夫婦関係がうまくいかない…と悩んでいませんか?でも「100%うまくいってる夫婦」なんて存在しない気もします。
「夫婦はそもそも他人。“問題があること”を前提に、どうリカバリーするかが重要だと思います」と言うのは、エッセイストの犬山紙子さんです。犬山さんが自身の体験、そして多くの夫婦を取材してわかった「リカバリーのヒント」とは?
(以下、文章は犬山さんの著書『すべての夫婦には問題があり、すべての問題には解決策がある』を再構成したものです)
◆「キレやすい夫」と妻の壮絶エピソード
●水谷さるころさん×野田真外さんのケース
今回お話を伺ったのは、漫画家の水谷さるころさんと、映像演出家の野田真外さん夫婦。おふたりはともに一度離婚してからの事実婚。今は息子さんと3人暮らしで、はたから見ると家事も育児もフェアに分担し、生活を楽しんでいるように見えます。
ですが、実はコミュニケーションの大きな問題があったそう。それは、野田さんの「キレる癖」だったそうです。
<まずは、キレやすい野田さんが変わるまでのエピソードを、水谷さんのエッセイ漫画『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』から抜粋します。この漫画には、夫婦がぶつかりながら解決策を見つけていく様子がリアルに描かれています>
◆ケンカはガチでしたほうがいい
結婚した後もコミュニケーションをアップデートしてきた、さるころさん&野田さん夫妻。漫画でも描かれたその方法と考え方を、おふたりに聞きました(インタビューは2020年)。
さるころ「ケンカの頻度はどんどん減っていて、いまは3か月に1回とかですね。ケンカの発端は一貫していて、野田さんがキレるから(笑)。でも、ひとりがキレているだけでは、実はケンカは成立しないんですよ。ケンカが成立しない状態が離婚リスクだということは前の結婚で実感していたので、ガチでケンカするようにしています」
野田「ケンカって『お前が悪い』『いやお前が悪い』という話にしちゃダメなんです。相手の人格に問題があるという話になると、感情的になってしまうから。ケンカになるのは、どちらかの人格に問題があるからではなく、コミュニケーションに齟齬(そご=くいちがい)があるからなんです」
◆キレられたら、その場で理由を聞くべき
さるころ「暴言を吐かれたり、キレられたりしたときは、その場で『何を思ってそんなことを言ったんだい?』と相手に確認することが大事だと思います。
私も以前は、イライラしている相手に何を言ってもしょうがないから、いったん我慢して、落ち着いたなと思ったときに『ああいうのはよくないよね』って言うのがオトナな態度だと思っていました。そういう態度が正しいと思っていたんですが、それは違うなって。
なぜなら、キレる人がキレ続けるのって、キレても許してもらえるからですよね」
全国のイライラしやすい人は、ギクッとしたのではないでしょうか。もちろん私もです。
「私のイライラに傷つきながらも許してくれる人がいる」ということなんだ……。
野田「キレる側としても、”許されて当然”と思っている部分があるんですよね……厄介なことに。彼女の言うとおり、キレることは加害行為なんですが、本人としては、むしろこっちが被害者だという気持ちでいっぱいなので」
さるころ「そもそも、相手を攻撃するときに自分が悪いと思って攻撃をする人はほとんどいないんですよ。何かひどい目に遭った、のカウンターとして攻撃してしまうわけで」
◆我慢したあげくに爆発していた夫
では野田さんがキレる原因ってなんなのでしょう?
さるころ「何か思ったとおりのことができなかったときに、何も言わずにどんどん我慢してイライラを募らせて、それが爆発する感じだよね」
野田「自分としては相手に合わせている……要するに”いいこと”をしているつもりなんです。それが癖になっちゃってる」
さるころ「野田さんのような人の場合、先を読んでイライラしないように立ち振る舞えばいいんですよね。遅刻癖のある相手に遅刻されるのが嫌なら、相手が遅刻するのを見越して行動すればいいんですよ」
◆「次にキレたら別れる」と宣言した
最近では、めっきりキレることが少なくなったという野田さん。きっかけは、漫画でも描かれている大ゲンカだったそうです。
野田「これまでで一番の大ゲンカは、台湾に旅行したときに、僕が行きたいお店に行けなかったことで思いっきりキレちゃったこと。しかも路上で……。そのケンカを日本まで引きずって帰りました」
さるころ「そのとき、『次にキレたら別れる』と言い渡したんです。今までは『はい、まぁしょうがないね、ナデナデ』みたいに許してきたけど、次回はないぞと」
野田「さすがにマズいと思って、『反省会をさせてください』と申し出ました」
さるころ「違うでしょ。そのときはしおらしい態度になったんですけど、私としては『まだ信用できん』って感じだったんです。で、帰国のわずか1週間後、またしょうもないことでキレたんですよ。
上野動物園で、私がトイレに行っている間に、野田さんも子どもと一緒にトイレに行っちゃって。それを知らない私が外まで捜しに行ったことで、『どこに行ったんだよ』ってキレられた。だったら『自分もトイレに行く』とか一言LINEでもすればいいのに、逆ギレですよね。それで、『てめぇ、またキレやがったな』と(笑)。反省会はその後ですね」
◆キレる思考パターンを客観的に分析すると
「反省会」とは、一体どんなことをしたんでしょうか?
さるころ「『こういう状況では野田さんはこうキレる』という思考パターンを私が挙げていって、それを本人が自分で書き留めました」
さるころさんに言われるまで、自分がキレるパターンはわかっていなかった?
野田「そうですね。結局、自分の思考パターンがわかって、『不満があれば我慢せずに伝える』ということと、『相手に対する期待値を下げる』ということを常に意識するようにしたら、だいぶイライラが減った感じはします。
イライラしがちな人に『イライラするな』と言ってもダメなんですよ。なんでイライラするかを考えないと」
野田さんも、さるころさんの意見を聞いて素直に変われるってすごいことです。
<ただ、これには後日談があります。息子さんが5歳になった頃から、野田さんが再びイライラし始め、さらにコロナ禍で家族が一緒にいる時間が増えて、キレ癖が“再発”してしまったのです。さるころさんは、カウンセリングを受けることを決断。
この顛末は、さるころさんの漫画『子どもにキレちゃう夫をなんとかしたい』に描かれています>
◆夫婦ゲンカをいい議論に変えるヒント
1.ケンカ(議論)をすることは、人格否定ではなく、コミュニケーションの齟齬をなくしていく作業だと理解する
2.自分のキレる思考パターンを整理しておくとよい。
3.暴言を吐かれた時は、「なんでそんなことを言ったの?」と冷静に相手に確認。「キレた成功体験」を作らせない。
<文/犬山紙子 漫画/水谷さるころ>
【犬山紙子】
1981年生まれ。エッセイスト、コメンテーター等としてTV出演も多数。著書に『私、子ども欲しいかもしれない。』『すべての夫婦には問題があり、すべての問題には解決策がある』など。2014年に劔樹人さん(ベーシスト、漫画家)と結婚。長女の誕生を期に、2018年、児童虐待防止チーム #こどものいのちはこどものもの を発足。
@inuningen
@inuyamakamiko
「夫婦はそもそも他人。“問題があること”を前提に、どうリカバリーするかが重要だと思います」と言うのは、エッセイストの犬山紙子さんです。犬山さんが自身の体験、そして多くの夫婦を取材してわかった「リカバリーのヒント」とは?
(以下、文章は犬山さんの著書『すべての夫婦には問題があり、すべての問題には解決策がある』を再構成したものです)
◆「キレやすい夫」と妻の壮絶エピソード
●水谷さるころさん×野田真外さんのケース
今回お話を伺ったのは、漫画家の水谷さるころさんと、映像演出家の野田真外さん夫婦。おふたりはともに一度離婚してからの事実婚。今は息子さんと3人暮らしで、はたから見ると家事も育児もフェアに分担し、生活を楽しんでいるように見えます。
ですが、実はコミュニケーションの大きな問題があったそう。それは、野田さんの「キレる癖」だったそうです。
<まずは、キレやすい野田さんが変わるまでのエピソードを、水谷さんのエッセイ漫画『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』から抜粋します。この漫画には、夫婦がぶつかりながら解決策を見つけていく様子がリアルに描かれています>
◆ケンカはガチでしたほうがいい
結婚した後もコミュニケーションをアップデートしてきた、さるころさん&野田さん夫妻。漫画でも描かれたその方法と考え方を、おふたりに聞きました(インタビューは2020年)。
さるころ「ケンカの頻度はどんどん減っていて、いまは3か月に1回とかですね。ケンカの発端は一貫していて、野田さんがキレるから(笑)。でも、ひとりがキレているだけでは、実はケンカは成立しないんですよ。ケンカが成立しない状態が離婚リスクだということは前の結婚で実感していたので、ガチでケンカするようにしています」
野田「ケンカって『お前が悪い』『いやお前が悪い』という話にしちゃダメなんです。相手の人格に問題があるという話になると、感情的になってしまうから。ケンカになるのは、どちらかの人格に問題があるからではなく、コミュニケーションに齟齬(そご=くいちがい)があるからなんです」
◆キレられたら、その場で理由を聞くべき
さるころ「暴言を吐かれたり、キレられたりしたときは、その場で『何を思ってそんなことを言ったんだい?』と相手に確認することが大事だと思います。
私も以前は、イライラしている相手に何を言ってもしょうがないから、いったん我慢して、落ち着いたなと思ったときに『ああいうのはよくないよね』って言うのがオトナな態度だと思っていました。そういう態度が正しいと思っていたんですが、それは違うなって。
なぜなら、キレる人がキレ続けるのって、キレても許してもらえるからですよね」
全国のイライラしやすい人は、ギクッとしたのではないでしょうか。もちろん私もです。
「私のイライラに傷つきながらも許してくれる人がいる」ということなんだ……。
野田「キレる側としても、”許されて当然”と思っている部分があるんですよね……厄介なことに。彼女の言うとおり、キレることは加害行為なんですが、本人としては、むしろこっちが被害者だという気持ちでいっぱいなので」
さるころ「そもそも、相手を攻撃するときに自分が悪いと思って攻撃をする人はほとんどいないんですよ。何かひどい目に遭った、のカウンターとして攻撃してしまうわけで」
◆我慢したあげくに爆発していた夫
では野田さんがキレる原因ってなんなのでしょう?
