まひろの周りがにわかに騒がしくなる。求婚をしてきた宣孝、まひろを利用しようと近づく周明。
道長のことが心にあり続けるのは変わらないようだが、まひろはひとつ、人生の大きな決断をする。
◆「ありのままのお前を丸ごと引き受ける」言われてみたい
突然の宣孝(佐々木蔵之介)の求婚に戸惑うまひろ(吉高由里子)。そりゃあそうだ。幼いころから気がついたらそこにいた人なのだから。
しかしこの宣孝の求婚の言葉がいい。
「あの宋人と海を渡ってみたとて忘れえぬ人からは逃げられまい」とまずはまひろの心を見透かす。
「自分が思っている自分だけが自分ではないぞ」、とまひろの心をくすぐる。
少しムキになって「忘れ得ぬ人がいてもよろしいのですか」というまひろに「それもお前の一部だ」と返す。
「ありのままのお前を丸ごと引き受ける。それができるのはわしだけだ」
これは、宣孝にしか言えない言葉である。まひろと同世代の男性では言えない。「丸ごと引き受ける」って言ったって、私が他の男性のことを思っているとわかったら怒るんでしょう? と思ってしまうかもしれない。
そして、「都で待っている」と颯爽と立ち去る。
直秀(毎熊克哉)も、道長(柄本佑)も、周明(松下洸平)も「共に行こう」だったけれど、宣孝は「待っている」。手を引き、連れ出すのではなく、自分で選び取って自分の足で来い、というのがなんともまた心を揺さぶられてしまう。
◆周明の思いはいかに
動揺しているまひろの元には周明も訪れる。
「早くまひろと宋に行きたい」。
早く宋に行くために、朝廷が宋との交易を受け入れるよう、左大臣に手紙を書いてほしい、と。
ふたりで宋に行くためだ、と言い、まひろを抱き寄せ、口づけをしようとする周明だが、まひろはその唇を手で覆う。
そして、「あなたは私を利用するために嘘をついている」と。
周明はまひろを脅して文を書かせようとする。が、まひろは拒む。書かないなら、お前を殺して私も死ぬ、と言う周明にまひろは強い視線を向ける。母が目の前で死んだ。友も虫けらのようになぶり殺された。周明は海に捨てられ、どうにか生き抜いた。なら、簡単に死ぬなどと言わないで、と。
周明は「宋の国はお前が夢に描いているような国ではない」と言う。しかし、それ以上、まひろに文を書くことを強制しなかった。
どうやら、心を奪われていたのは周明のようだ。周明は朱仁聡(浩歌)に、まひろに対しては松原客館を出ていったことにしてほしい、と言っていたが、それは実は嘘だった。
まひろの心の中に入ることができなかったと周明は詫びるが、朱はわずかに微笑む。
「お前の心の中からも、消え去るとよいな」
大人たちは若者の心の中をお見通しなのかもしれない。
◆定子を取り返した一条天皇
そう考えると、内裏にいるのは若者ばかり、か。
体調を崩した詮子(吉田羊)を見舞った一条天皇(塩野瑛久)。定子(高畑充希)との娘が生まれたことを晴れやかな表情で報告する。そして、姫を内親王にすると宣言。その場にいた道長、行成は驚きの表情を見せる。さらに、定子を内裏に呼び戻す、とも。娘の顔も見ず、中宮にも会わずに、このまま生き続けることはできない。ある意味、さまざまなものを賭けた「ワガママ」だったのかもしれない。
トップがそれでは示しがつかないのでは……? と思わなくもない。
でも、一条天皇は大人の欲で幼いころにその地位に就き、大人の勝手で中宮を決められた。いや、当時の結婚を考えると当たり前なのかもしれないけれども。いつの間に、心の拠り所となっていた定子が、また自分の思いとは関係のないところで引き離されることになった。
大人になった一条天皇が自分の力で定子をそばに取り戻したい、と考えても不思議ではない。
ただ、周りからの反発を考えると定子をあっさりと内裏に戻すわけにはいかない。道長と行成(渡辺大知)は知恵を出し合い、定子は職御曹司に入ることに。定子が職御曹司に入ると、一条天皇は政務もおざなりで通うようになる。離れていた時間を埋めようとするかのようだが……。
道長の頭が痛くなりそうだ。道長なんて、一番会いたい女性は越前にいるし、その上、自分が知らないうちに結婚が決まりそうだというのに。
◆まひろの決意
まひろは宣孝の妻となることを決意。越前巡察の旅から帰ってきた父・為時(岸谷五朗)に報告をすると、為時は仰天。その拍子に腰を痛めてしまう。それほど驚きの事実だったということだろう。当然、為時は結婚に少しばかり難色を示す。宣孝はいまだに女にマメ、というのが気になるようだ。
そんな為時にまひろは語る。
「思えば道長様とは向かい合いすぎて求め合いすぎて苦しゅうございました」
「愛おしすぎると、嫉妬もしてしまいます」
宣孝ならそれもなく、楽に暮らせる。
「誰かの妻になることを、大真面目に考えないほうが良いのではとこのごろ思うのです」
そんな娘の言葉を聞く為時の気持ちはいかに。
たしかに、以前のまひろはとても真面目に考えていた。道長に迫られたときも、だ。それはそれでとても素敵なことだけれど、ここで「ありのままのお前を受け入れる」という宣孝に自分をゆだねるのは悪いことでもなさそうだ。
<文/ふくだりょうこ>
【ふくだりょうこ】
大阪府出身。大学卒業後、ゲームシナリオの執筆を中心にフリーのライターとして活動。たれ耳のうさぎと暮らしている。好きなものはお酒と読書とライブ
