木戸大聖の魅力とは何だろう? 佐藤健演じる並木晴道の高校生時代役に抜擢された『First Love 初恋』(Netflix、2022年)で、心を掴まれた視聴者は少なくない。
すごく熱心で、好感を持てる表情をする人である。他作品でも、サラッとハンサムな弟キャラ感という印象が強いのだが。
イケメン研究をライフワークとする“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、最近の出演作品を通じて木戸大聖の魅力を解説する。
◆初心でピュアな弟キャラの人
木戸大聖はもっと若い人かと思っていたら、現在27歳なのであった。万年、弟キャラの人というのか、普通に見た目が若々しく変わらずに爽やかということもあるけど、彼の演技自体がとてもウブな感じがするからだ。
混じりっけがなく、とてもさらさらしていて、肌触りがいい。そんな感じ。ブレイク作となった『First Love 初恋』や初主演ドラマ『僕たちの校内放送』(フジテレビ、2023年)でも高校生役がなじんでいた。川口春奈主演の『9ボーダー』(TBS、2024年)では、川口扮する主人公の幼馴染として、29歳というナインボーダーの年齢。
アラサー真っ只中で、対外的にはそろそろ「おっさん」と呼ばれてもおかしくない人物を演じたわけだが、おっさんくささが全然ない。それどころか、同作でもやっぱりむしろ、ウブでピュアな印象を受ける。
◆切ない片思いの感情
木戸扮する高木陽太は、酒屋の息子で、大庭七苗(川口春奈)のことがずっと好きなのだけれど、相手には気づいてもらえない。それでも幼馴染としてずっと近くにいるだけで幸せを感じていられる。
ところが、七苗の前に、記憶がない謎のギター弾き・コウタロウ(松下洸平)が現れたことで状況は変わる。七苗とコウタロウが付き合うことになり、陽太の押さえていた気持ちは溢れ出てしまう。
第3話では、大庭湯の風呂場で七苗とコウタロウがキスするのを見てしまって、激しく動揺。「俺、いつもしくじるんだよな」と切ないぼやきで、片思いの感情を吐露する。それを聞く七苗の妹・大庭八海(畑芽育)もまた陽太のことが好きで、片思いの感情が折り重なる。
◆表情の演技が一辺倒? 木戸大聖の魅力とは
きゃぁ、ウブだぁ~と叫びたくなる。キスを見たときの、胸がキュッとなるような、目の前の光景が遠のくような感覚。繊細というよりは、それをシンプルな純情の視線で木戸は見せてくれる。
それ以外の場面でも基本的に、陽太はどこか一点を見つめるように相手を眼差す。その瞬間の表情も決まってピュアな感じ。それ以上でも以下でもなく、特に表情に変化はない。
表情の演技が一辺倒と言えなくもないのだが、でもそれが木戸大聖の魅力ではないかと思うのだ。変に感情豊かな演技で、表情に細工を施すくらいなら、たとえ無骨な印象を与えても余計なことはせずにいたほうが、よっぽど潔くはないか?
◆演技そのものについて考えること
いやもちろん俳優である以上は単に佇んでいるだけではいけない。ちゃんと演技をしなきゃならない。でもじゃあ、ちゃんとした演技とは実際のところ、どんなものを指すのだろう?
これは映画表現を専門としてきた筆者の実感だが、(映像の)俳優の演技とは、ズバリ、フレーム内にピタッとおさまる才能だと思っている。変にエモーショナルにならずに、どこまでも無駄がなく、シンプルに。
その上で演じる役柄の内面(キャラクター)と噛み合うこと。『9ボーダー』の木戸は、その意味ではとても悩みながら高木陽太役を演じていたのではないかと想像する。
ウブでピュアな印象はそのためだと思うのだが、木戸大聖という俳優を考えることは、そのまま演技そのものについて考えることにつながるのだ。
◆細部で情感を漂わせる人
迷える演技が魅力的に写ることがある。菅野美穂主演ドラマ『ゆりあ先生の赤い糸』(テレビ朝日、2023年)では、菅野扮する伊沢ゆりあと事実上の不倫関係になる伴優弥を演じた。
ゆりあの自宅改装のために優弥が出入りするようになった当初は、単純にさわやかな好青年という雰囲気だったが、実はゆりあと同名の息子を育てる父親なのだ。
木戸にとって、父親という役柄の追加は新鮮なもの。不倫関係に躊躇しながら、木戸自身がどこか葛藤するように優弥役を演じる姿に好感を持てた。
第5話、ゆりあと車内で会話する場面。色っぽい空気感漂う中、木戸が「ンフフッ」と控え気味に、緊張(葛藤)を解くように、若干吹き出してはにかむ感じがとてもよかった。
これは、『僕たちの校内放送』で演じたボッチ高校生・今野浩哉が放送室で興奮気味に「テェッ」とキモカワに笑う間合いと似ている。
なるほど、木戸大聖は、もしかすると吹き出す瞬間に本領発揮する俳優なのかもしれない。
あるいは、食べ物を食べる姿もいい。『9ボーダー』第5話ではちょっと切な可愛くコロッケを、出演最新作『海のはじまり』第1話では朝食場面で黙々ともぐもぐ。こういう細部で情感を漂わせる人なのだと思う。
<文/加賀谷健>
【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu
すごく熱心で、好感を持てる表情をする人である。他作品でも、サラッとハンサムな弟キャラ感という印象が強いのだが。
イケメン研究をライフワークとする“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、最近の出演作品を通じて木戸大聖の魅力を解説する。
◆初心でピュアな弟キャラの人
木戸大聖はもっと若い人かと思っていたら、現在27歳なのであった。万年、弟キャラの人というのか、普通に見た目が若々しく変わらずに爽やかということもあるけど、彼の演技自体がとてもウブな感じがするからだ。
混じりっけがなく、とてもさらさらしていて、肌触りがいい。そんな感じ。ブレイク作となった『First Love 初恋』や初主演ドラマ『僕たちの校内放送』(フジテレビ、2023年)でも高校生役がなじんでいた。川口春奈主演の『9ボーダー』(TBS、2024年)では、川口扮する主人公の幼馴染として、29歳というナインボーダーの年齢。
アラサー真っ只中で、対外的にはそろそろ「おっさん」と呼ばれてもおかしくない人物を演じたわけだが、おっさんくささが全然ない。それどころか、同作でもやっぱりむしろ、ウブでピュアな印象を受ける。
◆切ない片思いの感情
木戸扮する高木陽太は、酒屋の息子で、大庭七苗(川口春奈)のことがずっと好きなのだけれど、相手には気づいてもらえない。それでも幼馴染としてずっと近くにいるだけで幸せを感じていられる。
ところが、七苗の前に、記憶がない謎のギター弾き・コウタロウ(松下洸平)が現れたことで状況は変わる。七苗とコウタロウが付き合うことになり、陽太の押さえていた気持ちは溢れ出てしまう。
第3話では、大庭湯の風呂場で七苗とコウタロウがキスするのを見てしまって、激しく動揺。「俺、いつもしくじるんだよな」と切ないぼやきで、片思いの感情を吐露する。それを聞く七苗の妹・大庭八海(畑芽育)もまた陽太のことが好きで、片思いの感情が折り重なる。
◆表情の演技が一辺倒? 木戸大聖の魅力とは
きゃぁ、ウブだぁ~と叫びたくなる。キスを見たときの、胸がキュッとなるような、目の前の光景が遠のくような感覚。繊細というよりは、それをシンプルな純情の視線で木戸は見せてくれる。
それ以外の場面でも基本的に、陽太はどこか一点を見つめるように相手を眼差す。その瞬間の表情も決まってピュアな感じ。それ以上でも以下でもなく、特に表情に変化はない。
表情の演技が一辺倒と言えなくもないのだが、でもそれが木戸大聖の魅力ではないかと思うのだ。変に感情豊かな演技で、表情に細工を施すくらいなら、たとえ無骨な印象を与えても余計なことはせずにいたほうが、よっぽど潔くはないか?
◆演技そのものについて考えること
いやもちろん俳優である以上は単に佇んでいるだけではいけない。ちゃんと演技をしなきゃならない。でもじゃあ、ちゃんとした演技とは実際のところ、どんなものを指すのだろう?
これは映画表現を専門としてきた筆者の実感だが、(映像の)俳優の演技とは、ズバリ、フレーム内にピタッとおさまる才能だと思っている。変にエモーショナルにならずに、どこまでも無駄がなく、シンプルに。
その上で演じる役柄の内面(キャラクター)と噛み合うこと。『9ボーダー』の木戸は、その意味ではとても悩みながら高木陽太役を演じていたのではないかと想像する。
ウブでピュアな印象はそのためだと思うのだが、木戸大聖という俳優を考えることは、そのまま演技そのものについて考えることにつながるのだ。
◆細部で情感を漂わせる人
迷える演技が魅力的に写ることがある。菅野美穂主演ドラマ『ゆりあ先生の赤い糸』(テレビ朝日、2023年)では、菅野扮する伊沢ゆりあと事実上の不倫関係になる伴優弥を演じた。
ゆりあの自宅改装のために優弥が出入りするようになった当初は、単純にさわやかな好青年という雰囲気だったが、実はゆりあと同名の息子を育てる父親なのだ。
木戸にとって、父親という役柄の追加は新鮮なもの。不倫関係に躊躇しながら、木戸自身がどこか葛藤するように優弥役を演じる姿に好感を持てた。
第5話、ゆりあと車内で会話する場面。色っぽい空気感漂う中、木戸が「ンフフッ」と控え気味に、緊張(葛藤)を解くように、若干吹き出してはにかむ感じがとてもよかった。
これは、『僕たちの校内放送』で演じたボッチ高校生・今野浩哉が放送室で興奮気味に「テェッ」とキモカワに笑う間合いと似ている。
なるほど、木戸大聖は、もしかすると吹き出す瞬間に本領発揮する俳優なのかもしれない。
あるいは、食べ物を食べる姿もいい。『9ボーダー』第5話ではちょっと切な可愛くコロッケを、出演最新作『海のはじまり』第1話では朝食場面で黙々ともぐもぐ。こういう細部で情感を漂わせる人なのだと思う。
<文/加賀谷健>
【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu