Infoseek 楽天

「テレビに出ると芸が荒れると言う人も…」片岡愛之助(52歳)が明かす“半沢フィーバー”の影響

女子SPA! 2024年7月28日 8時44分

 歌舞伎俳優の片岡愛之助さん(52歳)が、人気シリーズの最新作『怪盗グルーのミニオン超変身』で日本語吹替え声優を務めました。笑福亭鶴瓶さん演じる怪盗グルーの高校の同級生で“超宿敵”のマキシム役でシリーズに初参加。テンション高い愛之助さんの怪演にも注目です。

 愛之助さんは歌舞伎俳優として日々舞台に立つ傍ら、ドラマ・映画・今回のような洋画吹替えなどの声優と、幅広く活躍の場所を広げています。その背景には、いち表現者としての真摯な想いがありました。本人に話を聞きました。

◆はじめは笑福亭鶴瓶さんの同級生!?とびっくり

――今回演じられたマキシムは、怪盗グルーの因縁のライバルで、高校の同級生というキャラクターでした。

愛之助:当初、グルーを演じる笑福亭鶴瓶さんの「同級生!?」と思ったのですが、考えてみたら鶴瓶さんというよりも、グルーの同級生、役の上での同級生でした(笑)。ミニオンの映画は観る側だったので、自分が出ることになるお話をいただいたときは驚きました。

――また、マキシムは昆虫の研究にのめり込み、その能力を手に入れるという発明をしていますが、キャラクター性をどう受け止めていますか?

愛之助:彼は昆虫を愛するあまり、あのような感じになっていますよね。物事何でも好きこそものの上手なれと言いますが、やはり好きという気持ちが、どんどん昆虫の追求に追求を重ねてくのだと思うんです。だから、彼の気持ちは、どこか分からないでもないんですよね。ただ、グルーへの復讐心については「そんなに!?」と思ったので共感しませんでしたが。

◆やると決まった以上は、もう楽しむしかない

――共感とは、やはり芸の道について、ということでしょうか?

愛之助:そうですね。僕も歌舞伎が好きなものですから、そういう意味ではいろいろなことを追求して、試してやってみたいなという気持ちはあります。なので彼の気持ちは分かるほうだと思いますね。

――洋画の日本語吹替えは初めてではないと思いますが、また挑戦しようと思われた理由は何でしょうか?

愛之助:それはもうミニオンですから、断る理由がありません(笑)。台本を見て初めて「大変なものを引き受けた!」と思うのですが、楽しみでもあります。生みの苦しみと言いますか、難産であればあるほど、でき上がったものは面白くなると思うんです。それは、この作品に限ったことではないでしょうけれど。そしてやると決まった以上は、もう楽しむしかないですからね。

――マキシムのライバルはグルーですが、ご自身のライバルはいますか?

愛之助:ライバルは常に自分自身。自分との葛藤ですよね。毎日「もういっか」と思えば、それまでじゃないですか。僕は歌舞伎に日々出ていますが、「もういっか」と思った瞬間に、どんどん質が下がっていく一方なわけです。それを今日よりも明日、明日よりも明後日と、せめて一段ずつでもどうすればもっと良くなるのか、面白くなるのか、お客様が喜んでくださるのか考える。お客様の気持ちに立つこと、それを俯瞰で見ている自分がいることが重要で、自分との戦いを続けることが大事なんです。

僕らは正解がない仕事。だから誰がジャッジするのかというと、それはもうお客様なんです。そのお客様も十人十色で、9人が面白いと言っても、1人がそうじゃないと言うことがある。満場一致で素晴らしいものを作ることとは、かなり難しいと思うんです。

つまり、正解をずっと探し続けるということなんです。「これでいいのか?」「違うだろう?」と、自問自答ですよね。それが一生続いていくわけですから、よく言えばやりがいのある仕事。ゴールがない、正解がないですが、常に探究して一生の仕事と言われるものでもあります。だからライバルは自分自身、ですかね。

◆今の人に歌舞伎を知ってほしい

――それこそ好きだからこそ続けていられるということもありそうです。

愛之助:そうですね。もしも僕が歌舞伎を嫌々やっていたら大変ですよ(笑)。嫌なことを毎日させられていたら地獄のようだと思うけれど、歌舞伎やエンターテインメントが好きな人間でよかったなと思っています。好きな仕事が出来ていて、幸せだなと思う。だから嫌だなと思うことはないんです。次は何をしてやろうかと考えていることも好きですね。

――こうして歌舞伎以外のフィールドにも積極的に参加をされていることには、何かほかに理由があるのでしょうか?

愛之助:今の人に歌舞伎を知ってほしいという想いもあります。「あのマキシムをやっている人、歌舞伎俳優なのか、ちょっと観てみようか」となるといいと思いますね。歌舞伎って昔の現代劇なので、もともと最新の歌舞いているものを題材にしているんです。今でいうワイドショーのようなイメージです。

その舞台の歌舞伎ものが、歌舞伎役者です。だから、いつも新しいもので僕らは歌舞かないといけないと思うんですね。こうしていろいろなことにチャレンジをして、新たな学びを採り入れていくことは、歌舞伎役者の自分にとって非常に大事なことでもあるんです。

――テレビドラマで言うと『半沢直樹』で主人公を追い詰める黒崎駿一役は、大きな話題になりましたが、よいチャレンジでしたか?

愛之助:劇場に非常に多くの方に来ていただきました。ドラマをやらせていただいて、新しいことに挑戦する自分のやっていることは間違いではなかったと思いました。人によっては芸が荒れるからテレビに出なくていいと言い、テレビで歌舞伎のお客様が増えるなんてことはないと言う人もいました。

でも実際は違い、それまでドラマの視聴率を気にしたことはなかったのですが、19、20パーセントもいくと、街ゆく人たち誰もが自分の顔を知っているんです。テレビの影響は強いと、それは痛感しました。歌舞伎だけやっていたのでは歌舞伎に興味がある人しか観に来ないので、ここまで知られることはなかったと思うんです。エンターテインメントを発信する上では、非常に大事なことかなと思いましたね。

◆55歳までに海外公演をしたい

――また、これからの50代、どのように過ごしたいと思いますか?

愛之助:まずは健康面に気を使って、目標を持って生きていったほうがいいかなと思いますね。たとえば何歳までに何をするなど、ざっくり決めておいたほうが、たぶん実現できる可能性が高いと思うんです。漠然といつかやりたいでは、やろうという気にならないですよね。そこまでにやらないといけないと旗を立てると、あともう3年しかない、2年しかない、やらなきゃという気持ちになって、どんどん進むじゃないですか。

死ぬまでにやるだと、ウロウロしてしまって忘れてしまうことが多いと思うんです。だから、それこそ大谷翔平くんがノートを付けていたこと、あれはすごく正しいと思って、人生の年表を作ったほうが、成功する率が高いでしょうし、そういう人が成功すると思っています。

――その年表、ちょっと聞いてもよいですか?

愛之助:自分の中にはいろいろありますね。僕は今52歳なので、55歳までに海外公演をしたいと思っています。あと3年です。

<取材・文・撮影/トキタタカシ>

【トキタタカシ】
映画とディズニーを主に追うライター。「映画生活(現ぴあ映画生活)」初代編集長を経てフリーに。故・水野晴郎氏の反戦娯楽作『シベリア超特急』シリーズに造詣が深い。主な出演作に『シベリア超特急5』(05)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)などがある。現地取材の際、インスタグラムにて写真レポートを行うことも。

この記事の関連ニュース