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「新垣結衣は私たち原作ファンの思う彼女そのもの」宇垣美里が人気マンガ実写化で泣き出しそうになった理由

女子SPA! 2024年6月18日 8時44分

 元TBSアナウンサーの宇垣美里さん。大のアニメ好きで知られていますが、映画愛が深い一面も。

 そんな宇垣さんが映画『違国日記』についての思いを綴ります。

●作品あらすじ:両親を交通事故で亡くした15歳の朝(早瀬憩)。葬式の席で、親戚たちの心ない言葉が朝を突き刺す。そんな時、槙生(新垣結衣)がまっすぐ言い放った。

「あなたを愛せるかどうかはわからない。でもわたしは決してあなたを踏みにじらない」

槙生は、誰も引き取ろうとしない朝を勢いで引き取ることに。こうしてほぼ初対面のふたりの、少しぎこちない同居生活がはじまった。人見知りで片付けが苦手な槙生の職業は少女小説家。人懐っこく素直な性格の朝にとって、槙生は間違いなく初めて見るタイプの大人だった。対照的なふたりの生活は、当然のことながら戸惑いの連続。それでも、少しずつ確かにふたりの距離は近付いていた。

だがある日、朝は槙生が隠しごとをしていることを知り、それまでの想いがあふれ出て衝突してしまう――。(以下、宇垣美里さんの寄稿です。)

◆正反対な2人の出会いはまるで違う国の住民同士の邂逅

 私の思う赤と他者の思う赤が本当に同じ色を指すかだなんて分からないように。たとえ同じ怪我(けが)をしたとて、私の痛みを他者は知りえないように。私の見る世界、感じるものは私だけのものだということ。それは、寂しいことだろうか? いいえ、きっと祝福。

 小説家の槙生(まきお)の折り合いが悪くずっと没交渉だった姉が夫と共に事故で急逝した。ひとりぼっちになった姪の朝(あさ)が葬式の場で親戚に盥回(たらいまわ)しにされかけているのを見かね、槙生は勢いで朝を引き取ることになる。

 誰かと暮らすことに苦手意識を持つ人見知りな槙生と、人懐っこく素直な朝。正反対な2人の出会いはまるで違う国の住民同士の邂逅(かいこう)。生活時間や掃除、自炊といった暮らしの些細なことまで、自分の“普通”が相手の“普通”でないことに日々驚きながら、少しずつ2人ならではの関係を築いていく。

◆人気漫画の実写化。原作ファンも納得の世界観

 人気漫画の実写化である本作。他者との暮らしの中で互いに少しずつ影響を受け、2人だけの関係が生まれていく様子を丁寧に追いかけていて、全てのシーンから染みだすしんみりとした優しさと共に、原作ファンも納得の世界観となっている。

 もちろん、あのセリフも、あのシーンも見たかった!とは思ってはしまうけれど、それは新垣結衣演じる槙生の不器用さや、早瀬憩演じる朝の子犬のようなかわいらしさが私たちファンの思う槙生と朝そのものだからこそ。

 特に冒頭、槙生が朝にかける真摯な言葉とその力強い眼差しに、思わず心が震え泣き出しそうになった。その瞬間から、この人が槙生ちゃんなんだ、と確信した。

◆分からなくたって、あなたは私の大切な人

「あなたの感情も、私の感情も、自分だけのものだから。分かち合うことはできない。」というセリフに代表されるように、この作品に通底するメッセージは、人は、他人は、どうしようもなくまるで違うということだ。

 まるで違う相手を気遣いながら、理解できなくてもそのままに見つめて尊重し、自分だけの孤独を抱えてそっと寄り添い生きていく。その営みを愛と言わずして何と呼ぼう。

 分からなくたって、あなたは私の大切な人。そんな関係にじんわりと心が癒された。

『違国日記』

監督・脚本・編集:瀬田なつき 原作:ヤマシタトモコ 音楽:高木正勝 出演:新垣結衣、早瀬憩、夏帆、瀬戸康史 配給:東京テアトル ショウゲート/139分 ©2024 ヤマシタトモコ・祥伝社/「違国日記」製作委員会 

<文/宇垣美里>

【宇垣美里】
’91年、兵庫県生まれ。同志社大学を卒業後、’14年にTBSに入社しアナウンサーとして活躍。’19年3月に退社した後はオスカープロモーションに所属し、テレビやCM出演のほか、執筆業も行うなど幅広く活躍している。

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