さるころ「何か思ったとおりのことができなかったときに、何も言わずにどんどん我慢してイライラを募らせて、それが爆発する感じだよね」
野田「自分としては相手に合わせている……要するに”いいこと”をしているつもりなんです。それが癖になっちゃってる」
さるころ「野田さんのような人の場合、先を読んでイライラしないように立ち振る舞えばいいんですよね。遅刻癖のある相手に遅刻されるのが嫌なら、相手が遅刻するのを見越して行動すればいいんですよ」
◆「次にキレたら別れる」と宣言した
最近では、めっきりキレることが少なくなったという野田さん。きっかけは、漫画でも描かれている大ゲンカだったそうです。
野田「これまでで一番の大ゲンカは、台湾に旅行したときに、僕が行きたいお店に行けなかったことで思いっきりキレちゃったこと。しかも路上で……。そのケンカを日本まで引きずって帰りました」
さるころ「そのとき、『次にキレたら別れる』と言い渡したんです。今までは『はい、まぁしょうがないね、ナデナデ』みたいに許してきたけど、次回はないぞと」
野田「さすがにマズいと思って、『反省会をさせてください』と申し出ました」
さるころ「違うでしょ。そのときはしおらしい態度になったんですけど、私としては『まだ信用できん』って感じだったんです。で、帰国のわずか1週間後、またしょうもないことでキレたんですよ。
上野動物園で、私がトイレに行っている間に、野田さんも子どもと一緒にトイレに行っちゃって。それを知らない私が外まで捜しに行ったことで、『どこに行ったんだよ』ってキレられた。だったら『自分もトイレに行く』とか一言LINEでもすればいいのに、逆ギレですよね。それで、『てめぇ、またキレやがったな』と(笑)。反省会はその後ですね」
◆キレる思考パターンを客観的に分析すると
「反省会」とは、一体どんなことをしたんでしょうか?
さるころ「『こういう状況では野田さんはこうキレる』という思考パターンを私が挙げていって、それを本人が自分で書き留めました」
さるころさんに言われるまで、自分がキレるパターンはわかっていなかった?
野田「そうですね。結局、自分の思考パターンがわかって、『不満があれば我慢せずに伝える』ということと、『相手に対する期待値を下げる』ということを常に意識するようにしたら、だいぶイライラが減った感じはします。
イライラしがちな人に『イライラするな』と言ってもダメなんですよ。なんでイライラするかを考えないと」
野田さんも、さるころさんの意見を聞いて素直に変われるってすごいことです。
<ただ、これには後日談があります。息子さんが5歳になった頃から、野田さんが再びイライラし始め、さらにコロナ禍で家族が一緒にいる時間が増えて、キレ癖が“再発”してしまったのです。さるころさんは、カウンセリングを受けることを決断。
この顛末は、さるころさんの漫画『子どもにキレちゃう夫をなんとかしたい』に描かれています>
◆夫婦ゲンカをいい議論に変えるヒント
1.ケンカ(議論)をすることは、人格否定ではなく、コミュニケーションの齟齬をなくしていく作業だと理解する
2.自分のキレる思考パターンを整理しておくとよい。
3.暴言を吐かれた時は、「なんでそんなことを言ったの?」と冷静に相手に確認。「キレた成功体験」を作らせない。
<文/犬山紙子 漫画/水谷さるころ>
【犬山紙子】
1981年生まれ。エッセイスト、コメンテーター等としてTV出演も多数。著書に『私、子ども欲しいかもしれない。』『すべての夫婦には問題があり、すべての問題には解決策がある』など。2014年に劔樹人さん(ベーシスト、漫画家)と結婚。長女の誕生を期に、2018年、児童虐待防止チーム #こどものいのちはこどものもの を発足。
@inuningen
@inuyamakamiko