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「なぜ夫に怒ってしまうのか?」本当の原因は“怒り”じゃなかった/犬山紙子

女子SPA! 2024年7月12日 8時45分

夫婦関係がうまくいかない…と悩んでいませんか?でも「100%うまくいってる夫婦」なんて存在しない気もします。

「夫婦はそもそも他人。“問題があること”を前提に、どうリカバリーするかが重要だと思います」と言うのは、エッセイストの犬山紙子さんです。犬山さんが自身の体験、そして多くの夫婦を取材してわかった「リカバリーのヒント」とは?

(以下は犬山さんの著書『すべての夫婦には問題があり、すべての問題には解決策がある』を再構成したものです)

◆怒りっぽい私、自罰的な夫

●犬山紙子×劔 樹人夫妻のケース

私は結婚3年目から4年目までカウンセリングに通っていました。というのは怒りっぽい性格をどうにかしたかったからです。怒りっぽいって「性格だからね」と甘やかされがちですが、周りに悪影響を及ぼすよくない性質、最悪モラハラにまで至るものだと、人と一緒に暮らすようになり強く思うようになりました。

怒りっぽい私は、お腹が空いている状況で時間に余裕がないと無自覚に何かに怒ってしまうという性質がありました。急いで仕事の支度を用意しながら「え、なんで昨日のご飯が冷蔵庫に入ってないの?」「ゴミが溜まってる!」と不機嫌な顔で夫を責めてしまっていたのです。ただの八つ当たりです。

◆カウンセリングで原因を探ることに

小さい娘もいるなか、こんな理不尽な姿を見せるのは絶対によくありません。夫だってすぐ怒る相手との生活はストレスフルなはず……。優しい夫は絶対に言い返してきませんし。夫はいつか疲れ切って、傷ついてしまうかもしれない。それを防ぐためにも、自分のためにも、カウンセリングを受けようと思ったのです。

カウンセラーといってもピンキリですので「臨床心理士の資格を持っている」「経験がそこそこ豊富である」「初回にしっかりと話を聞いてくれる人である」ことを条件にするのは自分のなかで決めていました。

怒らないための対処療法は巷にあふれていますが、それよりは原因療法。「そもそもなぜ自分は怒ってしまうのか?」を知り、根本から修正をするのが狙いです。

◆「怒り」の裏にあった「甘えたい」気持ち

カウンセリングでは私の生い立ちから今に至るまでをじっくり聞いてもらい、そこから「私がなぜ怒ってしまうのか?」を紐解きます。そこで見えてきたのは、「認めてほしい、甘えたい」から怒ってしまっていたということ。つまり「甘えたいのに甘えられなかった」など、これまで我慢してきた感情を怒りとしてブワッと出してしまっていたんですね。

さらに私は「実は精神的に自立できていないのに、外では自立できているように振る舞うから、余計にいろいろ溜め込んで、なんでも言える夫(自分の一部だと思っているそう)にのみぶちまけてしまう」らしい。当たっている。

イラっとしてしまったり、理不尽に怒りを感じたりしたら、まず「ああ、私は甘えたいから怒ってるんだ、うまくいかないことを人のせいにしたいんだ」と認知することから実践していくことに。しかし、分析だけでなく守秘義務のある人にこれまで凍結していたさまざまな気持ちを聞いてもらえることって、こんなに大切なことだったとは……。

◆甘えの感情を出すのが下手すぎる

2回目のカウンセリングでは、アンケートからロールシャッハまで、心理テストをみっちりやってもらいました。その結果、実は怒りの数値がそこまで高くないことが判明。自分で怒りっぽいと思っていたのは「甘えの感情の発散が下手すぎる」ということだったのだと思われます。これ、自分じゃ絶対わからなかったわ。

3回目ではIQテストを受けることに。IQの数字自体を見るというより、何が得意で何が苦手かを測るのが目的。まあこれらのテストだけですべてがわかるものだとも思いませんが、指標にはなるかな、という具合です。

◆カウンセリングを経て、夫にインタビュー

夫・劔樹人も同タイミングでカウンセリングを受けていました。彼は私と正反対で、もともと自罰的な性格であったからです。すべて自分が悪い、自分のせいだと思ってしまう、そうやって生きていくのは私以上につらいものです。そして彼が自分を責めるのを止めるためにも、私が理不尽に怒らないのは大切なことだったんですね。

こうやって、私と夫両方をよく知るカウンセラーさんの力が必要なことがあれば、話を聞いてもらえるという心強い人生のオプションがついたわけです。

◆「不機嫌がすぐ終わるようになった」と夫

カウンセリングを受け、夫からは「怒りの感情が出てきた瞬間を意識するようになったというのが見ててわかる。一瞬目が怖いときはあるけれど、それも前だったらずっと不機嫌だったのが、すぐに終わるようになった。怒っていることを正当化して、怒りだと認めないのが一番面倒な状況だと思うから、自分で怒りを認めて動くだけで違うものだなって」と言われるようになりました。

夫も自分を責めてしまったときに、すぐそれを認知して心を落ち着ける動作をするように。明らかに自分を責めてしまった後のリカバリーが早くなっています。

◆怒らない、弱音が吐けるのは、本当にラク!

さて、こんな出来事を書いてから1年半が経った頃。理不尽に怒ることはほぼなくなりました。正当性がある要求も、怒りながらではなく、冷静に優しく話すようになっています。さらには余裕がなくなったときに「甘えたい」とリクエストして夫に話をしたり、友人に弱音を吐くこともできるようになりました。

私は友人に弱い部分を見せるのが本当に苦手だったのです。「重い」とか「迷惑」とか思われるのが怖かったし、そもそも話そうという気にすらならなかったのですが、できるようになると相手も本音を打ち明けてくれて、より仲良くなれました。これは大きな成長です。弱い部分を見せられる友人はパートナーと同じく一生の財産。本音で信頼できる人間が増えたことが本当に嬉しい。

◆「ただ生きてていい」と認めて欲しかったんだ

私の「認めて欲しい」という欲求は「何かすごいことをしたことを認められたい」ではなくて、「弱さや過去のつらいことを引きずっている自分のことも、友人として、パートナーとして認めて欲しい、ただ生きてていいことを認めて欲しい」ということだったんでしょう。それはすぐにはわからない感覚でした。

いやあ、怒らないでいいっていいですね、私も本当にラクになったのです。正直今、夫とはめちゃくちゃ仲良く信頼しあっています。

◆<リカバリーのヒント>

1.夫婦の問題は夫婦だけだと俯瞰して見ることが難しいため、第三者のプロの目が入るとよい。そのためには信頼できるカウンセラーを見つけておくこと。とはいえ、マルチやトンデモには引っかからないよう、臨床心理士の資格を持つかどうかなど基準を持って選ぶべき。

2.他罰的、自罰的な性格はパートナーとの関係のなかで問題を起こしやすい。「性格だから」と諦めず、改善を試みる。性格は変えられないわけではない。

<文/犬山紙子 イラスト/劔樹人>

【犬山紙子】
1981年生まれ。エッセイスト、コメンテーター等としてTV出演も多数。著書に『私、子ども欲しいかもしれない。』『すべての夫婦には問題があり、すべての問題には解決策がある』など。2014年に劔樹人さん(ベーシスト、漫画家)と結婚。長女の誕生を期に、2018年、児童虐待防止チーム #こどものいのちはこどものもの を発足。 
@inuningen 
@inuyamakamiko

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