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「嫌いな女子アナ上位」常連だった元ぶりっこ女子アナが“俳優としてサマになってる”ワケ

女子SPA! 2024年7月18日 15時46分

 放送中の『ブラックペアン シーズン2』(TBS、毎週日曜日よる9時放送)第1話で、田中みな実と内野聖陽の間で交わされた会話が、話題である。割烹料理屋のカウンター席。大学病院教授・佐伯清剛(内野聖陽)が、治療コーディネーター・椎野美咲(田中みな実)に「木下君は元気にしているかね?」と聞く。

「木下君」とは、『ブラックペアン』(TBS、2018年)で加藤綾子が演じた役だったのだが、元局アナの先輩、後輩関係へのちょっとした目配せだった。毎週木曜日よる10時から放送されている『ギークス〜警察署の変人たち〜』(フジテレビ、以下、『ギークス』)でも田中は、医療関係者を演じている。

 イケメン研究をライフワークとする“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、“良い気分”の俳優人生を歩む田中みな実を解説する。

◆“ぬるやか”な変化の人

「結局ぬるいぐらいがいいのよね。酒も仕事も人間関係も」

『ギークス』第1話で描かれる、小鳥遊警察署の刑事課鑑識係・西条唯(松岡茉優)、交通課の基山伊織(滝沢カレン)との飲み会。産業医・吉良ます美(田中みな実)が、つぶやくように言い放つ。唯が飲んでいた熱燗がどうもぬるかったことから、回り回ってこのフレーズが出てきたのだが、田中みな実が醸す味わい深さ……。

 現在の田中みな実は、俳優としてだいぶサマになり、演技が身体に定着してきた気がする。2009年にTBSに入社した当時は、いわゆる“ぶりっ子”キャラで、週刊文春が発表する「嫌いな女子アナ」ランキング上位の常連だった田中が、2014年のフリー転向以降、次第に「好きな女子アナ」へとゆるやかに変化していった。

『絶対正義』(東海テレビ、フジテレビ、2019年)では、演技初挑戦。初主演映画『ずっと独身でいるつもり?』(2021年)などを経て、それこそゆるやかなぬるさみたいな感じで、俳優の世界でも明らかに演技を上達させている。田中みな実とは、“ぬるやか”な変化の人なのだ。

◆白衣姿が様になる田中みな実

 唯、伊織、ます美の3人は、必ず定時で退勤する。仕事はそこそこに、ゆるやか(ぬるやか)なプライベートを大切にしたい。そんな彼女たちについて、鑑識係の上司・島根太一(マギー)は、「花の省エネ三人組」と呼んでいる。

 休日は、バスに乗り、大好きな車内アナウンスに傾聴したり、自宅でジグソーパズルをひたらすら楽しんだり、さまざまだ。月曜日の朝はそれなりに気持ちを切り替えて、勤務時間を真面目にやり過ごす。

 でもそれにしては、ます美がまとう白衣がどうも勢い込んでサマになっている。白衣を羽織って、月曜日の日差しを感じながら、廊下を颯爽と歩く田中みな実が、自分はこれを着るために演技をしてるんだというくらい。

◆2クール連続でドラマ出演

 この白衣姿、間違ってもかつてはぶりっ子な小悪魔キャラで名を馳せた元局アナの魅力(色気)だなどと了解してほしくない。田中みな実と翻る白衣との純粋な組み合わせが、彼女の演技を次のフェーズへ導くのだから。

 外では敏腕副編集長、家では夫とのセックスレスに悩む役柄の対比が鮮やかだった『あなたがしてくれなくても』(フジテレビ、2023年)が、今のところ田中みな実を代表する作品だと思うが、見逃せないのは同作以来、2クール連続ドラマ出演が定期的になったこと。

『あなたがしてくれなくても』放送後の次クールでは、杉野遥亮主演の『ばらかもん』(フジテレビ)に出演。東京から地元に帰って来たシングルマザーの看護師という役柄を得たのだが、同じ医療関係者でもここでは、『ギークス』の産業医役がまとう白衣(制服)の迫力はまだあまり出ていない。

◆どちらも医療関係者

 2024年もまた4月期クール『Destiny』(フジテレビ)に出演し、石原さとみ扮する主人公の大学同期を、7月期クール『ブラックペアン シーズン2』(TBS)では、内野聖陽扮する大学病院教授が頼りにする治療コーディネーターをそれぞれ演じている。

 同クールのドラマ同時出演作である『ギークス』とセットで考えると、どちらも医療関係者で役柄が共通する。『ブラックペアン シーズン2』では白衣姿は見られないが、どうしてこんなに医療関係者を演じるのだろう?

『ばらかもん』の看護師役では、喋り方の中に薄っすら色っぽさを発散していた気がする。でもそれ以降の作品での医療関係者役では、色気をどんどん包み隠して、『ギークス』の白衣姿をひとつの到達点として、純白のムードを漂わせる。

◆“良い気分”の俳優人生

 そう、『ギークス』で田中みな実が白衣をまとう意味とは、彼女の演技が本質的に無色透明な俳優としてのスタートラインに立ったということではないかと思うのだ。これで完全に俳優一筋で生きていけるサインでもある。

 役柄に合わせたビジュアルのイメージでしかないはずなのに、本人の気概をひしひしと感じさせる。田中みな実は、それだけ力強く、繊細で、表現力豊かな俳優になった。

 第1話でいつものように居酒屋で、3人でしっぽり飲んでいると電話が。相手は娘。電話口でしっかりした口調の娘の話では、ます美の夫が他に相手を作ったらしい。『あなたがしてくれなくても』では主要登場人物の内、唯一、不倫の道にハズレなかった役を演じた田中が、今度は不倫される側という。

 居酒屋の外に出て電話するます美の目の前には、「良好気分」で「I I Ki Bun」と店名の読み方が書かれた看板が意味ありげに写り込んでいる。娘から「見栄張ってるんでしょ」と痛烈な指摘を受けて、「アハハハ」とから元気に笑うます美役の田中みな実を見て、“良い気分”の俳優人生を歩んでるんだなと思った。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu

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