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Aぇ! group、苦難の末にCDデビュー。“王道アイドルじゃない”からこそ愛される理由

女子SPA! 2024年5月29日 8時45分

2024年5月15日、関西出身のアイドルグループ「Aぇ! group」がCDデビューを果たしました。京セラドーム大阪でデビュー発表を行い、CD発売日の前日は道頓堀で船上イベントを行いました。

旧・関西ジャニーズJr.として2019年に結成され、新会社のSTARTO ENTERTAINMENTに所属する彼らは、早くも関西を代表する存在となりつつあります。

◆王道アイドルじゃないからこその、3つの魅力

メンバーは、末澤誠也さん(29)、草間リチャード敬太さん(28)、正門良規さん(27)、小島健さん(24)、佐野晶哉さん(22)の5人。Aぇ! groupは歌とダンスはもちろん、バンド、芝居、モデル、お笑い、メンバーによっては島を作ったりウナギを捕まえたりと、「アイドル」と呼ぶには、ちょっと汗の量が多いような…?

いわゆる「アイドル」とは一味違うAぇ! groupですが、5月21日発表の最新「オリコン週間シングルランキング」では、デビューシングル『《A》BEGINNING』が初週62.5万枚を売り上げたとのこと。また、Billboard JAPAN週間シングル・セールス・チャート「Top Singles Sales」では初週売上78.2万枚が報告されました。

このことに加え、過去のコンサートの動員数を考えても、すでに人気は申し分ありません。

なぜ今、“王道アイドル”ではない彼らが、こんなに支持を集めているのでしょうか。あまりにも多い彼らの魅力を、特に知ってほしい3つに絞って紹介します。

◆①“大人の安定感”と“ガキンチョ感”をあわせもつ

Aぇ! groupの一番の特徴は、なんといっても“大人”であること。末澤さんはSTARTO ENTERTAINMENT所属タレントの中では歴代最年長デビューとなり、正門さんと草間さんもアラサー。佐野さん以外は入所歴10年を超えているからか、デビューしたばかりとは思えない貫禄を感じさせます。

過去のレギュラー番組『なにわからAぇ!風吹かせます!なにわイケメン学園×Aぇ!男塾』(関西テレビ)では、王道アイドル「なにわ男子」と違って、「Aぇ! groupは死なん程度に何でもいい」と事務所からNGなし宣言が出ている……と明かされていました(2020年3月9日放送分)。

これは彼らのキャラクターに加え、キャリアの長さからくる安定感によるものだと思われます。その結果、バンジージャンプ、三人四脚で登山、ハチの巣駆除体験など、なかなかハードなことをしていましたが、すべてきれいに笑いに昇華。

YouTubeチャンネルやラジオでほぼ毎回起こる、メンバー同士のひと悶着もポイント。ただ車に乗っているだけ、ただコタツに入っているだけ、ただ歩いているだけ……それだけで誰かが“いらんこと”を言い、誰かがキレながらツッコミを入れる。その様子は、“関西のそのへんの男の子”そのものです。

「笑いに貪欲なグループ」というイメージが付きつつありますが、彼らは笑いを狩りにいっているというよりも“等身大の関西人”のような親しみやすさと完成された団体芸があるため、ビジュアル以外からも沼にハマる可能性を秘めています。

◆②最年少の佐野さんが支える、妥協なしの音楽性

いきなりAぇ! groupのおもしろさについて紹介しましたが、音楽面のクオリティの高さも特徴です。

その裏には、22歳の佐野さんの存在があります。佐野さんは、実は小学生の頃からミュージカルスクールに通い、劇団四季の『ライオンキング』でヤングシンバ役を務めていました。幼い頃から仕事をしていたからか、グループ最年少にもかかわらず、ほかの4人に負けない安定感があります。

グループ内ではドラム担当の佐野さんですが、ピアノ、ギター、サックスもできるうえに、高校の声楽科、音楽大学の作曲科を卒業しています。2021年8月放送の『生放送で満点出せるか100点カラオケ音楽祭』(TBS)で「相対音感がある」と明かしていました。同番組内でSUPER EIGHTの安田章大さんが「(佐野さんが歌うと)音符がキラキラしている」と語るなど、音楽をよほど好きなのだと思うと同時に、きっと音楽も佐野さんのことが好きなのだろうと感じます。

その後はさらに才能をあらわし、さまざまな歌番組で賞金総額510万円を獲得。このことについて、ラジオ『Aぇ! groupのMBSヤングタウン』(MBS)で正門さんが「生涯年収に差がつき始めている」と嘆くシーンもありました。

