女子SPA!で大きな反響を呼んだ記事を、ジャンルごとに紹介します。こちらは、「結婚」ジャンルの人気記事です。(初公開日は2019年7月2日 記事は取材時の状況)
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結婚=人生安泰という時代ではないけれど、玉の輿婚を目指す女性はいまだに少なくないもの。安藤絵美さん(仮名・37歳/アパレル)もその一人で、これまで付き合ってきた男性はエリートばかりなのだとか。
「ろくでなしの父と若くして別れ、シングルマザーとして苦労しながら子育てする母の姿を見てきたので、私は絶対に同じ轍は踏まないぞって。なのにいま、思いもよらぬ状況に苦しんでいまして……」
その原因は、結婚&妊娠・出産のタイミングで、夫の事業が悪化してしまったことです。
◆港区の高級マンションを内見する幸せの日々
安藤さんの旦那さんは、IT企業を経営する45歳。
「2年前に友人の紹介で出会い付き合い始めたのですが、とにかく優しくて羽振りがよくて。年齢的にもぐずぐずしているヒマはないし、すぐに『この人と結婚する!』と決めていました。彼は実家住まいなのでときどき遊びに行って義両親や出戻りの義妹と仲良くなったり、料理教室に通ったりと着々と地盤を固め、一昨年のクリスマスに晴れてプロポーズしてもらったんです」
婚約と同時に、旦那さんは港区の高級マンションを中心に新居探しを開始。安藤さんもウキウキで内見に付き添っていたとか。
「さらに年明けすぐ、フライングで妊娠も発覚。結婚式は産後落ち着いてから挙げることにして入籍だけ済ませたのですが、とにかく幸せの絶頂でした」
◆破産一歩手前の状況に……
しかし、幸せの絶頂はあっという間に終了。大手取引先とのトラブルが発端となり、夫の事業がみるみる悪化してしまったのです。ベンチャー経営者は、うまくいっているときは羽振りがいいですが、資金繰りでつまづくと、アッという間に借金を抱えて倒産してしまうようなリスクを抱えているのです。
「社員への給料を確保するために、夫はほぼ無収入状態に。もはや新居探しどころではなく、ひとまず夫が私の住むワンルームマンションに転がり込んでくる形で新婚生活がスタートしました」
それでもこの時点では、「出産までには事業が持ち直し新居に引っ越せるはず」と楽天的に考えていたという安藤さん。
「マタニティハイもあったんですかね? とにかくセレブな子育て生活しか頭に思い描いてなかったんです。ところが事業は悪化する一方で改善の兆しは見えず、破産を逃れるために踏みとどまっている状態が続いて……。そのまま出産の日を迎えてしまいました」
◆理想とは真逆の毎日に追い詰められていく
祖母の世話をしながらフルタイムで働く母親を頼るのは難しく、産後はそのままマンションへ。
「部屋が狭いのでベビーベッドの購入を諦めたのに、それでも買いそろえたベビーグッズで部屋の中はゴチャゴチャ。こんなところで親子3人でご飯食べて川の字で寝るのか……と思ったら、せつなくて涙が出ました。生まれたばかりの娘はかわいいけれど、思い描いていた生活とあまりに違いすぎて一気にマタニティブルーがやってきた感じでしたね」
慣れない赤ちゃんの世話に疲れと睡眠不足が加わり、環境が整っていても精神的に参ってしまう人が多い初めての育児。安藤さんの場合は環境に不満だらけということもあり、どんどん追い詰められていったとか。
「娘を連れて部屋を出ると、バッタリ会ったほかの住人が明らかに驚いた顔をするんですよ。『ここで子育てしてるの!?』って感じで。単身者用のマンションですから当然ですよね。造りも頑丈ではなく音が伝わりやすいので、娘が泣くたびにヒヤヒヤ。管理会社に苦情を言われて出て行くハメになったら困る……と。いまは私も育休中だし、今後どうなるかわからないし、引っ越す余裕はありませんから」
◆ワンルームで引きこもるか、夫の実家でストレスに耐えるか
さらに、ベビーカーが買えないことも大きな悩みのひとつ。
「玄関も廊下も狭く置き場がないので買えないのですが、娘が生後3か月を過ぎた頃から抱っこのしすぎで腰が悪くなってしまって。抱っこ紐で外出するとすごくしんどいんです。近隣の視線が恥ずかしいわ腰は限界だわで、買い物はもっぱらネットで済ませるようになり、すっかり引きこもりになってしまいました」
とはいえ、引きこもり生活にも辛いものがあり……。
「部屋が狭いのでどんなに泣かれても逃げ場がなく、一人になれる空間はトイレとお風呂だけ。最近、本当に何も楽しいと思えなくなってきちゃって。『なんでこんなみじめな生活をしているのか』と思うと涙が出てきて、一晩中しくしく泣くことも。ヤバいですよね」
そんな安藤さんを見かねた旦那さんは、いったん旦那さんの実家で暮らすことを提案してきましたが、それは断ったとか。
「義両親に加え小姑もいる家で暮らすのは、それはそれでノイローゼになりそうで。でも、娘のことを考えたら、本当に頭がおかしくなる前にお世話になったほうがいいのかな……」
いまは、復職して引きこもりから解放される日を心待ちにしているそうです。
