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「上の人を呼んでよッ!」図々しすぎるクレーマーを黙らせた“まさかの人物”

女子SPA! 2024年7月13日 8時47分

 顧客による迷惑行為“カスタマーハラスメント(カスハラ)”は社会問題にもなっていて、国を挙げての対策や法改正などがおこなわれています。2023年12月13日に改正された「旅館業法」では、要件に該当する要求をおこなった宿泊客を拒否できるようになりました。

 さまざまな職種で今後の対策や法改正が期待されているカスハラですが、実際にサービス業の現場ではどのような被害を与えているのでしょうか。今回は、自身の体験から「早く法整備が進んでカスハラ客が減ってほしい」と希望する春奈さん(仮名・26歳)に話を聞きました。

◆最初は理にかなった小さなクレームだった

「私は、レストランでホールを担当しています。何にイライラしているのか不機嫌な様子でこちらにもキツい口調であたってくる人、代金を投げるように渡してくる人などは少なくないので、もう慣れました。でも、精神はすり減りますし、ストレスも溜まります」

 さらに、そこへ強敵が加わるとなおさら。「その人が、また来店したら……。と、今後のことを考えるだけで疲れてしまいます」と春奈さん。そんな春奈さんにとって、とくに強烈な印象を残したのが、最初は控えめで常識のありそうな40代ぐらいの女性Sさんでした。

「最初は『お皿が少し汚れているから変えてほしい』といった、どう考えても私たち店側が対処しなければならないクレームを受けたこと。確かにお皿には小さな汚れがあったので、すぐに謝罪して新しいものを持って行きました」

◆だんだんと図々しくなっていった

 するとSさんは「忙しいのにごめんなさい。ありがとう」と、店側が謝罪するべき状況だったにもかかわらず、とても印象のよい対応だったとか。そしてその日以降、グラスが空になったときやカトラリーの変更など、よく声をかけられるようになりました。

「そのうち、週に2~3回はランチタイムに来店。常連さん状態となり、この頃から図々しくなっていきました。ランチタイムが終わってもなかなか帰らず、声をかけると『ごめんなさい』と申し訳なさそうに謝って帰宅するのに、また同じことを繰り返すのです」

 歯向かってくるわけでもないため、店側も春奈さんもその都度、ランチタイムの終了時間を伝えることぐらいしかできません。ほかにも、開店前で準備中のプレートを吊るしてあるのに、「少し早いけど、店内で待ってもいいですか?」と聞いてくることもありました。

「はっきり言って、結構迷惑なんですよね。でも、トラブルを避けたい雇われ店長は、開店前の店内で待たせてしまったのです。するとSさんは、当然のように準備中でもやってくるようになりました。それだけではありません。日に日に態度も要求も大きくなっていきました」

◆ほぼ食べ終えてるのに「肉が硬くて食べられない」

 ほとんど料理を食べ終えているにもかかわらず、「肉が硬くて食べられない。ほかの料理に交換してほしい」など、驚くような要求をしてくることが増えたのです。物腰がやわらかいのでオブラートに包まれてはいましたが、それはまるで陰湿なイジメのようでした。

「私がSさんについて相談しても、店長の反応は、いまひとつ。それなのに、『そっちでどうにか解決して』というような雰囲気を醸し出してくるのです。仕方なく、Sさんから料理についてクレームがあったとき、『もうこれ以上の要求はのめない』と、丁寧に断りました」

 すると、Sさんは豹変。「上の人を呼んで」「その態度の悪さも謝罪させてやる」と、人が変わったように冷たい声で言い放ちます。思わず、「どうしよう」と固まってしまった春奈さん。そのとき、事情を知っていたスタッフのひとりがスタスタとテーブルに近づいてきました。

◆普段は癒し系の女性店員が豹変!?

「そのスタッフは普段、ほのぼのとした雰囲気を身にまとった癒し系女子。アイドルのような彼女が次の瞬間、ものすごい形相でSさんを睨みつけ、声を潜めて『あっ? なんや脅しとるんか? ん?』と関西弁で捲し立てたのです」

 Sさんは、そのスタッフをきれいに二度見。そのまましばらくは唖然としていましたが、コホンッ……と小さく咳払いをし、「……ぁあ……っつ……、もう、いいわ……」と言うと席を立ち、レジでお金を支払って帰っていきました。

「この一件でSさんは店に来なくなり、いまは平穏な日々が続いています。また、Sさんに関西弁で迫ったスタッフは、女優を目指して頑張っていたが今後どうするか悩んでいたらしく、今回の件で自分の演技に自信がついたそうです」

 春奈さんは「今回は丸く収まってよかった」と言いつつ、「口調や態度が悪く恫喝まがいの人や因縁をつけて謝罪を求めてくるような人もいます」とも続けます。サービス業界で働く人たちが笑顔で気持ちよく働けるよう、私たちも自分の言動に気をつけたいものですね。

<文/山内良子 イラスト/ただりえこ>

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