夫婦関係がうまくいかない…と悩んでいませんか?でも「100%うまくいってる夫婦」なんて存在しない気もします。
「夫婦はそもそも他人。“問題があること”を前提に、どうリカバリーするかが重要だと思います」と言うのは、エッセイストの犬山紙子さんです。犬山さんが自身の体験、そして多くの夫婦を取材してわかった「リカバリーのヒント」とは?
(以下は犬山さんの著書『すべての夫婦には問題があり、すべての問題には解決策がある』を再構成したものです)
◆パートナーがうつになったらどうする?
●犬山紙子×劔 樹人夫妻のケース
今回は我が家についてです。劔(うつ状態)、犬山(不安症)が当時どのように互いと向き合い支え合ってきたのか、対談しました。まずは夫のうつがどのように発覚し、病院へ行くことになったのかについて。かなり苦戦したんです。
犬山:我が家はつるちゃん(夫)がうつ状態だってわかるまで時間がかかったんです。もともと気質がネガティブだったり、症状として出る体調不良も元々あったものの延長線で。なんだか体が重くて起き上がれない日がある、頭痛がするといった感じで……。
劔:もとから自己肯定感が低くて、頭痛持ちなんです。ただ、その頃は傷つきやすくなっていたのは確実にありました。電車内やネット上で怒っている人を見ると自分も落ち込むことが多かったんですよ。ただ、自分がうつっぽい状態だって実感は正直なくて。
犬山:「怒っている人が怖いのは過去のトラウマのせいなのかな」と疑ってました(一応補足すると、夫に両親によるトラウマはありません、夫の両親は素晴らしい人格者です)。
私がこれまで接してきたうつの人とは症状が違うし、体が重い日でなければ通常どおり笑って楽しく過ごせていたのも判断が鈍ったポイントです。原因がわからないから「トラウマ治療の病院行く?」「この本読んでみて」と、私ももがいていました。でも、それも夫の負担になっているようで難しかったですね……。
そうやって話を聞いていくなかで“自己否定”がキーワードとしてあがってきたので、カウンセリングに一緒に行ったんです。でもハズレの先生で「中年にはよくある」で片付けられました。
◆性格なのか?病気なのか?
――「中年なら多かれ少なかれ誰にでもあるよね~」くらいで片付けられちゃったってことですね。
犬山:そうですね。でも「そうじゃない」という違和感はあって。それからは「ネガティブな性格というのを差し引いても、やっぱりメンタル関連の病気なんじゃ?」という考えを強くして、ネットでうつの症状について改めて調べ直したら「これかも」って。
うつというとガラリと雰囲気が変わると思っていたけど、その人のパーソナリティの延長線上に症状が出る人もいるんだなって。症状はさまざまで、ひと括りにできないんですね。
――劔さんがうつだと思ったとき、本人にはすぐ知らせたんですか?
犬山:いや、夫にはめちゃめちゃ言いにくかったです。ただでさえ自己否定感がすごいのに、「あなたはうつかも」と言うことによって余計悪くなるんじゃないかと怖かったですね。
――劔さんは薬を飲まれたりと治療を始めていくなかで、改善していく実感はありましたか?
