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注目の『ブラックペアン2』『海のはじまり』は何位?データから見る夏ドラマ「期待度」ランキング

女子SPA! 2024年7月3日 8時46分

6月28日に『笑うマトリョーシカ』(TBS系)が、7月1日に『海のはじまり』(フジテレビ系)がスタートし、いよいよ夏ドラマ合戦が幕を開けた。例年より早く放送が開始されているのは、7月26日から8月11日までパリオリンピックが開催される関係だろう。

さて、そんな夏ドラマはいったいどの作品が注目され、期待されているのか。2つのデータから推し量ってみたい。ひとつは無料見逃し配信サービス「TVer」のお気に入り登録者数。もうひとつは映画やドラマなどの国内最大級のレビューサービス「Filmarks」のClip!数(ユーザーが観たいドラマとして登録した数)だ。

◆Tverと「Filmarks」から見える夏ドラマ期待度

TVerは今やドラマ視聴の手段として定着しているサービスであり、放送開始前からお気に入り登録をしているということは、それだけその作品への期待度が高いと考えられる。

しかしTVerには、シリーズものやリメイク作品は(同一局であれば)同一IDで管理されるという注意すべき仕様がある。たとえば『南くんが恋人!?』(テレビ朝日系)は、過去にも何度か映像化された『南くんの恋人』のリメイクであり、テレ朝での過去2度の映像化――高橋由美子&武田真治の1994年版と深田恭子&二宮和也の2004年版もTVer上では同じ番組ページにまとめられる。

『ブラックペアン シーズン2』(TBS系)であれば、2018年のシーズン1も同じ『ブラックペアン』ページでまとめられるといった具合だ。そのため、シーズン2は新作ながらにシーズン1のお気に入り登録者数を引き継いだ形となり、ゼロからスタートする他のオリジナル作品よりも放送開始前は登録者数で差を付けやすくなってしまう。

単純なTVerお気に入り登録者数では、シリーズものやリメイク作品が優位に立ちやすいということで、映画やドラマ好きが多く集まるFilmarksにおけるクリップ数も参照し、独自にランキング化した。TVerお気に入り登録者数とFilmarksのクリップ数でもっとも高かった数字をそれぞれ「100ポイント」とし、他の作品はその相対値でポイントを決定。総合したポイント(200ポイント満点)で順位を決めている。

たとえばお気に入り登録者数でもっとも多かったのが50万人としたら、50万人=100ポイントとし、お気に入り登録者数が25万人であれば50ポイントと計算する。なお、TVerお気に入り登録者数とFilmarksのクリップ数は『笑うマトリョーシカ』放送開始前の6月28日0時時点のものを採用した。

◆夏ドラマ「期待度」最下位は中島健人主演の『しょせん他人事ですから』

テレビ東京のドラマ8(金曜よる8時)はGP(ゴールデン・プライム)帯ながら他と比べてどうしても存在感が薄く、それゆえか、中島健人主演の『しょせん他人事ですから』(7月19日スタート、テレビ東京系)は「期待度」最下位という結果に。お気に入り登録者数は今期の民放GP帯連ドラ16作品のうち最下位(5.2万人)、クリップ数は14位(337Clip!)だった。同作はマンガの実写化だが、クセのある弁護士が、SNSでの誹謗中傷や芸能人の炎上、デジタルタトゥーといった現代的なネットトラブルの相談に乗っていくというリアルな内容がウリなだけに、リーガルドラマの新風ともなりえそうだが、はたして。

◆日テレは全体的に厳しい結果に

今期(も)厳しいのは、日テレドラマだ。成田凌主演の『降り積もれ孤独な死よ』(7月7日スタート)こそ、お気に入り登録者数は12位(13.0万)ながら、クリップ数は5位(790Clip!)と好評で、期待度では9位となったが、小芝風花主演の『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』(7月13日スタート)は期待度11位、福原遥主演の『マル秘の密子さん』は期待度14位に。