道長のことが心にあり続けるのは変わらないようだが、まひろはひとつ、人生の大きな決断をする。
◆「ありのままのお前を丸ごと引き受ける」言われてみたい
突然の宣孝(佐々木蔵之介)の求婚に戸惑うまひろ(吉高由里子)。そりゃあそうだ。幼いころから気がついたらそこにいた人なのだから。
しかしこの宣孝の求婚の言葉がいい。
「あの宋人と海を渡ってみたとて忘れえぬ人からは逃げられまい」とまずはまひろの心を見透かす。
「自分が思っている自分だけが自分ではないぞ」、とまひろの心をくすぐる。
少しムキになって「忘れ得ぬ人がいてもよろしいのですか」というまひろに「それもお前の一部だ」と返す。
「ありのままのお前を丸ごと引き受ける。それができるのはわしだけだ」
これは、宣孝にしか言えない言葉である。まひろと同世代の男性では言えない。「丸ごと引き受ける」って言ったって、私が他の男性のことを思っているとわかったら怒るんでしょう? と思ってしまうかもしれない。
そして、「都で待っている」と颯爽と立ち去る。
直秀(毎熊克哉)も、道長(柄本佑)も、周明(松下洸平)も「共に行こう」だったけれど、宣孝は「待っている」。手を引き、連れ出すのではなく、自分で選び取って自分の足で来い、というのがなんともまた心を揺さぶられてしまう。
◆周明の思いはいかに
動揺しているまひろの元には周明も訪れる。
「早くまひろと宋に行きたい」。
早く宋に行くために、朝廷が宋との交易を受け入れるよう、左大臣に手紙を書いてほしい、と。
ふたりで宋に行くためだ、と言い、まひろを抱き寄せ、口づけをしようとする周明だが、まひろはその唇を手で覆う。
そして、「あなたは私を利用するために嘘をついている」と。
周明はまひろを脅して文を書かせようとする。が、まひろは拒む。書かないなら、お前を殺して私も死ぬ、と言う周明にまひろは強い視線を向ける。母が目の前で死んだ。友も虫けらのようになぶり殺された。周明は海に捨てられ、どうにか生き抜いた。なら、簡単に死ぬなどと言わないで、と。
周明は「宋の国はお前が夢に描いているような国ではない」と言う。しかし、それ以上、まひろに文を書くことを強制しなかった。
どうやら、心を奪われていたのは周明のようだ。周明は朱仁聡(浩歌)に、まひろに対しては松原客館を出ていったことにしてほしい、と言っていたが、それは実は嘘だった。
まひろの心の中に入ることができなかったと周明は詫びるが、朱はわずかに微笑む。
「お前の心の中からも、消え去るとよいな」
大人たちは若者の心の中をお見通しなのかもしれない。
◆定子を取り返した一条天皇
そう考えると、内裏にいるのは若者ばかり、か。
体調を崩した詮子(吉田羊)を見舞った一条天皇(塩野瑛久)。定子(高畑充希)との娘が生まれたことを晴れやかな表情で報告する。そして、姫を内親王にすると宣言。その場にいた道長、行成は驚きの表情を見せる。さらに、定子を内裏に呼び戻す、とも。娘の顔も見ず、中宮にも会わずに、このまま生き続けることはできない。ある意味、さまざまなものを賭けた「ワガママ」だったのかもしれない。
トップがそれでは示しがつかないのでは……? と思わなくもない。
でも、一条天皇は大人の欲で幼いころにその地位に就き、大人の勝手で中宮を決められた。いや、当時の結婚を考えると当たり前なのかもしれないけれども。いつの間に、心の拠り所となっていた定子が、また自分の思いとは関係のないところで引き離されることになった。
大人になった一条天皇が自分の力で定子をそばに取り戻したい、と考えても不思議ではない。
ただ、周りからの反発を考えると定子をあっさりと内裏に戻すわけにはいかない。道長と行成(渡辺大知)は知恵を出し合い、定子は職御曹司に入ることに。定子が職御曹司に入ると、一条天皇は政務もおざなりで通うようになる。離れていた時間を埋めようとするかのようだが……。
道長の頭が痛くなりそうだ。道長なんて、一番会いたい女性は越前にいるし、その上、自分が知らないうちに結婚が決まりそうだというのに。
◆まひろの決意
まひろは宣孝の妻となることを決意。越前巡察の旅から帰ってきた父・為時(岸谷五朗)に報告をすると、為時は仰天。その拍子に腰を痛めてしまう。それほど驚きの事実だったということだろう。当然、為時は結婚に少しばかり難色を示す。宣孝はいまだに女にマメ、というのが気になるようだ。
そんな為時にまひろは語る。
「思えば道長様とは向かい合いすぎて求め合いすぎて苦しゅうございました」
「愛おしすぎると、嫉妬もしてしまいます」
宣孝ならそれもなく、楽に暮らせる。
「誰かの妻になることを、大真面目に考えないほうが良いのではとこのごろ思うのです」
そんな娘の言葉を聞く為時の気持ちはいかに。
たしかに、以前のまひろはとても真面目に考えていた。道長に迫られたときも、だ。それはそれでとても素敵なことだけれど、ここで「ありのままのお前を受け入れる」という宣孝に自分をゆだねるのは悪いことでもなさそうだ。
<文/ふくだりょうこ>
【ふくだりょうこ】
大阪府出身。大学卒業後、ゲームシナリオの執筆を中心にフリーのライターとして活動。たれ耳のうさぎと暮らしている。好きなものはお酒と読書とライブ