独身生活大謳歌中のアラサー、七尾紫と申します。フリーの編集者として活動しながら、彼氏は作らず、結婚願望も持たず、日々楽しく過ごしています。
というのも、私は「元カレ全員ダメ男です」と胸を張って言えるほど男運がない。付き合うに至らなかった人も含めると数十人にのぼるダメ男体験の中から、今回はモラハラ男のエピソードをご紹介します。
◆「俗物だなぁ」が口癖の、夢追い男
これは私がまだ大学生で、同じ大学のひとつ年下の男の子と付き合っていたときの話です。出会ったときは犬のように人懐っこく、ちょっとアホで明るい、かわいい後輩でした。
ですが、彼は「将来の夢が変わった」と言い、大学を中退してしまいます。そこから本性があらわになったと言いますか、歯車が狂い始めたと言いますか……。普通に大学に通いながらバイトに励む私を見下すようになっていきました。
おそらく彼は自分が“夢追人”であることに誇りを持っていて、明確な夢を持たない私のことを“しょうもない人間”と認定したのだと思います。
それから、彼は私を「俗物」と呼ぶように。
「紫はどうしてそんなに俗っぽいの?夢とか見つけてさぁ、ちゃんとしなよ」
「恋愛ソングが好きとか……本当に俗物だね。そんなんじゃ嫌われるよ」などと言われる日々が続きました。
彼がどういう意味で「俗物」という言葉を使っていたのか謎ですが、たぶん『機動戦士ガンダム』を見たのだと思います。ちなみに彼の当時の将来の夢は「ハマーン・カーンになる」ではなく「漫画家」でした。(ガンダムに登場するカリスマ、ハマーン・カーンの口癖は「俗物!」でした。念のため)
◆待ち合わせ10秒後にデート中止。理由は“見た目”
そんな彼と付き合って半年を迎えようとしたころ。そのときの彼の将来の夢は「アパレル業界でてっぺんをとる」に変わっており、しかしバイトが続かないため、安くてシンプルな格好をするようになっていました。主にシャツにスキニーパンツのような格好です。ひと昔前のバンドマンっぽい服装ですね。反対に、私はストリートカジュアルが好きだったので、大きめのデニムやパーカーを好んで着ていました。
ある日、私のバイト終わりにデートの約束をしていたので、バイト先のアパレルショップの服を着たまま待ち合わせ場所に向かいました。カジュアルなワンピースにニット帽とスニーカー、みたいな格好だったと思います。
先に来ていた彼氏は走ってくる私の全身を、顔を歪めながら見回して、すぐに「今日はデートやめよう」と言いました。私が「お待たせ!」と言うより早かったです。「体調悪いの?」と聞くと…「なんでそんなカッコで来たの?」とひと言。
◆「一緒にいるところを見られたくない」とラブホ直行
彼がデートを中止したい理由は、私の格好が気に食わないからでした。加えて髪型も気に入らない。それどころか日本人らしい体型も、低い身長すら好きじゃないと言い出しました。足早にどこかに向かいながら、携帯電話の画面にパリコレモデルの写真を出し、私に見せて「どうしてこうなれないの?なれなくても近づく努力くらいしなよ」と言いました。
そのあとは、「一緒にいるところを誰かに見られたくない、恥ずかしい」と私をラブホテルに押し込み、やることやって解散。ホテル代は割り勘です。今思えばモラハラを超えてサイコパスっぽさすら感じますが、当時はまだどちらの言葉も知りませんでした。
◆容姿を否定されたらすぐ逃げて!
