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『虎に翼』“好きなシーン”ベスト5。はるの「お黙んなさい!」は2位。泣いて笑った1位は

女子SPA! 2024年7月5日 8時45分

NHK連続テレビ小説『虎に翼』が4月からスタートして早3カ月。いよいよ折り返し地点です。女性で初めて法曹界で道を切り拓いていく寅子(伊藤沙莉)の物語はあまりにも密度が濃く、まだ半分とは思えないほどの大反響を呼んでいます。

前半の3カ月だけでも本当に数多の印象的なシーンが描かれてきました。なかでも筆者が特に好きなエピソードを勝手にランキングします。

※以下『虎に翼』6月28日放送分までのネタバレを含みます。

◆5位:花岡が見せてくれた“男性の生きづらさ”(第19話)

女性への不平等感や差別にスポットが当たることの多い本作ですが、一方的に男性を悪者にしない部分も秀逸。男には男の生きづらさがあることも描いています。その際たる例が、花岡悟(岩田剛典)ではないでしょうか。

学友とのハイキングで、梅子(平岩紙)の家庭問題をきっかけに花岡と寅子は言い争いに。インパクト大のワイヤアクションで空中落下し、大けがを負ってしまいました。入院した花岡は「寅子を訴える」と息巻きますが、轟(戸塚純貴)に「愚か者!」とビンタされます。

その後花岡は、梅子に謝罪。仲間に舐められたくなくてわざと女性をぞんざいに扱ったり、帝大生に引け目を感じたり。女子部の面々を尊敬しているのに妬みや脅威を抱いていたこと、どの自分も“本当の自分”ではない葛藤を吐露しました。

「“本当の自分”があるなら大切にして」と梅子に励まされた花岡は、素直な涙を流します。そして花岡は、最後の最後まで“本当の自分”らしくあることを努力し続けていたのだと思います。

◆4位:#俺たちの轟 の想いに涙(第51話)

そんな花岡と共に過ごし、ときに叱咤激励してきた轟にも葛藤がありました。轟は戸塚の熱演もあり「#俺たちの轟」というハッシュタグが生まれるほど愛されているキャラクターです。

花岡が餓死という非業の死を遂げたことを知った轟は、路上でやけ酒を煽っていたところで、よね(土居志央梨)と再会。よねが轟へ、「(花岡に)惚れていたんだろう」と声をかけたときは驚きました。轟は「俺にもよく分からない」と応えます。そして花岡が自分にとって、どれだけかけがえのない存在であったことを語り、轟の知る「真面目で優しくて、不器用が過ぎる」花岡らしい死を、大粒の涙で悼みました。

彼らの関係に名前をつけなくとも、男とか女とか関係なく、共に生きる同志としての尊さを感じたエピソードです。また、よねと轟が互いに歩み寄ったシーンでもあり、その後よねと轟は一緒に法律事務所を営むことに。このシーンがあったからこそ、ふたりが共に歩んでゆく姿をみると今も胸が熱くなります。

◆3位:“昭和らしからぬ”父・直言の懺悔(第43話)

朝ドラにおいて、ヒロインの父母は大きな存在。中でも『虎に翼』における、寅子の父・直言(岡部たかし)と母・はる(石田ゆり子)の描き方は斬新です。どちらも昭和の時代における“よき父”と“よき母”を装っているものの、それぞれの本質は、ステレオタイプの父・母とは違う唯一無二の存在。それぞれの死に際はヒロインが親から受け取ったものを見事に表現していました。

栄養失調と肺炎で衰弱した直言は病床で、ひたすらにカミングアウトを始めます。寅子には優三(仲野太賀)ではなく花岡と結婚してほしかったこと、はるが恐くて残業とウソをついて飲みに行ったこと、息子・直明(三山凌輝)の出来が良すぎて自分の子なのか疑ったこと、花江(森田望智)がだんだん強くなるのが嫌だったことなどなど。止まらぬ懺悔は、周囲をポカンとさせました。

昭和的な男らしさも夫らしさも父らしさもない直言。しかし寅子はそんな直言に言います。「誰の前でも、うちの寅はすごい!って。どんな私になっても、私を可愛い可愛いっていっぱい言ってくれたのはお父さんだけ」と。寅子を“宝物”と全身全霊で愛し、寅子の活躍を心から喜び、応援してくれる“昭和らしからぬ父”だったからこそ、寅子が寅子らしくいられたのでしょう。

