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38歳女優の“笑いのツボを押しまくる演技”。夫とのエピソードでも垣間見えた面白さ

女子SPA! 2024年7月19日 15時46分

 この人は喜劇人なのではないかと思ってしまうくらい、木南晴夏の演技は面白い。毎週金曜日よる9から放送されている『ビリオン×スクール』(フジテレビ)でも木南は、視聴者の笑いのツボを連打する。

 イケメン研究をライフワークとする“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、喜劇的な“演技怪獣”木南晴夏を解説する。

◆ひとり相撲的な間合いが最高だった『9ボーダー』

 木南晴夏は好きな俳優である。この人の演技は、特別アグレッシブなわけではないのに、見ているこちらを温めてくれたり、かゆいところに手が届くようにクスッと笑えるツボをおしてくれる。

 つい最近の出演作だと、川口春奈主演の『9ボーダー』(TBS)がとてもよかった。三人姉妹の長女・大庭六月を演じる木南がとにかくツボおし名人のように見えた。例えば、六月の会計事務所に面接にやってきた松嶋朔(井之脇海)と会話が盛り上がる第1話の場面。

 一風変わった経歴の持ち主である朔の留学先が、イタリアのナポリだと聞いた途端、「あっ、ナポリ? 私も行ったことあるよ。あのね、すっごい好きなお店があったの。えー、何だっけ、名前知ってる?」とまるで要領を得ない質問をする。恐ろしいくらいのひとり相撲的な演技の間合いが最高だった。

◆現実生活の様子まで想像したくなる

 あるいは、六月と三女・大庭八海(畑芽育)と何だかこちょこちょささやき合ったりするかしましい会話場面など、明確な言葉になってないような早口が、たまらなく面白い。

 ドラマ世界でこれだけユニークに写るということは、そもそもこの人自体、絶対面白い人だよなきっと……。木南の現実生活の様子までつい想像したくなる。

 2018年、山崎豊子原作の特別ドラマ『女の勲章』(フジテレビ、2017年)での共演がきっかけで玉木宏と結婚。結婚後初のバラエティ番組出演となった『櫻井・有吉THE夜会』(2018年9月13日放送)では、玉木とジムに行くなど、いろいろとエピソードを披露していた。

◆家庭劇にとって“必要人物”みたいな存在

 中でも秀逸だったのが、公園でパンを食べるために玉木がプレゼントしてくれたベンチを忘れてしまうというもの。どうも忘れっぽい人らしく、やっぱり面白い。一家にひとり必ずこういうキャラクターの人がいたら、間違いなく食卓は、毎日楽しくなるだろう。

 吉田鋼太郎主演の『おいハンサム!!』(東海テレビ、フジテレビ、2022年)でも三人姉妹の長女を演じた。吉田扮する父親のキャラ立ち以上に、木南は好き勝手に、でもかゆいところには手が届きながら、このユニークな家族ドラマの一端を担っていた。

 言わば、家庭劇にとって必要人物みたいな存在。木南がいるところに、快活なファミリートークは、自ずとグルーヴィーに活気づき、百発百中、視聴者を喜劇の世界に招待してくれる。

◆喜劇のためにAI化

 常にポーカーフェイスを貫いて笑いを誘うスタイルは、チャップリンと同時代の喜劇俳優バスター・キートン的でもある。木南のこの上なく正確な喜劇的特質が理想的な体幹に裏打ちされながら、シャープに打ち出されているのが、出演最新作『ビリオン×スクール』だ。

 山田涼介がカリスマCEO・加賀美零を演じる本作第1話、加賀美グループの新製品発表会でお披露目されるのが、AIスーツというのが何とも。加賀美の秘書・芦沢一花を木南が演じるが、木南の百発百中の演技自体、AI搭載の喜劇俳優スーツでも着ているのではないかと思ってしまうのだから。

 発表会の客席から、CEOが自分の顔を機密にしているのは顔がブサイクだからではないかという囁きを聞き、憤慨する零に対して、一花が、「あぁ、なるほどなるほど、ブサイクって言われたの気にしてるんだ」と言う。

 ここから場面の雰囲気は、一気に木南主導の軽妙なやり取りの応酬になる。ほんと喜劇的間合いのためにAI化されたようにしか見えないくらいなのだが……。

◆“演技怪獣”木南晴夏

 AIスーツを着た零が、教育用AIプログラム開発研究のために、私立絵都学園の問題クラス(通称、ゼロ組)の担任として赴任する設定は、ちょっと唐突過ぎるが、クラスという家族以外の共同体の中でもやっぱり木南は、コミカルなジャブを好き勝手にどんどん打っていく。

 副担任として初めに挨拶した一花が、満員電車に怯えて遅刻した零を教室に呼び込む場面でも、ほとんど聞き取れないくらいの早口でいきなり怒鳴る。零が尊大な態度を取り始めると、一応適宜フォローを入れるなど、一花は、基本的にはポーカーフェイスでいたって冷静にいるが、ある瞬間にスイッチがオン。

 職員室では、教頭・土橋淳平(永野宗典)から遅刻してきたことの反省を促され、「おい、なに遅刻してんの」と言いながら、自分で自分の肩を小突く。大丈夫か、この人……。と思わせて、また冷静に戻る。

 大富豪で自ら開発者である零は、令和の日本のアイアンマン的存在なんだろうけど、そんなアイアンマン・山田涼介に対してAI的に笑いのツボを連打する木南晴夏。

 明石家さんまのことをお笑い怪獣と形容することがあるが、木南晴夏は、喜劇的な“演技怪獣”だと思う。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu

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