それまで彼が私の容姿を否定することはなかったように思います。ただ、読んでいただいたとおり、彼は影響を受けやすく、なりたいものがコロコロ変わる人間。誰かの立ち振る舞いを見て「かっこいい!」と思い、モラハラ男になってしまった可能性もありますし、きっと私が甘すぎたのも原因です。
そしてアパレル業界のことを調べ始め、モデルやコレクションなどを見るようになり、彼の中で私は「俗物」から「ダサい俗物」へと進化したのかもしれません。
ここで私が学んだのは、容姿を否定し始めたら終わりだということ。恋人の容姿を否定するのは、どこかに「変わってほしい」という願望があるからです。実際、彼も、容姿が理由で私をフるまでにはいたりませんでした。
大人になってからわかりましたが、他人を変えることなんてほぼ不可能。恋人に変わっていただくか、恋人を替えるしかないと思います。そして「他人を変えようとする」というのはモラハラ人間の特徴の代表格ではないでしょうか。人を物扱いすることは彼らの専売特許ですから。
恋愛中はいろんなものの解像度が悪くなってしまいますが、モラハラの疑いがある男と付き合ってしまったときのひとつの指標として、お役に立てれば幸いです。できれば、お役に立てないままでありますように。
<文/七尾紫 イラスト/織田繭>
【七尾紫】
元・恋愛体質のフリー編集者。ダメ男に好かれてしまう特異体質を持つ。DVと不倫以外は大体やられている
というのも、私は「元カレ全員ダメ男です」と胸を張って言えるほど男運がない。付き合うに至らなかった人も含めると数十人にのぼるダメ男体験の中から、今回はモラハラ男のエピソードをご紹介します。
◆「俗物だなぁ」が口癖の、夢追い男
これは私がまだ大学生で、同じ大学のひとつ年下の男の子と付き合っていたときの話です。出会ったときは犬のように人懐っこく、ちょっとアホで明るい、かわいい後輩でした。
ですが、彼は「将来の夢が変わった」と言い、大学を中退してしまいます。そこから本性があらわになったと言いますか、歯車が狂い始めたと言いますか……。普通に大学に通いながらバイトに励む私を見下すようになっていきました。
おそらく彼は自分が“夢追人”であることに誇りを持っていて、明確な夢を持たない私のことを“しょうもない人間”と認定したのだと思います。
それから、彼は私を「俗物」と呼ぶように。
「紫はどうしてそんなに俗っぽいの?夢とか見つけてさぁ、ちゃんとしなよ」
「恋愛ソングが好きとか……本当に俗物だね。そんなんじゃ嫌われるよ」などと言われる日々が続きました。
彼がどういう意味で「俗物」という言葉を使っていたのか謎ですが、たぶん『機動戦士ガンダム』を見たのだと思います。ちなみに彼の当時の将来の夢は「ハマーン・カーンになる」ではなく「漫画家」でした。(ガンダムに登場するカリスマ、ハマーン・カーンの口癖は「俗物!」でした。念のため)
◆待ち合わせ10秒後にデート中止。理由は“見た目”
そんな彼と付き合って半年を迎えようとしたころ。そのときの彼の将来の夢は「アパレル業界でてっぺんをとる」に変わっており、しかしバイトが続かないため、安くてシンプルな格好をするようになっていました。主にシャツにスキニーパンツのような格好です。ひと昔前のバンドマンっぽい服装ですね。反対に、私はストリートカジュアルが好きだったので、大きめのデニムやパーカーを好んで着ていました。
ある日、私のバイト終わりにデートの約束をしていたので、バイト先のアパレルショップの服を着たまま待ち合わせ場所に向かいました。カジュアルなワンピースにニット帽とスニーカー、みたいな格好だったと思います。
先に来ていた彼氏は走ってくる私の全身を、顔を歪めながら見回して、すぐに「今日はデートやめよう」と言いました。私が「お待たせ!」と言うより早かったです。「体調悪いの?」と聞くと…「なんでそんなカッコで来たの?」とひと言。
◆「一緒にいるところを見られたくない」とラブホ直行
彼がデートを中止したい理由は、私の格好が気に食わないからでした。加えて髪型も気に入らない。それどころか日本人らしい体型も、低い身長すら好きじゃないと言い出しました。足早にどこかに向かいながら、携帯電話の画面にパリコレモデルの写真を出し、私に見せて「どうしてこうなれないの?なれなくても近づく努力くらいしなよ」と言いました。
そのあとは、「一緒にいるところを誰かに見られたくない、恥ずかしい」と私をラブホテルに押し込み、やることやって解散。ホテル代は割り勘です。今思えばモラハラを超えてサイコパスっぽさすら感じますが、当時はまだどちらの言葉も知りませんでした。
◆容姿を否定されたらすぐ逃げて!
それまで彼が私の容姿を否定することはなかったように思います。ただ、読んでいただいたとおり、彼は影響を受けやすく、なりたいものがコロコロ変わる人間。誰かの立ち振る舞いを見て「かっこいい!」と思い、モラハラ男になってしまった可能性もありますし、きっと私が甘すぎたのも原因です。
そしてアパレル業界のことを調べ始め、モデルやコレクションなどを見るようになり、彼の中で私は「俗物」から「ダサい俗物」へと進化したのかもしれません。
ここで私が学んだのは、容姿を否定し始めたら終わりだということ。恋人の容姿を否定するのは、どこかに「変わってほしい」という願望があるからです。実際、彼も、容姿が理由で私をフるまでにはいたりませんでした。
大人になってからわかりましたが、他人を変えることなんてほぼ不可能。恋人に変わっていただくか、恋人を替えるしかないと思います。そして「他人を変えようとする」というのはモラハラ人間の特徴の代表格ではないでしょうか。人を物扱いすることは彼らの専売特許ですから。
恋愛中はいろんなものの解像度が悪くなってしまいますが、モラハラの疑いがある男と付き合ってしまったときのひとつの指標として、お役に立てれば幸いです。できれば、お役に立てないままでありますように。
<文/七尾紫 イラスト/織田繭>
【七尾紫】
元・恋愛体質のフリー編集者。ダメ男に好かれてしまう特異体質を持つ。DVと不倫以外は大体やられている