『マル秘の密子さん』は、どんな手を使っても依頼者を必ず成功させる謎多きトータルコーディネーターの密子(福原遥)がシングルマザーの夏(松雪泰子)を華麗なる一族が率いる大企業の社長に据えようと目論む……というあらすじだが、“トータルコーディネーター”という謎の用語を筆頭に、いまひとつ世界観が掴めないだけに、様子見の視聴者も多そうだ。

『GO HOME』は実在する警視庁の身元不明人相談室が舞台となっており、小芝と大島優子の2人の捜査官がバディを組む「ミステリー×ヒューマンドラマ」。残念ながら現時点での「期待度」は低いが、NHK朝ドラ『おちょやん』を手がけ、昨年の話題作だったTBS日曜劇場『VIVANT』もメインで書いた八津弘幸が脚本担当なのは注目すべき点だろう。

『降り積もれ孤独な死よ』は2022年に山田涼介主演で実写連ドラ化されたことも記憶に新しい『親愛なる僕へ殺意をこめて』作者コンビによるサスペンスマンガの実写化だが、原作がまだ完結していないこと、『しんぼく』同様に(日曜夜10時台には不向きな)猟奇的な表現が多いことなど懸念点も多い。どのように映像化し、物語をまとめるのか気になるところだ。

◆『Believe-君にかける橋-』『Destiny』で好調だったテレビ朝日の今期期待度は?

前期は『Believe-君にかける橋-』『Destiny』で好調だったテレビ朝日だが、こちらも期待度はいまひとつ。生田絵梨花主演のオリジナル学園モノ『素晴らしき哉、先生!』(8月18日スタート)は15位、セレブ家族の受験戦争を描いた韓国ドラマ『SKYキャッスル~上流階級の妻たち~』のリメイクとなる『スカイキャッスル』(7月25日スタート)は期待度13位、沢口靖子主演の長寿シリーズ新作『科捜研の女 season24』(7月3日スタート)は期待度10位に。内田春菊マンガの再(々…)実写化となる『南くんが恋人!?』(7月16日スタート)は期待度4位と気を吐いた格好だが、お気に入り登録者数が2位(36.9万)であるのに対し、クリップ数は11位(428Clip!)。

新作放送開始前に94年版と04年版が配信されたことでお気に入り登録者数が伸びたと考えられ、このクリップ数からすると、リメイク版の期待度は実際には低そうだ。『科捜研の女 season24』も、クリップ数は15位の『しょせん他人事ですから』の4分の1程度となるわずか86Clip!(最下位)で、期待度が10位まで押し上げられたのは、シリーズものとして長年積み重ねてきたお気に入り登録者数(27.3万人/4位)のおかげだ。

◆『silent』チーム再集結、クドカン新作などオリジナルが揃う夏のフジ

フジテレビは今期、GP帯はすべてオリジナル作品なのが特徴。「頭は切れるのに人間関係に難アリな警察署勤務の女ギークたちが、週末の井戸端会議で事件解決をスーパーアシストしてしまう」という松岡茉優主演の『ギークス~警察署の変人たち~』(7月4日スタート)こそ12位だが、杉野遥亮主演の『マウンテンドクター』(7月8日スタート)は7位、『ビリオン×スクール』(7月6日スタート、フジテレビ系)は6位、『新宿野戦病院』(7月3日スタート、フジテレビ系)は3位、月9『海のはじまり』(7月1日スタート、フジテレビ系)は2位と、期待度の高い作品が揃っている。

『マウンテンドクター』は、事なかれ主義の整形外科医・歩(杉野遥亮)が山岳診療科との兼務を命じられ、日本における山岳医療の厳しい現実や、先輩の江森(大森南朋)とぶつかりながら成長していく「心温まるエンターテインメント山岳医療ドラマ」。長野県松本市を舞台にしており、公式サイトで謳われるような「大自然が舞台だからこそ生まれるリアリティーとスケール感」のある映像を期待したい。

