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女子小学生向け書籍『かわいいのルール』が異例の大ヒット…ロングセラーの裏側には“意外な読者層”の存在

女子SPA! 2024年7月5日 8時46分

池田書店より発売されている『自分をもっと好きになる【ハピかわ】かわいいのルール』がX(旧Twitter)上で大きな話題を呼んでいます。

◆小学生女子向けのハズが大人にバズった「生活を見直すきっかけ」

この本はもともとは小学校高学年女子向けの書籍。「内面からすてきになれる、可愛くなれる本」として、ファッションや身だしなみなど見た目の話だけでなく、自宅や学校でのマナーやコミュニケーションなどを始めとした、実用的なアドバイスが満載。さらに盛れる写真の撮り方やSNSの活用法など、令和に則した情報もしっかり網羅されています。

しかし、今回のバズりを担ったのは、女子小学生本人たちでも女児のいるご家庭でもなく、ビジネスパーソンを中心とした一般の大人層!

「マネジメントのための本」「本質的な話に誘導する構成がすごい」「男性も読むべき」といったXのポストを皮切りに、本来のターゲットから外れているであろう読者たちが本書を絶賛。

「大人の私でも生活を見直すきっかけとなりました」「人として世を渡り歩くために必要なソフトスキルの基本がしっかり書かれている」などの声も上がっています。

◆「かわいい」だけを軸に生き方の指針を示すスゴさに驚愕

子ナシのアラフォー社会人である筆者も、がぜん興味がわいてしまったので、実際に読んでみることにしました。

本書は率直に言って、凄い。何しろこの一冊で、見た目・内面・コミュニケーション・SNS・性etc……とんでもない幅を網羅しているんですよ。ハッキリ言って、取りこぼしがない。「かわいい」という言葉だけを軸に人間の生き方の指針を示せるなんて、驚愕するわ面白いやら。なんなら、感動すら覚えました。

その一方、一瞬でかわいくなれる魔法なんてないんだという現実に、改めて頭がクラクラしました。

“かわいい”を構築する要素は一つじゃない。ルックスではなく内面を磨く努力、さらに社会のルールやマナー、人間関係も含めて“かわいい”は成り立つものなのだ、と本書は教えてくれます。

今振り返ると、私が子ども時代に目を通していたこの手の本って「〇〇すれば絶対にかわいくなれる!」みたいなことしか書いてなかったように思います。ある種、優しい世界であり、裏を返せば子供だましの言葉を囁かれていただけだったような気も。

そんな甘言をまるっと信じて、努力もせずに“かわいい”を手にしようとした人間の成れの果てが今の私なわけですよ、ええ。

本書が教える現実、それは決して厳しいものではなく、むしろ当たり前のこと。ステキな人と思ってもらうにはどうしたらいいか、子どもにもわかりやすく、大人も共感できる書き方で伝えてくれているんです。

だからこそ、本来のターゲット層ではない大人たちにもしっかり響いたのではないでしょうか。

本書が提示する「かわいいのルール」を、子ども時代から知っているか否かで、大人になった時の生き方はだいぶ変わるじゃないかと強く感じました。本書を子どもの時から読める人が本当にうらやましいですね。

◆12万部のヒット。担当者「はっきり言って、想定外です」

ではいったいなぜ、こんなにも大人に刺さっているのか?編集担当の池田書店の老沼友美さんと広報担当の高木智華子さんに話を聞きました。

――本書は4月下旬と5月上旬にSNS上でバズっていましたね。今回の反響についての率直な感想は?

高木さん「実はこの本は2019年に発売されたもので、初版は1万冊。大ヒットとはいかないまでも安定して売れていた商品だったんですよ。

でも2021年に小学校高学年女子のお母さんたちを中心に『役に立っている』と注文が急増し、7万部近く売れてキラキラ系と呼ばれるこのジャンルでは異例のヒット作になりました。ちなみに現在も順調に売れており、毎年重版がかかって12万部まで伸びています」

――今回よりも以前に、一度バズったことがあったのですね。

高木さん「はい。でもその時は狙っていたターゲット層に届いたという要因がハッキリしていました。今回のバズりについては……はっきり言って、想定外です」

老沼さん「我々も『どういうことなんだ?』というのが正直な感想なんですよ(笑)。本当に特殊な例だと思います」

◆見た目改善やダイエットをすすめる内容に「今の時代に合っていないのでは」

――本書をつくろうと思った経緯について教えてもらえますか?

老沼さん「2019年当時は、児童実用ジャンルが飽和状態だったんです。参入していくにあたり、どう差別化するかというところから企画がスタートしました。

当時のキラキラ系は『見た目を可愛くしよう』『ダイエットをしよう』など、周りからどう見られているかを基軸にした内容が多かったのですが、これは今の時代に合っていないのではないかという意見が社内でも出てきたのです」

――ルッキズム、多様性などの言葉が一般化してきた時期ですね。

老沼さん「今の時代に必要なのは、内面を磨いて、内側から変えていくこと。それが本当の“かわいい”じゃないの?という結論になりました。

今となっては当たり前のことなのですが、以前はこういう発想がなかったんですよね」

◆20代男女読者が増加。コロナ禍が関係か

――今回のバズりで、特に本書が響いていると感じてたのはどの層ですか?

高木さん「バズる前の売上の数字を見ても、まったく層として上がってこなかった20~29歳男女が、ここにきて増加しているんですよ。

これはちょうど、新入社員や第二新卒あたりの年代なんです。これまでの購買層にいた30~40代は恐らく子持ちの方々なので、今回は独身勢に刺さったのではないかと思います」

――もともと想定していた読者からは、かなり縁遠い層ですよね?

高木さん「ただ、その層はコロナ禍で高校や大学に通えないまま社会人になった世代でもあります。コミュニケーションや社会人としての常識を、学生時代に身に着けづらかっただけに、本書が参考になったのではないかと思います」

老沼さん「加えて電子書籍でも発売されているのが良かったのかもしれません。児童書ジャンルの電子書籍なんてなかなか売れるものではないので、今回のバズりでどれだけ普段とは違う読者さんがついて頂けたのかが分かりますよね」

――ありがとうございました!

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JS(女子小学生)やその親世代のみならず、独身のビジネスパーソンたちにもぶっ刺さりまくりの「自分をもっと好きになる【ハピかわ】かわいいのルール」。

今後もファッションから経済についてまで、キラキラかわいく学べるの本を幅広いジャンルでつくっていきたいとのこと。楽しみですね。

<文/もちづき千代子>

【もちづき千代子】
フリーライター。日大芸術学部放送学科卒業後、映像エディター・メーカー広報・WEBサイト編集長を経て、2015年よりフリーライターとして活動を開始。インコと白子と酎ハイをこよなく愛している。Twitter:@kyan__tama

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