劔:少しずつ元気になっていったのかなと思います。本当にそんな感じの認識しかないのですが。
犬山:効果を感じるまで多少時間はかかったよね。でも、体が重くて全然動けないという日は明らかに減っていったし、自分を責め続けてどうしようもなくつらそうにしている時間も減ったように思います。
最初に行った“ハズレ”とは別のカウンセリングにも行き、「俯瞰で自分の感情を認知する」こともやれるようになってきました。たとえば、「あぁ、今自分を責めちゃってるな」とまず認知する。そうすれば対処もできるという“知恵”もついてきて。
私もカウンセリングを受けたことによって以前よりも怒りにくくなったし、「怒ってるから別の部屋行かなきゃ」とすぐ対処できるようになったり。
劔:確かに妻は怒らなくなりましたね。ありがたいです(笑)。
◆私が追い詰めたんじゃないか、という罪悪感があった
犬山:ずっと「私がうつに追い詰めたんじゃないか」って罪悪感があったんです。心療内科の先生に「そうではない」と言われているし、自己否定も私と付き合う前からあったとわかっている。それでも、自分が悪化させてしまっているんじゃないだろうかと……。
カウンセラーの先生にその気持ちを聞いてもらい、それは違うよと否定してもらえたのは助かりました。
劔:とはいえ、非常に落ち込みやすかったり自分を責めてしまうという僕のパーソナルな部分とは、いまだに戦い続けている感じですかね。
犬山:セロトニン不足は先天的なものもあるそうですが、カウンセリングや認知行動療法などエビデンスのある対処はしてゆけます。ですので今後もアプローチも続けていこうと思います。
劔:本当にこれは自分の性格なので。今でも自分のことが苦手というか。いいところがひとつも見つからないという気持ちはいまだにあります。
犬山:なので「治った」というよりは、徐々に徐々に焦らず「よりよくしよう」としている状況ですかね。長期戦です。とはいえ日々幸せだなあとお互いに言ってます。
(犬山さんの不安症については後日配信予定の続編で)
◆パートナーがうつになったときのヒント
1.なるべくパニックにならず冷静に接する。プレッシャーをかけないように。
2.仕事を休むことに恐怖を抱えるパートナーには、休職することに肯定的な態度で接すると相手もラク。
3.臨床心理の資格を持つカウンセラーなど、プロに助けてもらうこと。病院に行くよう、本人を最大限傷つけないように説得する。支える側も第三者に頼ることは必須。
4.精神疾患=不幸な人生ではない。互いに支え合うなかで生まれる絆や幸せを感じることもたくさんあると知っておく。
<文/犬山紙子 イラスト/劔樹人>
【犬山紙子】
1981年生まれ。エッセイスト、コメンテーター等としてTV出演も多数。著書に『私、子ども欲しいかもしれない。』『すべての夫婦には問題があり、すべての問題には解決策がある』など。2014年に劔樹人さん(ベーシスト、漫画家)と結婚。長女の誕生を期に、2018年、児童虐待防止チーム #こどものいのちはこどものもの を発足。
@inuningen
@inuyamakamiko
「夫婦はそもそも他人。“問題があること”を前提に、どうリカバリーするかが重要だと思います」と言うのは、エッセイストの犬山紙子さんです。犬山さんが自身の体験、そして多くの夫婦を取材してわかった「リカバリーのヒント」とは?
(以下は犬山さんの著書『すべての夫婦には問題があり、すべての問題には解決策がある』を再構成したものです)
◆パートナーがうつになったらどうする?
●犬山紙子×劔 樹人夫妻のケース
今回は我が家についてです。劔(うつ状態)、犬山(不安症)が当時どのように互いと向き合い支え合ってきたのか、対談しました。まずは夫のうつがどのように発覚し、病院へ行くことになったのかについて。かなり苦戦したんです。
犬山:我が家はつるちゃん(夫)がうつ状態だってわかるまで時間がかかったんです。もともと気質がネガティブだったり、症状として出る体調不良も元々あったものの延長線で。なんだか体が重くて起き上がれない日がある、頭痛がするといった感じで……。
劔:もとから自己肯定感が低くて、頭痛持ちなんです。ただ、その頃は傷つきやすくなっていたのは確実にありました。電車内やネット上で怒っている人を見ると自分も落ち込むことが多かったんですよ。ただ、自分がうつっぽい状態だって実感は正直なくて。
犬山:「怒っている人が怖いのは過去のトラウマのせいなのかな」と疑ってました(一応補足すると、夫に両親によるトラウマはありません、夫の両親は素晴らしい人格者です)。
私がこれまで接してきたうつの人とは症状が違うし、体が重い日でなければ通常どおり笑って楽しく過ごせていたのも判断が鈍ったポイントです。原因がわからないから「トラウマ治療の病院行く?」「この本読んでみて」と、私ももがいていました。でも、それも夫の負担になっているようで難しかったですね……。
そうやって話を聞いていくなかで“自己否定”がキーワードとしてあがってきたので、カウンセリングに一緒に行ったんです。でもハズレの先生で「中年にはよくある」で片付けられました。
◆性格なのか?病気なのか?
