飲食店でアルバイトをしたことのある人ならば、かなりの確率で“度を超えたわがままなお客さん”に遭遇したことがあるのではないでしょうか。
今回はそんなわがまま客にキレてしまった女性のエピソードをご紹介しましょう。
◆有名なわがまま客
柏木裕美子さん(仮名・36歳/主婦)は、週に2回カフェでアルバイトをしています。
「おしゃれでフードメニューも充実したお店なので、ランチタイムは若い女性のグループやカップルのお客さんが多いのですが…。14時ぐらいの空いている時間帯にしょっちゅう来る60代後半位のおじさん客が、とにかくわがままでバイト仲間の中でも有名なんですよ」
そのおじさん客は、毎回単品でミートソースパスタを注文するそう。
「そして『水のおかわりをくれ』と何度も店員を呼びつけては、『今日のスカートいいね、旦那とは仲良くやっているの?』などニヤニヤしながらセクハラまがいのことを言ってくるのがお決まりなんです」
◆「味が違う」と言いがかりをつけてきて…
裕美子さんはその度に作り笑顔で「はい、おかげさまで」と適当に流していましたが、最近入ったばかりのバイトの夏希さん(仮名・33歳/主婦)は、ついあからさまに不愉快な気持ちを態度に出してしまいました。
「するとそのおじさん客はパスタを一口食べると、夏希さんを呼びつけて『おい、今日のミートソース味がしないじゃないか!昨日と全然違う!取りかえろ』と怒鳴り散らかしたんですよ」
ちなみにそのお店のミートソースは一気にまとめて作っていて小分けにして冷凍し、その都度解凍して使っているので、つまり昨日出したものも今日のも全く同じものなので、完全な言いがかりでした。
「まぁ味なんて本当はどうでもよくて、ただ自分の相手をしてくれなかった夏希さんに怒りをぶつけたかっただけなんでしょうけど」
◆理不尽な要求がエスカレート
それからもそのおじさん客は夏希さんに「なんで俺に使いかけの粉チーズやタバスコなんか出すんだ!毎回新品を持ってこい」など、理不尽な要求をしたそう。
「最初は適当にあしらおうということになっていたのですが、あまりに目に余る身勝手な行動が多いので店長とバイト皆んなで話し合いになりました。
そして、そのおじさん客にはピッチャーごと水を提供して、その都度(つど)注ぎに行かないことに統一し、次に何かあったら“もう出入り禁止だ”と店長が言いに行く、ということになったんですよ」
そんなある日、裕美子さんがワンオペの時にそのおじさん客が来店したそう。
「あぁ何で私ひとりの時に…と思いましたが、仕方がないのでグラスのお水とピッチャーを出したら、やはりうっとうしく思われているのを察知したのか、私を呼びつけて『おい、機種変更したからメールの設定をやってくれ』とスマホを押し付けてきて…。水を要求できなくなったら今度は雑用をやらせようとしてきたんですよ」
◆怒りのスイッチ、オン!
心の中であきれながら「申し訳ございませんが、それはできかねます」と丁寧に断りその場を離れようとすると、おじさん客がニヤつきながらそのスマホを裕美子さんに向けるとカシャッと写真撮りました。
「その瞬間に私の怒りスイッチが入ってしまい『はぁ?無許可で何やっているんですか。肖像権侵害ですよ。今すぐその写真を私の目の前で消してください。早く、さぁ早く』と気がついたら、そのおじさん客をものすごく冷たい目でニラみながら追い詰めていたんですよ」
いつも下ネタやつまらないダジャレですら笑顔で受け流してくれていた裕美子さんの豹変(ひょうへん)に、おじさん客はあきらかに動揺している様子だったそう。
「普段の私はムカついていてもほとんど表には出しませんし、見た目もほんわかしていて常に笑顔なのですが…いざ怒るとギャップもあってかすごく怖いって言われるんですよね(笑)』
◆おじさん客を撃退
おじさん客がスマホを上手く操作できずにあたふたしていたので「できないなら私がやりますよ。いいですね?ほら、いいですね?」とせまり、強引に「はい」と言わせて素早く自分の写真を消しました。
「とりあえずデバイスから削除しましたが、不愉快な気持ちは収まりませんでした。まぁスマホの操作もろくにできないおじさんなので復元したりはしないと思いますが、とにかく本当にムカついてたまらなくて、ずっとピリピリした態度で接していたら、いつものパスタも注文せずコーヒーだけ頼むとガブ飲みして逃げるように帰っていったんです」
そしてそれ以来、そのおじさん客はカフェに来なくなったそう。
「店長やバイトの皆んなに『いったいどんな風にあのおじさんに注意したの?』と不思議がられたので、一部始終を話すと『たまたまおじさん客がシュンとして帰ってくれたから良かったけど、逆上して暴力でも振るわれたらどうするの?怒る気持ちも分かるけど、そういう時はすぐに電話をして店長を呼んで』と怒られてしまい、それもそうだなと反省しました」
「もしまた迷惑なお客さんが来た時は、今回の経験を活かしてもっと注意深く接しようと思いました。まぁできることなら良いお客さんばかり来て欲しいですけどね」と苦笑いする裕美子さんなのでした。
<文&イラスト/鈴木詩子>