とはいえ、ドラムは最初からできたわけではなく、関西ジュニア時代にいきなり「ドラムできる?」と言われて猛練習した結果だそうです。

デビュー前から歌のうまさに定評がある末澤さんや草間さん、事務所内No.1ギタリストを目指す正門さん、「本職はライブ」と語る小島さんがいるAぇ! groupは、音楽の部分で妥協することは決してない。4人にとって佐野さんは頼りになる最年少であり、そんな兄貴たちの熱い期待も、佐野さんが才能に驕らず努力し続ける理由なのでしょう。Aぇ! groupが最もこだわる音楽面を支えているのは、間違いなく佐野さんだと言えます。

と同時に、佐野さんは『ラヴィット!』(TBS)や『千鳥の鬼レンチャン』(フジテレビ)などテレビに引っ張りだこで、Aぇ! groupのバラエティ担当でもあります。

◆③次々と襲う苦難を乗り越えてきたドラマ性

2024年2月に結成5周年を迎えたAぇ! groupは、今の勢いからは考えられないほどの苦難を乗り越えてきました。振り返るだけで辛いくらいですが、そんなドラマがあって目が離せなくなるのもまた彼らの魅力です。

そもそもAぇ! groupは、SUPER EIGHTの横山裕さんがきっかけで2019年に誕生したグループ。たまに「寄せ集めのグループ」と言われるほど、ファンにとっても意外なメンバーでした。結成前、末澤さんと草間さんは仕事がなくて退所するか悩んでいたこともあったそうで、特に末澤さんは、あらかじめメンバーに「30歳がデビューのリミット」と伝えていたことを最近になって明かしています。

関西ジュニア時代に“バンド組”として活動していた正門さん、小島さん、佐野さんも、同じくパッとしない日々を送っていました。つまり、デビュー前どころかグループ結成前から、それぞれが何年ももどかしい思いをしてきたということです。

グループ結成後、“6人で”デビューを目指しながらそれぞれ得意分野を武器に仕事を獲得していきますが、まもなくコロナ禍に。ライブが中止になり、冠番組もリモート撮影になるなど、彼らを悩ませます。それでも持ち前のおもしろさとアイデア力でファン向けに動画を配信し続けました。

コロナ禍が落ち着いてからは、関西を中心にレギュラー番組やラジオを持ち、ドラマ、映画、舞台、ソロコンサート、演劇プロデュース、全国ツアー、フェス出演と、目が回りそうなほどの活躍ぶり。大声でボケとツッコミをする彼らをお茶の間でも見られるようになり、「デビューが近いのでは」という声が聞こえ始めた頃、事務所自体が存続の危機に見舞われます。

のちにYouTubeチャンネル『よにのちゃんねる』コラボ時に、小島さんが「あの頃、デビューが決まったことよりも先に、デビューが延期になったことをニュース記事で知った」と話しており、当時の彼らの辛さは計り知れません。

極めつけは、2023年末にメンバーが一人脱退したこと。前兆は一切なかったため、今でも傷が癒えていないファンの悲しみがSNSで見られます。それでも彼らは負けず、勝つことを諦めず、やっとの思いでCDデビューを掴みました。Aぇ! groupから「諦めないこと」の大切さを学んだ人は非常に多いと思います。

◆Netflixでドキュメンタリー番組も

ここまでAぇ! group の魅力を3つに分けて紹介しましたが、ひと言でまとめると、彼らはとても応援しやすいアイドルです。入口が多く、共感もできて、さらに元気ももらえる。枠にはまらないところもありますが、はみ出しすぎることもありません。

2024年5月に配信スタートしたドキュメンタリー番組『BORDERLESS Aぇ!group デビューまでのキセキ』(Netflix独占配信)で、「(僕は)アイドルでもない。表現者、エンターテイナー」と語る草間さん。たしかに彼らを見ていると、「アイドル」より「エンターテイナー」という肩書きのほうが似合う。

そんな彼らでも、自己紹介をするときは「アイドルです!」と言います。ツッコミ待ちかもしれないけど、アイドルらしくないかもしれないけど、彼らは自由に“彼らのアイドル像”で勝負しているのです。

◆王道じゃないからこそ自由に応援しやすい

だからこちらも、思い思いの応援の仕方をしていいのではないでしょうか。テレビの前で団体芸に大笑いするもよし、ライブに行って彼らの音色に圧倒されるのもよし、雑誌やSNSを見て「顔が良い」とはしゃぐのもよし。“王道を行かない”Aぇ! groupが生み出す余白こそが、こちら側にも選択肢を与えてくれている。どんどん厳しくなるルールやモラルに縛られて生きる現代人にとって、癒やしの時間にすら感じるはずです。

ドキュメンタリー番組のタイトルになっている「BORDERLESS」は、彼らのアイドル像とこれから増えるであろうファンの姿、そのものなのかもしれません。

<文/三浦椿>

【三浦 椿】
漫画やドラマ、アイドル、YouTuberなどの分析・考察が大好きなエンタメ系ライター

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