◆2位:母娘の在り方が尊いと感じた、はるの一喝(第5話)

一方の母・はるは、寅子の最大の理解者であり、彼女を鼓舞し続けてきた存在でした。第1週の最後は、今も忘れられない名シーン。法律を学ぼうとする寅子に反対し続けてきたはるが、甘味処・竹もとにて桂場等一郎(松山ケンイチ)を「お黙んなさい! あなたにうちの娘の何が分かるっていうんですか」と一喝!「女の可能性の芽を摘んできたのは男たちでしょう」「無責任に娘の口を塞ごうとしないでちょうだい」と続け、桂場を圧倒します。

そして改めて寅子に「地獄をみる覚悟はあるの?」と問いただし、六法全書を買いました。このシーンには、寅子ははるのことを心から“優秀”な人と尊敬し、はるは寅子が“優秀”であることを誇りにしている。互いを認め合う母娘の尊い姿がありました。

そこから寅子は地獄をみる覚悟をもって女子部に進学、法曹界で弁護士として努めを果たそうとしますが、妊娠を機に弁護士を辞めることに。「歩いても歩いても地獄でしかなくて。私なりに頑張りました。けれども降参です」と語った寅子に、悔しさと悲しさでいっぱいの表情で「そう」と受け止めたはるの姿も大いに涙を誘いました。

また第1週から変わらずに互いを認め合う母娘だったからこそ、はるが危篤の際に「死んじゃやだ! ずっとそばにいて!」と、赤子のように駄々をこねる寅子の姿は少し意外でした。本当ははるに思いっきり甘えたったのかも。そんな寅子を理解し、頭を撫でるはるの慈愛に満ちた表情は圧巻でした。

◆1位:寅子×優三の変顔対決にみる夫婦の絆(第40話)

そして私が前半で最も好きだったシーンは、寅子と優三の変顔対決です。

寅子と優三は、静かに温かく関係を育んできました。寅子のことを「ずっと好きだった」優三が、いつも寅子のことをさりげない優しさで包み込むエピソードはどれも大好きです。法律の道を志そうとする寅子に法律の本を渡したり、夫婦の初夜には「そんなに緊張しなくても、指一本触れないから」とイビキをかきはじめたり、寅子が妊娠して弁護士を辞めた際には何も言わずに子どもの誕生を心待ちにしたり。何より戦地へと赴く前に、優三が寅子に伝えたメッセージは最高のラブレターでした。

「僕の大好きな、あの何かに無我夢中になっている時のトラちゃんの顔をして、何かを頑張ってくれること。いや、やっぱり頑張んなくてもいい。トラちゃんが後悔せず、心から人生をやり切ってくれること。それが僕の望みです」

相手のありのままを受け入れて、好きになる。相手が相手らしく生きることを尊重する。そうして育まれたふたりの絆を象徴しているのが、第40話の変顔対決なのです。もともとは高等試験の際、お腹を下しそうになった優三の緊張をほぐそうと「あんまり人に見せない方がいい顔」を寅子が披露したことに由来。出征の朝、神妙な面持ちの寅子を優三は変顔で和ませました。その後、ひとり歩いてゆく優三を追いかけて、寅子も渾身の変顔を。そして泣き笑いの変顔を優三も返す。

「好き」でも「愛している」でもない。変顔で、想い合う夫婦の絆を表現したふたりが愛おしくてたまりません。後半でも、優三の優しさがきっと寅子を支えてくれるはず。

◆前半だけでも傑作エピソードは山のように

ほかにも、実在の事件をモデルにした毒饅頭事件や、共亜事件における桂場の名判決文、寅子と女子部の同窓生たちとのエピソード、幼なじみ花江と兄・直道(上川周作)の葛藤、恩師・穂高重親(小林薫)に対する寅子覚醒の「はて?」などなど、前半だけでも傑作エピソードは山のようにありました。

毎話、毎週、積み上げられてきた素晴らしいシーンのなかから、今回は筆者の個人的好みで5つのシーンを選びましたが、皆さんの好きなシーンはどこですか?

7月から後半戦へと突入し、法曹界の重鎮の父をもち自らも裁判官である星航一(岡田将生)も登場。ますます目が離せない展開が期待できそうです。

<文/鈴木まこと>

【鈴木まこと】
tricle.ltd所属。雑誌編集プロダクション、広告制作会社勤務を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとして活動。日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間ドラマ50本、映画30本以上を鑑賞。Twitter:@makoto12130201

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