『ビリスク』は億万長者(ビリオネア)の加賀美(山田涼介)が身分を隠し、とある目的のために高校の教師となるというオリジナルの学園コメディ。「やる気ゼロ、才能ゼロ、将来性ゼロ」の生徒たちを破天荒な教師が導くという平成的な設定がどうなるかだが、『おっさんずラブ』シリーズ(テレビ朝日系)や『探偵が早すぎる』シリーズ(日本テレビ系)などコメディが得意な瑠東東一郎監督の演出ということで、うまくハマりそうか。学園モノのお決まりとして、松田元太(Travis Japan)ら生徒役の魅力も作品の牽引力になることが期待されるところ。

『新宿野戦病院』は、テレ朝の『科捜研』や『南くん』と真逆のパターンで、お気に入り登録者数は8位(17.8万人)といまひとつだが、クリップ数は2位(2003Clip!)と大きな注目を集めた。宮藤官九郎のオリジナル脚本に小池栄子+仲野太賀のW主演というだけでドラマファンはやはり胸が躍るところ。とくにクドカンは『不適切にもほどがある!』(TBS系)の大好評からまだ間もないことも大きいだろう。脇を固めるキャストもよく、今期もっとも期待している作品に挙げる人も少なくないのではないだろうか。

目黒蓮主演の『海のはじまり』は、2022年に大反響を呼んだ木曜劇場『silent』の脚本(生方美久)、演出(風間太樹、髙野舞)、俳優(目黒)、プロデューサー(村瀬健)らが再集結したということで話題。昨年の『いちばんすきな花』で欠けていた風間監督の再合流は期待を高めるところで、お気に入り登録者数は3位(31.2万)、クリップ数は堂々の1位(2180Clip!)だった。

お気に入り登録者数の1位と2位はシリーズものとリメイクものであり、ゼロからお気に入り登録者数を積み上げたオリジナル作品としては『海のはじまり』が1位になることも付け加えておきたい。学生時代の元恋人(古川琴音)が自分の知らぬところで子どもを産んでいた……というデリケートな設定が気になるが、「期待」に応える内容になっているかどうか。注目度という意味では今期もっとも高いかもしれない。

◆夏ドラマ「期待度」1位は日曜劇場

TBSも負けてはいない。いち早く始まった『笑うマトリョーシカ』は期待度8位だが、『西園寺さんは家事をしない』(7月9日スタート)は期待度5位。そして日曜劇場『ブラックペアン シーズン2』(7月7日スタート)は期待度1位となっている。

『笑うマトリョーシカ』は、前期に高橋海人主演で映像化された『95』(テレビ東京系)などメディアミックスも多い早見和真の同名小説の実写化。新聞記者の道上(水川あさみ)が人気政治家・清家(櫻井翔)とその政務秘書官・鈴木(玉山鉄二)の正体に迫ろうとするミステリーで、金曜ドラマでは珍しいシリアスな政治サスペンスだ。

『西園寺さんは家事をしない』(7月9日スタート、TBS系)は、仕事はバリバリやるが 家事は一切しない38歳の西園寺さん(松本若菜)が、4歳の娘をシングルファーザーとして育てる年下エンジニア・楠見(松村北斗)とひょんなことから「偽家族」として一緒に暮らすことになるというラブコメディ。お気に入り登録者数5位(19.6万)、クリップ数4位(996Clip!)とどちらも高水準だが、キャスト人気はもちろんのこと、TBS火曜ドラマらしい王道ラブコメになるとみられるのに加え、原作マンガが、綾瀬はるか主演の実写版も大ヒットした『ホタルノヒカリ』のひうらさとる作品であることも期待を高めているのではないだろうか。

◆日曜劇場『ブラックペアン シーズン2』は2018年の続編

『『ブラックペアン シーズン2』は2018年の日曜劇場作品の続編。続編ではあるのだが、主演の二宮和也が演じるのはシーズン1の渡海ではなく、渡海に瓜二つの天城雪彦なる人物……という設定だ。渡会が東城大学医学部付属病院を去って6年後が舞台となっており、今度は天城が東城大に波紋を巻き起こす。シーズン1の再配信を行ったことも手伝い、お気に入り登録者数は放送前の時点で51.9万人と50万超えをしており、他を圧倒して1位。一方、クリップ数は3位(1524Clip!)に留まった。

『海のはじまり』との差は10ポイント未満と僅差で、お気に入り登録者数がここまで強くなければ逆転されていただろう。ヒット作の続編だけに期待のハードルもただでさえ高くなっているが、前作の演出だった福澤克雄や田中健太、メインで脚本を担当していた丑尾健太郎が今回は外れており、制作陣の刷新がどう影響するか。

◆夏ドラマはフジとTBSの戦いに?