【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop
今回はそんなわがまま客にキレてしまった女性のエピソードをご紹介しましょう。
◆有名なわがまま客
柏木裕美子さん(仮名・36歳/主婦)は、週に2回カフェでアルバイトをしています。
「おしゃれでフードメニューも充実したお店なので、ランチタイムは若い女性のグループやカップルのお客さんが多いのですが…。14時ぐらいの空いている時間帯にしょっちゅう来る60代後半位のおじさん客が、とにかくわがままでバイト仲間の中でも有名なんですよ」
そのおじさん客は、毎回単品でミートソースパスタを注文するそう。
「そして『水のおかわりをくれ』と何度も店員を呼びつけては、『今日のスカートいいね、旦那とは仲良くやっているの?』などニヤニヤしながらセクハラまがいのことを言ってくるのがお決まりなんです」
◆「味が違う」と言いがかりをつけてきて…
裕美子さんはその度に作り笑顔で「はい、おかげさまで」と適当に流していましたが、最近入ったばかりのバイトの夏希さん(仮名・33歳/主婦)は、ついあからさまに不愉快な気持ちを態度に出してしまいました。
「するとそのおじさん客はパスタを一口食べると、夏希さんを呼びつけて『おい、今日のミートソース味がしないじゃないか!昨日と全然違う!取りかえろ』と怒鳴り散らかしたんですよ」
ちなみにそのお店のミートソースは一気にまとめて作っていて小分けにして冷凍し、その都度解凍して使っているので、つまり昨日出したものも今日のも全く同じものなので、完全な言いがかりでした。
「まぁ味なんて本当はどうでもよくて、ただ自分の相手をしてくれなかった夏希さんに怒りをぶつけたかっただけなんでしょうけど」
◆理不尽な要求がエスカレート
それからもそのおじさん客は夏希さんに「なんで俺に使いかけの粉チーズやタバスコなんか出すんだ!毎回新品を持ってこい」など、理不尽な要求をしたそう。
「最初は適当にあしらおうということになっていたのですが、あまりに目に余る身勝手な行動が多いので店長とバイト皆んなで話し合いになりました。
そして、そのおじさん客にはピッチャーごと水を提供して、その都度(つど)注ぎに行かないことに統一し、次に何かあったら“もう出入り禁止だ”と店長が言いに行く、ということになったんですよ」
そんなある日、裕美子さんがワンオペの時にそのおじさん客が来店したそう。
「あぁ何で私ひとりの時に…と思いましたが、仕方がないのでグラスのお水とピッチャーを出したら、やはりうっとうしく思われているのを察知したのか、私を呼びつけて『おい、機種変更したからメールの設定をやってくれ』とスマホを押し付けてきて…。水を要求できなくなったら今度は雑用をやらせようとしてきたんですよ」
◆怒りのスイッチ、オン!
心の中であきれながら「申し訳ございませんが、それはできかねます」と丁寧に断りその場を離れようとすると、おじさん客がニヤつきながらそのスマホを裕美子さんに向けるとカシャッと写真撮りました。
「その瞬間に私の怒りスイッチが入ってしまい『はぁ?無許可で何やっているんですか。肖像権侵害ですよ。今すぐその写真を私の目の前で消してください。早く、さぁ早く』と気がついたら、そのおじさん客をものすごく冷たい目でニラみながら追い詰めていたんですよ」
いつも下ネタやつまらないダジャレですら笑顔で受け流してくれていた裕美子さんの豹変(ひょうへん)に、おじさん客はあきらかに動揺している様子だったそう。
「普段の私はムカついていてもほとんど表には出しませんし、見た目もほんわかしていて常に笑顔なのですが…いざ怒るとギャップもあってかすごく怖いって言われるんですよね(笑)』
◆おじさん客を撃退
おじさん客がスマホを上手く操作できずにあたふたしていたので「できないなら私がやりますよ。いいですね?ほら、いいですね?」とせまり、強引に「はい」と言わせて素早く自分の写真を消しました。
「とりあえずデバイスから削除しましたが、不愉快な気持ちは収まりませんでした。まぁスマホの操作もろくにできないおじさんなので復元したりはしないと思いますが、とにかく本当にムカついてたまらなくて、ずっとピリピリした態度で接していたら、いつものパスタも注文せずコーヒーだけ頼むとガブ飲みして逃げるように帰っていったんです」
そしてそれ以来、そのおじさん客はカフェに来なくなったそう。
「店長やバイトの皆んなに『いったいどんな風にあのおじさんに注意したの?』と不思議がられたので、一部始終を話すと『たまたまおじさん客がシュンとして帰ってくれたから良かったけど、逆上して暴力でも振るわれたらどうするの?怒る気持ちも分かるけど、そういう時はすぐに電話をして店長を呼んで』と怒られてしまい、それもそうだなと反省しました」
「もしまた迷惑なお客さんが来た時は、今回の経験を活かしてもっと注意深く接しようと思いました。まぁできることなら良いお客さんばかり来て欲しいですけどね」と苦笑いする裕美子さんなのでした。
<文&イラスト/鈴木詩子>
【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop