Infoseek 楽天

夏イベントは完売も。女性たちの『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』ラブが止まらない!

女子SPA! 2024年7月21日 8時46分

2023年11月に公開された劇場アニメ『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』(以下、ゲゲゲの謎)。異例のヒットとなり、特に大人の女性ファンが殺到しました。

◆イベントも目白押し。なぜこんな人気なのか?

既にAmazonプライムビデオやNetflixなどで配信されていますが、この7月以降イベントが目白押しです。「ゲゲゲの謎 シネマコンサート」は即日完売で追加公演が決まり、作品とコラボしたリアル脱出ゲームが全国4都市で催され、「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 ~追憶展~」という展覧会も。

かくいう筆者(アラサー・女性)も、映画館へ8回足を運び、動画配信サイトでも何度も見返すほどハマってしまいました。コラボイベントなどにも参加し、グッズを集めたり、アクリルスタンドを自分で作るなどして、すっかりオタクになりました。

昭和の子どもたちに人気だった「ゲゲゲの鬼太郎」が、まさか令和の女性を沼らせるとは! 女性を魅了する「ゲゲゲの謎」の魅力はどこにあるのか、探りたいと思います。

◆古いけど新鮮に感じる“ダークな昭和”

『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』は原作者である漫画家・水木しげる氏の生誕100周年を記念するアニメ映画。興行収入約27億、観客動員数190万人以上という大ヒットとなりました。1960年代に漫画誌連載が始まった「墓場鬼太郎」「ゲゲゲの鬼太郎」の原点である、「鬼太郎がいかにして誕生したのか」を描いています。

舞台は、まだ敗戦を引きずる昭和31年の日本。映画冒頭ではゴミで汚れた川や生気がなくやつれた人、たばこの煙でいっぱいのオフィスが映り、昭和のダークな雰囲気に引き込まれます。主人公のサラリーマン・水木と、鬼太郎の父(のちの目玉おやじ。作中ではゲゲ郎と呼ばれるので、以下ゲゲ郎)が訪れる哭倉村(なぐらむら)は、木造の家々が並び、自然が多くノスタルジックです。

単に服装や建物を昭和っぽくするだけではなく、登場人物や世間の価値観、言動、灰皿などの小物に至るまで当時のものを意識して制作されているので、現代の私たちはむしろ目新しい感覚をおぼえるのです。

横溝正史原作の映画『八つ墓村』や『犬神家の一族』を彷彿させる凄惨なシーンや嫌悪感をおぼえるような発言が多くあり、ドキドキハラハラさせられます。アニメ映画にもかかわらず、PG-12指定されていることから、子供向けというよりも大人が楽しむ映画として制作されたことがわかります。

こうした、古いけど新鮮さを感じられる雰囲気や、ファンの多い作品のオマージュなど大人が楽しめるポイントが多いのです。

◆王道デコボココンビに萌える

「ゲゲゲの謎」には個性的な人物が多く登場しますが、書ききれないので、中心人物の水木とゲゲ郎に絞って魅力を紹介します。

水木は帝国血液銀行という「売血」を行う企業のサラリーマンで、戦争にも参加した兵隊上がりのとても上昇志向の強い人物です。のし上がるためなら多少の嘘をつくことも辞さない水木ですが、心身ともに戦争の傷を抱えており、どこか不安定なので目が離せません。女性の私でも「守ってあげたい」という庇護欲・母性をくすぐられて、どんどん引き込まれてしまいます。

一方の「目玉の親父」ことゲゲ郎は、人の世の常識など関係のない妖怪。自分の目的のために動き、水木を振り回しますが、子供には優しく嘘を嫌うお人好しな面もあるので、そのギャップに思わずキュンとしてしまいます。

そんな“凸凹コンビ”の関係性に多くの女性がハマってしまったのではないでしょうか。

◆妖怪だらけではなく、じっとりとした人の怖さ

ゲゲゲの鬼太郎と言えば、ねずみ男や猫娘、一反木綿といった個性豊かな妖怪をまず思い出しますよね。ゲゲゲの謎にも多くの妖怪が登場しますが、これまでとはちょっとテイストが変わっていたんです。今年1月に行われた「『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』真夜中のトークショー」で古賀豪監督はその意図についてコメントしていました。

「大人向けのホラーとして作るということ。そのオーダーを受けて、妖怪が出まくるホラーよりも人間同士のドロドロした怖さであればいけると思った。さらに、水木しげる先生の生誕100周年という節目でもあったので、昭和の歴史を振り返るテイストも入れ込みたかった」

あまりにも辛いストーリーから水木たちを救いたいと、本編終了後に水木とゲゲ郎で鬼太郎の育児をする“IFストーリー”を妄想する人たちも続出しました。「集団幻覚」なんて呼ばれるほど話題に。そうした妄想や本編に関する考察が、X(旧Twitter)などSNSで交わされた結果、口コミで人気が加熱していったのです。

暑い夏にひんやりする「ゲゲゲの謎」の世界。まだまだ人気の火は消えそうにありません。

<文/織田繭>

【織田 繭】
製薬会社でMRを4年間経験。「自分がやりたかったことはこの仕事なのか」と疑問に感じ、悩んだ結果、幼少期からの夢だった「文筆家」を目指すことを決意し、退職。2021年にライターに転身

この記事の関連ニュース