TVerお気に入り登録者数とFilmarksクリップ数から見た「期待度」は、『ブラックペアン2』(1位)、『西園寺さんは家事をしない』(5位)、『笑うマトリョーシカ』(8位)のTBSと、『海のはじまり』(2位)、『新宿野戦病院』(3位)、『ビリオン×スクール』(6位)、『マウンテンドクター』(7位)のフジテレビに軍配が上がったといえそう。もっとも、これはあくまで放送開始前の期待度にすぎない。いい意味で「期待」を裏切ってくれる作品はどれぐらい生まれるだろうか。夏ドラマはこれからだ。

◆2024年GP帯夏ドラマ「期待度」ランキング

1位『ブラックペアン シーズン2』(TBS系)

169.9ポイント(TVerお気に入り登録者数100ポイント/Filmarksクリップ数69.9ポイント)

2位『海のはじまり』(フジテレビ系)

160.1ポイント(TVerお気に入り登録者数60.1ポイント/Filmarksクリップ数100ポイント)

3位『新宿野戦病院』(フジテレビ系)

126.2ポイント(TVerお気に入り登録者数34.3ポイント/Filmarksクリップ数91.9ポイント)

4位『南くんが恋人!?』(テレビ朝日系)

90.7ポイント(TVerお気に入り登録者数71.1ポイント/Filmarksクリップ数19.6ポイント)

5位『西園寺さんは家事をしない』(TBS系)

83.3ポイント(TVerお気に入り登録者数37.8ポイント/Filmarksクリップ数45.5ポイント)

6位『ビリオン×スクール』(フジテレビ系)

66.6ポイント(TVerお気に入り登録者数34.8ポイント/Filmarksクリップ数31.8ポイント)

7位『マウンテンドクター』(フジテレビ系)

63.8ポイント(TVerお気に入り登録者数35.8ポイント/Filmarksクリップ数28ポイント)

8位『笑うマトリョーシカ』(TBS系)

62.8ポイント(TVerお気に入り登録者数27.9ポイント/Filmarksクリップ数34.9ポイント)

9位『降り積もれ孤独な死よ』(日本テレビ系)

61.2ポイント(TVerお気に入り登録者数25ポイント/Filmarksクリップ数36.2ポイント)

10位『科捜研の女 season24』(テレビ朝日系)

56.5ポイント(TVerお気に入り登録者数52.6ポイント/Filmarksクリップ数3.9ポイント)

11位『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』(日本テレビ系)

54.1ポイント(TVerお気に入り登録者数28.5ポイント/Filmarksクリップ数25.6ポイント)

12位『ギークス~警察署の変人たち~』(フジテレビ系)

53.3ポイント(TVerお気に入り登録者数22.7ポイント/Filmarksクリップ数30.6ポイント)

13位『スカイキャッスル』(テレビ朝日系)

46.9ポイント(TVerお気に入り登録者数28.5ポイント/Filmarksクリップ数18.4ポイント)

14位『マル秘の密子さん』(日本テレビ系)

36.6ポイント(TVerお気に入り登録者数17.5ポイント/Filmarksクリップ数19.1ポイント)

15位『素晴らしき哉、先生!』(テレビ朝日系)

26.6ポイント(TVerお気に入り登録者数12ポイント/Filmarksクリップ数14.6ポイント)

16位『しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~』(テレビ東京系)

25.4ポイント(TVerお気に入り登録者数10ポイント/Filmarksクリップ数14.5ポイント)

※算出方法については本文に記載の通り。数値は6月28日0時時点

【新城優征】
ドラマウォッチャー。俳優インタビュー、Netflix配信の海外ドラマの取材経験などもあり。

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