―シリーズ 貧困の沼、転落の淵―
<文/持丸千乃>
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結婚=人生安泰という時代ではないけれど、玉の輿婚を目指す女性はいまだに少なくないもの。安藤絵美さん(仮名・37歳/アパレル)もその一人で、これまで付き合ってきた男性はエリートばかりなのだとか。
「ろくでなしの父と若くして別れ、シングルマザーとして苦労しながら子育てする母の姿を見てきたので、私は絶対に同じ轍は踏まないぞって。なのにいま、思いもよらぬ状況に苦しんでいまして……」
その原因は、結婚&妊娠・出産のタイミングで、夫の事業が悪化してしまったことです。
◆港区の高級マンションを内見する幸せの日々
安藤さんの旦那さんは、IT企業を経営する45歳。
「2年前に友人の紹介で出会い付き合い始めたのですが、とにかく優しくて羽振りがよくて。年齢的にもぐずぐずしているヒマはないし、すぐに『この人と結婚する!』と決めていました。彼は実家住まいなのでときどき遊びに行って義両親や出戻りの義妹と仲良くなったり、料理教室に通ったりと着々と地盤を固め、一昨年のクリスマスに晴れてプロポーズしてもらったんです」
婚約と同時に、旦那さんは港区の高級マンションを中心に新居探しを開始。安藤さんもウキウキで内見に付き添っていたとか。
「さらに年明けすぐ、フライングで妊娠も発覚。結婚式は産後落ち着いてから挙げることにして入籍だけ済ませたのですが、とにかく幸せの絶頂でした」
◆破産一歩手前の状況に……
しかし、幸せの絶頂はあっという間に終了。大手取引先とのトラブルが発端となり、夫の事業がみるみる悪化してしまったのです。ベンチャー経営者は、うまくいっているときは羽振りがいいですが、資金繰りでつまづくと、アッという間に借金を抱えて倒産してしまうようなリスクを抱えているのです。
「社員への給料を確保するために、夫はほぼ無収入状態に。もはや新居探しどころではなく、ひとまず夫が私の住むワンルームマンションに転がり込んでくる形で新婚生活がスタートしました」
それでもこの時点では、「出産までには事業が持ち直し新居に引っ越せるはず」と楽天的に考えていたという安藤さん。
「マタニティハイもあったんですかね? とにかくセレブな子育て生活しか頭に思い描いてなかったんです。ところが事業は悪化する一方で改善の兆しは見えず、破産を逃れるために踏みとどまっている状態が続いて……。そのまま出産の日を迎えてしまいました」
◆理想とは真逆の毎日に追い詰められていく
祖母の世話をしながらフルタイムで働く母親を頼るのは難しく、産後はそのままマンションへ。
「部屋が狭いのでベビーベッドの購入を諦めたのに、それでも買いそろえたベビーグッズで部屋の中はゴチャゴチャ。こんなところで親子3人でご飯食べて川の字で寝るのか……と思ったら、せつなくて涙が出ました。生まれたばかりの娘はかわいいけれど、思い描いていた生活とあまりに違いすぎて一気にマタニティブルーがやってきた感じでしたね」
慣れない赤ちゃんの世話に疲れと睡眠不足が加わり、環境が整っていても精神的に参ってしまう人が多い初めての育児。安藤さんの場合は環境に不満だらけということもあり、どんどん追い詰められていったとか。
「娘を連れて部屋を出ると、バッタリ会ったほかの住人が明らかに驚いた顔をするんですよ。『ここで子育てしてるの!?』って感じで。単身者用のマンションですから当然ですよね。造りも頑丈ではなく音が伝わりやすいので、娘が泣くたびにヒヤヒヤ。管理会社に苦情を言われて出て行くハメになったら困る……と。いまは私も育休中だし、今後どうなるかわからないし、引っ越す余裕はありませんから」
◆ワンルームで引きこもるか、夫の実家でストレスに耐えるか
さらに、ベビーカーが買えないことも大きな悩みのひとつ。
「玄関も廊下も狭く置き場がないので買えないのですが、娘が生後3か月を過ぎた頃から抱っこのしすぎで腰が悪くなってしまって。抱っこ紐で外出するとすごくしんどいんです。近隣の視線が恥ずかしいわ腰は限界だわで、買い物はもっぱらネットで済ませるようになり、すっかり引きこもりになってしまいました」
とはいえ、引きこもり生活にも辛いものがあり……。
「部屋が狭いのでどんなに泣かれても逃げ場がなく、一人になれる空間はトイレとお風呂だけ。最近、本当に何も楽しいと思えなくなってきちゃって。『なんでこんなみじめな生活をしているのか』と思うと涙が出てきて、一晩中しくしく泣くことも。ヤバいですよね」
そんな安藤さんを見かねた旦那さんは、いったん旦那さんの実家で暮らすことを提案してきましたが、それは断ったとか。
「義両親に加え小姑もいる家で暮らすのは、それはそれでノイローゼになりそうで。でも、娘のことを考えたら、本当に頭がおかしくなる前にお世話になったほうがいいのかな……」
いまは、復職して引きこもりから解放される日を心待ちにしているそうです。
―シリーズ 貧困の沼、転落の淵―
<文/持丸千乃>