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賢く「投資」をしている人が結局、損してしまう“単純すぎる要因”

女子SPA! 2024年6月19日 15時45分

 今年1月に新NISAがスタートするなど、日本中で高まる投資熱。しかし、投資といえばリスクがつきもの。「失敗するのが怖いから」と二の足を踏んでいる人も少なくありません。

 これに対して「投資で失敗する人の多くが勘違いしているポイントがある」と語るのは、なかのアセットマネジメント株式会社代表取締役社長をつとめる中野晴啓さんです。中野さんが指摘する「投資で失敗しないためのポイント」を解説します。

(本稿は、中野晴啓『誠実な投資 お金から自由になれる「長期投資」の鉄則』(徳間書店)の一部を抜粋・編集したものです)

◆多くの人は「投機」を選ぶから失敗する

 日本にある投資商品は、一般の人が自分の資産をきちんと守り、安心して老後の資金を蓄えるには向いていない商品が多いです。その中での大前提として押さえてほしいポイントが、「投機」と「投資」を取り違えないことです。

「投資」という言葉を聞いたとき、多くの人は、投資という行為は、株券や通貨を買い、その株価や為替が今後上がるのか下がるのかを当てるゲームだと思っています。要するに多くの、みなさんが想像する「投資」は、実は「投機」です。

◆投資は、経済活動に参加するための一つの手段

 両者の違いについて、説明していきましょう。まず、「投資」とは、私たちのお金による経済活動への参加です。

 企業が発行する株式を購入した場合、その株券を発行するのと引き換えに、会社は資本調達をすることができます。

 会社が得た資本は、企業の社長や幹部たちが豪遊するためのお金ではありません。そのお金が新たな商品を作る設備投資や人件費などに使われることで、より良い商品やサービスを生むことができます。

 良い商品やサービスが生まれて企業が成長すれば、株価も上がるし、配当金も出るし、資金提供した投資家にもメリットが生まれます。また、社会に新たな価値をもたらす良い企業が生まれれば、社会の活性化にもつながり、一般人の生活にも良い影響を与えていきます。

◆数字だけを追いかける「投機」より、社会を成長させる「投資」を選ぼう

 ただ、重要なのは、こうした企業の事業活動の成果は、一朝一夕では生まれないという点です。ひとつの企業が新サービスや新商品を生み出し、それが社会に受け入れられ、普及していくまでには、長い年月が必要です。その期間に短期売買せず、長期にわたって企業を支援すること。それが、真の投資家の在り方だと私は考えています。

 一方の「投機」は「値上がりしそうなものを買って、値上がりしたときに売り、利ザヤを稼ぐ」という行為です。

 短期的には、数字を追いかける「投機」の方が、簡単に利益を得られるように感じるかもしれませんが、長期的に「投資」を行うことで、投資家に成長の果実が分配されると共に、社会全体の豊かさにもつながります。

◆投機がギャンブルになるのは、マーケットは誰にも読めないから

 投機を選んではいけない理由は、「市場の値動きは誰にも確実に当てられない以上、短期的な売買を狙うとギャンブルになってしまうから」です。

 読者のみなさんの中には、すでに短期トレードでなんらかの利益を出していて、「そうはいっても自分は予測を当てて、大金を得たことがある!」とお考えの方もいるかもしれません。

 ですが、言葉を選ばずに言えば、仮にご自身が予測した相場動向が当たったとしても、それはたまたまであり、相場の上昇気流に偶然乗れただけかもしれません。つまり再現性がないので、今後何十年にもわたって同じ手法で資産を増やすことは困難だと言えるでしょう。

◆だから、エコノミストや経済評論家の予想は当たらない

 事実、新聞やマネー雑誌、ネットニュースなどを見ていると、多くのエコノミストや経済学者、経済評論家といった専門家たちが景気の見通しを発表しています。

 しかし、実際に、過去の見通しと現実の動向を見比べてみると、予想を当てる人よりも、外している人の方が多いことに気が付きます。もっと言えば、これまでにすべての景気動向を当てた経済評論家や学者は、誰もいないと私は思います。

 1989年のバブル景気の頃、多くのエコノミストや経済評論家たちが「日経平均株価は10万円台まで上がるはずだ」と口にしました。35年が経過した現在、日経平均株価はようやく最高値を更新しましたが、それでも、10万円には程遠く、ようやく4万円を超えた程度です。

 エコノミストや経済評論家たちは、経済のプロです。長年にわたってマーケットを観察してきた彼らですら、相場の動向を見誤ります。

 彼らよりもさらに知識のない個人が景気やマーケットの行く末を予測したとしても、外すケースの方が圧倒的に多いのは当然のことでしょう。

<撮影/小黒冴夏>

【中野晴啓】
なかのアセットマネジメント代表。1963年、東京生まれ。明治大学商学部卒業。2006年セゾン投信を設立、2007年4月代表取締役社長、2020年6月より代表取締役会長CEO 就任。2023年6月退任後、同年9月なかのアセットマネジメント設立。全国各地で講演やセミナーを行い、社会を元気にする活動とともに、積み立てによる資産形成を広く説き「つみたて王子」と呼ばれる。近著に『誠実な投資 お金から自由になれる「長期投資」の鉄則』(徳間書店)

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