでフレンドリーな性格が、警戒心の強い先住猫たちの心をこじ開けたようです」。
ちびすけの存在が、猫たちの執事である椹野さんの日常に、新たな彩をもたらしました。きっと猫たちにとっても、突如現れたちびすけの無邪気さや明るさが、癒しになっているのではないでしょうか。なぜなら、ページをめくっていくごとに、体だけではなく心の距離が縮まっていき、絆が深まるのがわかるのです。
「猫のいない人生など、もはや想像することもできません」と椹野さん。猫同志の愛と、猫にそそぐ愛と、猫たちからにじみ出る椹野さんへの愛を、どうぞ本書から味わってください。
<文/森美樹>
【森美樹】
1970年生まれ。少女小説を7冊刊行したのち休筆。2013年、「朝凪」(改題「まばたきがスイッチ」)で第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『主婦病』(新潮社)、『母親病』(新潮社)、『神様たち』(光文社)を上梓。Twitter:@morimikixxx
私も猫を飼った経験がありますが、猫はきちんと人を見ています。安心できる人なのか、頼っていい人なのか、その研ぎ澄まされた瞳で人の本質を見抜くのです。生きるか死ぬかの瀬戸際で、ちびすけは椹野さんに命をあずけると決めたのでしょう。
◆ちびすけと先住猫
人間社会にルールがあるように、猫社会にもルールがあります。もしかしたら、人間よりも上下関係に厳しいかもしれません。ちびすけは新参者、子猫だからといって甘えは許されないのです(たぶん)。
好奇心旺盛のちびすけは、大きい猫さんたちとお近づきになりたくて、背後から懸命に視線を送ります。大きい猫さんたちがあまりにも大きいので、威厳に満ちているように感じたのでしょう。
じりじりと控えめにすりよって、隣でゴハンをいただくことに成功。ちびすけを見つめる甘利兄さんのまなざしも、すっかりやさしくなりました。
「甘利兄さん、遊びませんか?」。そう問いかけていそうなちびすけ。ぐいーんと伸びた体と上目遣いに、のんびり休憩していた甘利兄さんも根負けしたようです。茶目っ気あふれるちびすけには、どっしりかまえた大きい猫さんも相好を崩してしまいます。
◆最高の愛情表現
猫の愛情表現といえばグルーミング。猫同士がお互いを舐め合うことをアログルーミングといいますが、これは相手に自分の匂いをつけて信頼関係を築いているのです。「あなたのことが大好き」という気持ちを、余すことなく伝える行為でもあります。
ちびすけは甘利兄さんの心をついにノックアウト。甘利兄さんのふわふわで大きく、あたたかな被毛に包まれ、グルーミングを堪能しています。安心しきって体をあずけているちびすけの、うっとりした目にこちらまでキュンとします。
◆ちびすけ、家族の一員になる
甘利兄さん、福本兄さん、波多野姉さん、そしてママこととびちゃんも、ちびすけを家族と認めたようです。椹野さんいわく、「ちびすけ持ち前の、物怖じしない、開けっぴろげでフレンドリーな性格が、警戒心の強い先住猫たちの心をこじ開けたようです」。
ちびすけの存在が、猫たちの執事である椹野さんの日常に、新たな彩をもたらしました。きっと猫たちにとっても、突如現れたちびすけの無邪気さや明るさが、癒しになっているのではないでしょうか。なぜなら、ページをめくっていくごとに、体だけではなく心の距離が縮まっていき、絆が深まるのがわかるのです。
「猫のいない人生など、もはや想像することもできません」と椹野さん。猫同志の愛と、猫にそそぐ愛と、猫たちからにじみ出る椹野さんへの愛を、どうぞ本書から味わってください。
<文/森美樹>
【森美樹】
1970年生まれ。少女小説を7冊刊行したのち休筆。2013年、「朝凪」(改題「まばたきがスイッチ」)で第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『主婦病』(新潮社)、『母親病』(新潮社)、『神様たち』(光文社)を上梓。Twitter:@morimikixxx