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沖縄の90歳“おばー”を孫が配信で人気TikTokerに!元気のヒケツは80年以上、毎日続ける「2つのスゴイ習慣」

女子SPA! 2024年7月16日 8時46分

心がまるごと洗われるような、ちゅらさる海(きれいな海)を背に、福々しい笑顔の大田吉子さん。『90歳おばーのゴキゲンなひとり暮らし 孤独を吹き飛ばして幸せに生きるヒケツ』(KADOKAWA)には、TikTokやInstagramで50万人のフォロワーを持つおばーの日常が綴られています。

◆「私でよければなんでもやるよ」 

沖縄で生まれ育ち、90歳の今も、海や山で遊ぶ大田さんを「おばー、かわいいよ」と撮影したのがお孫さん。

「喜んでくれる人がいると思うとなんだかうれしくなって、俄然はりきってしまう」という大田さんですが、順風満帆な人生を送ってきたわけではありません。

貧しい環境、戦争、結婚、子育て。もちろん、休みなく働いてきました。座右の銘は「私でよければなんでもやるよ」。

苦労や努力を感じさせない、沖縄のかわいいおばー。しなやかな生き方の秘密はどこにあるのでしょうか。

◆10歳の戦争体験

やんばるの戦(沖縄戦)がはじまったのは昭和20年、アメリカ軍が上陸してきたのです。この時、大田さんはわずか10歳。沖縄が完全降伏するまでの約3ヶ月間、山の中で息を潜めて生活していたといいます。

すぐそばまでアメリカ軍に包囲されているのです。

「山の中で感じた不安と恐怖は、90歳になった今でも忘れることはできません」

この言葉の重みを笑顔に変えたのは、命の尊さを身をもって経験したからではないでしょうか。

戦争が終わってからも、相変わらずの貧乏生活。高校時代から大田さんの職業遍歴がはじまりました。保育士、バスガイド、ラジオ局の電話交換手。

23歳で結婚してからも、子育てをしながら働き続けます。アイスキャンディー店、精肉店、鮮魚店、農業、畜産業、民泊。

家族のため、村の人たちのため、助け合いながら、とにかく動いてきたのでしょう。戦火を潜り抜けた命を、決して無駄にしないで生きてきたのです。

「やればできる、やらなければできない。できないことは、やらなかったこと」

何事にも前向きに、一生懸命働いて、5人の息子さんを大学まで出しました。「夫と私の誇りです」と語りながら、今日も朗らかに笑います。

◆仕事が好きになれない、現代人の悩み

「どうしたら楽しく仕事ができるようになりますか?」こんな現代人の悩みに対する大田さんのこたえは、「仕事なら割り切ってお金を稼ぐことに集中した方がいい」。

いたってシンプルです。さらに「割り切れないなら、自分の好きなものを探しなさい」。

情報過多の世の中、好きなものを探すのは。至難の業じゃありませんか。しかし大田さんは「自然にしていたら、向こうからやって来ますよ」。

私達は案外、人の言うことに耳を傾けていないのかもしれません。インターネットの情報は大量で、日々更新されますが、それは大勢に向けられています。あなただけに向けられるのは、家族や友人や知人が何気なく持ってくるもの。

大田さんもきっと、人との縁を大切に紡いできたのでしょう。便利になった昨今、遠くばかりを見ずに、足元をしっかり見つめていれば、好きなことや楽しいこと、自分の幸福に気づくのかもしれませんね。

◆元気の秘訣は小学校の先生と約束した2箇条

「元気でいるには、たくさん歩くこと、必ずラジオ体操をすること」

この2箇条は、大田さんが80年以上守り続けている健康の秘訣。小学校の担任だった先生との約束だそうです。

毎朝6時30分からNHKのテレビに合わせてラジオ体操、ウォーキングは1日3km。1年前にご主人を亡くし、ひとり暮らしですが、このルーティンは欠かしません。朝食の後は朝市に出かけ、近所の人とおしゃべり。午後は息子さんが営む飲食店でお手伝い。

たくさん歩けば、人にも出会い、自ずとやることもできてきます。人生、動かなくてははじまりません。あちこちで笑顔をふりまき、「私でよければなんでもやるよ」と、90歳になってもご縁を大切にしているのではないでしょうか。

◆おばーの教えは人生の指針

大田さんのTikTokやYouTubeのアカウント名は「南の島のおばーと孫」。配信しているのはお孫さんです。いわば、大田さんの愛や生き方を傍で見てきたひとり。

小さな頃、好き嫌いが多かった時、「食べ物を好き嫌いする人は、人も好き嫌いするようになってしまうよ」と諭(さと)されました。もしかしたら大田さんの戦争体験からこの一言が出たのかもしれませんが、そんな事情は明かしません。大田さんは叱らず、こう言ったそうです。

「なんでも好きだと思って食べてみなさいよ、きっと美味しいから。お前の気の持ち方ひとつで世界は変わるから」

体にいいから食べなさい、ではなく、残したらもったいないから食べなさい、でもないのです。お孫さんの世界を狭めないために、そう伝えたのでしょう。

「人間だってそうさね。嫌いだと思うから嫌いになる。好きだと思ってみれば、誰でも好きになるから。好き嫌いしないで、なんでも好きでいる人生の方が、ずっと幸せだよ」

自分の幸せは、自分の心ひとつで決まるのです。大田さんが培(つちか)ってきた90年は、嫌いを好きに変換し、豊かさを増やして、周囲に振り分けてきた人生です。

幸福と愛と楽しさと笑顔。すべて自分の心次第だと、大田さんはおしえてくれます。本書を読み、私も沖縄まで、かわいいおばーに会いに行きたくなりました。

<文/森美樹>

【森美樹】
小説家、タロット占い師。第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『主婦病』(新潮社)、『私の裸』、『母親病』(新潮社)、『神様たち』(光文社)、『わたしのいけない世界』(祥伝社)を上梓。東京タワーにてタロット占い鑑定を行っている。X:@morimikixxx

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