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『虎に翼』31歳俳優がジュノンボーイで受賞していた“意外な賞”。大袈裟な演技で旬が10年以上続くワケ

女子SPA! 2024年7月20日 8時46分

 戸塚純貴の存在感は、すごい。カメラのピントが合う前から、この人だとわからせてしまうのである。

 毎週土曜日よる11時から放送されている『青島くんはいじわる』(テレビ朝日)に出演する戸塚の存在感が、これまたすごい。いつどこでも、どんな作品でも一貫して大袈裟なスタイルが魅力的なのだ。

 イケメン研究をライフワークとする“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、10年以上、“旬状態”が続く戸塚純貴を解説する。

◆大袈裟な演技が魅力的な戸塚純貴

 俳優の演技にとっての大敵とは、無闇やたらと気持ちを高ぶらせる大袈裟なエモーションだと思う。うまく抑制されていないエモーショナルな演技ほど恥ずかしいものはないのだが、むしろ大袈裟なスタイルを武器にする俳優がいる。

 単に武器にするだけでなく、ブルルンと自分の演技のエンジンをかけるためのきっかけにする人。それが唯一うまくいってもいる。もったいぶりたくなるほどに大袈裟な演技が魅力的な戸塚純貴だ。

 どの作品でも初登場場面から、我こそはという顔をして出てくる。現在放送中の朝ドラ『虎に翼』では、第4週第16回で登場し、明律大学女子部から本科に上がってきた主人公・佐田寅子(伊藤沙莉)たちをいきなり牽制する轟太一を演じる。

◆『虎に翼』での愛すべき人物像

 轟は、何とも大袈裟な口調で、「男と女がわかり合えるはずがないだろ」と主張し、得意満面で扇子までひろげる。すると、無二の親友・花岡悟(岩田剛典)が、「口を慎みたまえ」と轟を指差す。口ごもりながらも轟は、目をかっと見開く。

 現代の感覚からするととんでもなくカビの生えた思想の持ち主だが、轟という人は一方で、自分が間違っていたなら、潔くそれを認めて、瞬時に相手をリスペクトするようになる。

 寅子たちとの交流によって着実にアップデートされていくのである。正義漢も強い。花岡のことを逆に戒めるときだってある。友情に厚い愛すべき人物像を表現する上では、戸塚の大袈裟なスタイルは、最適だ。

◆抑制されていた瞬間の演技

 どんなキャラクターを演じるときにも暑苦しい戸塚だが、『虎に翼』の轟役はその最高点。戸塚は、2010年のジュノン・スーパーボーイ・コンテスト(第23回)に出場し、理想の恋人賞を受賞している。でもこの称号とあの暑苦しさはいったい、どうしたら共存するのだろう?

 そこはプロの俳優である。ただただ一面的に大袈裟で暑苦しくいるだけじゃない。ときには繊細な表現力をちゃんと使いわける。鮮やかなコントラストの俳優だ。

『虎に翼』第10週第50回で戦後、判事になった花岡が餓死する。もっとも衝撃を受け、悲しみに暮れたのが轟。かつての学友・山田よね(土居志央梨)と再会した第11週第51回、「惚れてたんだろ、花岡に」と言われ、最初は否定する。でもその眼差しは嘘をつけない。今でも花岡を慈しんでいる。

 轟の花岡に対する感情が単純に恋なのか、愛なのかはわからない。曖昧だけど、でも誰より切実な気持ちを抱く相手に対する轟の慈愛をにじませる戸塚の演技が、この瞬間ばかりはうまく抑制されていた。

◆戸塚純貴の“旬状態”

 学生時代と社会人になってからの雰囲気を見事な加減で演じわけた横浜流星との共演作『青の帰り道』(2018年)も忘れがたいが、こういう振り幅を見せられちゃうと、大袈裟も繊細もひっくるめて、彼自体が愛すべき存在感の俳優だなぁと思う。

 そりゃいろんな作品で引っ張りだこになるのもうなづける。『花ざかりの君たちへ~イケメン☆パラダイス~2011』(フジテレビ)での俳優デビュー以来、現在では年に5本以上の作品に出演するのは当たり前になっている。つまり、10年以上、戸塚純貴の“旬状態”が続いているのだ。

 何クール連続で出演しているからすごいとかそういう次元じゃない。どのクールにも出てもらわなきゃ逆に困る。そんなレベルの話。戸塚純貴は、作品内でも常にアベイラブルなコンディションを整えている。

◆ピントが合う前から存在感が明確

 その意味で、中村アン主演の7月期ドラマ『青島くんはいじわる』に出演する戸塚は、初登場する前からすでに準備OKという雰囲気がひしひし伝わる。第1話で、中村扮する葛木雪乃が、後輩社員・木村里香(秋元真夏)に営業部への連絡について指摘する場面。

 背中合わせの席に座る雪乃と里香がやり取りしている奥のほうで、まだカメラのピントが合ってないというのに、すでに自分はここにいるよという感じで存在感を主張してくる。あ、絶対、戸塚純貴だよね……。

 雪乃をお局だと思っている里香が、「谷崎さ~ん」と構ってもらいに向うのが、その奥の席に座る谷崎真司(戸塚純貴)。ピントが合った途端、「う~ん」と里香のことを(待ち構えていた感じで大袈裟に)慰める。はたまた、雪乃が社内で話題の中途採用イケメン社員・青島瑞樹(渡辺翔太)と付き合ってるらしいという噂が広まる場面。

 社員食堂の後ろの席で聞いていた谷崎が、わざとらしく吹き出す。手元の食器をぐしゃぐしゃにして動揺するドタバタな徹底ぶり。はっきりピントが合う前から、これほど存在感が画面上で明確な俳優。それが戸塚純貴という人のポテンシャルだ。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu

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