――「中年なら多かれ少なかれ誰にでもあるよね~」くらいで片付けられちゃったってことですね。
犬山:そうですね。でも「そうじゃない」という違和感はあって。それからは「ネガティブな性格というのを差し引いても、やっぱりメンタル関連の病気なんじゃ?」という考えを強くして、ネットでうつの症状について改めて調べ直したら「これかも」って。
うつというとガラリと雰囲気が変わると思っていたけど、その人のパーソナリティの延長線上に症状が出る人もいるんだなって。症状はさまざまで、ひと括りにできないんですね。
――劔さんがうつだと思ったとき、本人にはすぐ知らせたんですか?
犬山:いや、夫にはめちゃめちゃ言いにくかったです。ただでさえ自己否定感がすごいのに、「あなたはうつかも」と言うことによって余計悪くなるんじゃないかと怖かったですね。
――劔さんは薬を飲まれたりと治療を始めていくなかで、改善していく実感はありましたか?
劔:少しずつ元気になっていったのかなと思います。本当にそんな感じの認識しかないのですが。
犬山:効果を感じるまで多少時間はかかったよね。でも、体が重くて全然動けないという日は明らかに減っていったし、自分を責め続けてどうしようもなくつらそうにしている時間も減ったように思います。
最初に行った“ハズレ”とは別のカウンセリングにも行き、「俯瞰で自分の感情を認知する」こともやれるようになってきました。たとえば、「あぁ、今自分を責めちゃってるな」とまず認知する。そうすれば対処もできるという“知恵”もついてきて。
私もカウンセリングを受けたことによって以前よりも怒りにくくなったし、「怒ってるから別の部屋行かなきゃ」とすぐ対処できるようになったり。
劔:確かに妻は怒らなくなりましたね。ありがたいです(笑)。
◆私が追い詰めたんじゃないか、という罪悪感があった
犬山:ずっと「私がうつに追い詰めたんじゃないか」って罪悪感があったんです。心療内科の先生に「そうではない」と言われているし、自己否定も私と付き合う前からあったとわかっている。それでも、自分が悪化させてしまっているんじゃないだろうかと……。
カウンセラーの先生にその気持ちを聞いてもらい、それは違うよと否定してもらえたのは助かりました。
劔:とはいえ、非常に落ち込みやすかったり自分を責めてしまうという僕のパーソナルな部分とは、いまだに戦い続けている感じですかね。
犬山:セロトニン不足は先天的なものもあるそうですが、カウンセリングや認知行動療法などエビデンスのある対処はしてゆけます。ですので今後もアプローチも続けていこうと思います。
劔:本当にこれは自分の性格なので。今でも自分のことが苦手というか。いいところがひとつも見つからないという気持ちはいまだにあります。
犬山:なので「治った」というよりは、徐々に徐々に焦らず「よりよくしよう」としている状況ですかね。長期戦です。とはいえ日々幸せだなあとお互いに言ってます。
(犬山さんの不安症については後日配信予定の続編で)
◆パートナーがうつになったときのヒント
1.なるべくパニックにならず冷静に接する。プレッシャーをかけないように。
2.仕事を休むことに恐怖を抱えるパートナーには、休職することに肯定的な態度で接すると相手もラク。
3.臨床心理の資格を持つカウンセラーなど、プロに助けてもらうこと。病院に行くよう、本人を最大限傷つけないように説得する。支える側も第三者に頼ることは必須。
4.精神疾患=不幸な人生ではない。互いに支え合うなかで生まれる絆や幸せを感じることもたくさんあると知っておく。
<文/犬山紙子 イラスト/劔樹人>
【犬山紙子】
1981年生まれ。エッセイスト、コメンテーター等としてTV出演も多数。著書に『私、子ども欲しいかもしれない。』『すべての夫婦には問題があり、すべての問題には解決策がある』など。2014年に劔樹人さん(ベーシスト、漫画家)と結婚。長女の誕生を期に、2018年、児童虐待防止チーム #こどものいのちはこどものもの を発足。
@inuningen
@inuyamakamiko