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「僕、男です」女装も男装も楽しむ“ジェンダーフリー男子”に挑む24歳俳優の”天性の可愛さ“

女子SPA! 2024年7月30日 8時46分

 7月17日に放送された『よるのブランチ』(TBS)に出演した木村慧人が、尊敬する先輩のひとりとして岩田剛典の名前を挙げていたのが納得だった。

 木村は、FANTASTICS from EXILEのパフォーマーでありながら、『飴色パラドックス』(MBS、2022年)で主演、『さっちゃん、僕は。』(TBS、毎週火曜日よる11時56分放送)で単独主演など、俳優としての活躍もめざましい。

 毎週土曜日よる11時30分から放送されている『顔に泥を塗る』(テレビ朝日)では、ジェンダーフリー男子役。持ち前の可愛さが役柄からあふれ、自由な才能を飛躍させようとしている。

 木村慧人は、“パフォーマー兼俳優”としての進路をどのように見定めているのか。イケメン研究をライフワークとする“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が解説する。

◆明確に具体化される可愛さ

『顔に泥を塗る』に出演する木村慧人にどうしてこんなに心をもっていかれるのかと考えている。ほんとうに可愛い。ではそれが具体的にどんな可愛さなのか。

『顔に泥を塗る』は、木村の天性の素質を具現化するとも言える。まずは主人公・柚原美紅(高橋ひかる)の反応を確認しておこう。第1話、デパートの受付で派遣社員として働く美紅が、おじさん客にトイレの場所をたずねられ、「連れてってよ」と腕を掴まれる場面。

「セクハラ!」と助け舟を出したのが、高倉イヴ(木村慧人)。「かなり悪質なセクハラですけど」と力強くもしなやかに、おじさん客に詰め寄る。華麗な撃退に目を輝かせる美紅は、陶然として「すごい綺麗」と心の中で呟く。

 美紅は、イヴのことを女性だと思っているが、「僕、男です」とイヴはあっさり告白する。この冒頭場面で女性の格好をしているイブ役についてドラマ公式サイトでは、「ジェンダーフリー男子」と書かれている。性別に固定されないイヴ役を通じて、木村の可愛さが明確に具体化されていく。

◆『女子的生活』以来の風通しの良さ

 美紅とイヴは、すぐに意気投合する。帰り際にばったり再会し、イヴのバイト先のギャラリーカフェへ行く。メイク術に悩む美紅は、イヴに真っ赤なリップを塗ってもらう。イヴの恋愛対象は、あくまで女性だが、美紅からすると同性の友達感覚で気を許せる。

 自分の好きなものにとことん素直なイヴの生き方に感化され、るんるんで帰宅する美紅だったが、同居する交際相手・結城悠久(西垣匠)からは不評を買う。実はとんでもないモラハラ彼氏。美紅にはとことん自分の理想の姿であってほしいと望む彼は、知らない男性から塗ってもらった派手なリップの色をとことん毛嫌いする。

『恋い焦れ歌え』(2022年)の熊坂出監督によるホラー・テイストの演出が、悠久の歪んだ精神をかなり誇張しながら執拗に描く。意思決定のすべてを彼氏に委ねてきた美紅が、自分らしさに目覚め、女性として解放されていく物語自体はやや今さら感もある。

 でも導き手になるイヴの自由な魅力は、(あくまでビジュアル面で)トランスジェンダー女性の日常を活写した『女子的生活』(NHK総合、2018年)の志尊淳以来の可憐な風通しの良さを感じる。

◆ガーリーとメンズ両方の魅力

 頭上からクレンジングオイルを浴びせられ、赤いリップはすぐに捨てろと命じられる美紅だが、明くる日、またイヴをたずねてカフェに行く。入り口で躊躇していると、後ろから「お姉さん!」と快活な声でイヴが。

 イヴの恰好を見て、同一人物だと思えない。するとイヴが、「今日はメンズスタイルなんだ」とさりげなく説明する。ガーリーなスタイルとメンズスタイルを違和感なく、実にすっきりとスタイリッシュに着こなせるのが、木村慧人という人だ。

 メイク監修が井出上漠というのも見逃せない。2018年にジュノン・スーパーボーイ・コンテストでファイナリストに選ばれ、“可愛すぎるジュノンボーイ”としてジェンダーフリーな魅力が話題になった人物である。

 イヴ役を演じる木村から、ガーリーとメンズ両方の魅力を引き出すのも流石の手腕だ。

◆“パフォーマー兼俳優”として

 木村は、『ホームレス中学生』(2008年)などの名匠・古厩智之監督が演出を担当した傑作BLドラマ『飴色パラドックス』で、山中柔太朗扮する週刊誌カメラマンと恋仲になる記者を演じた。第3話の濃密な車内場面など、官能ゆらめく同作で練磨された可憐な演技が、『顔に泥を塗る』のイヴ役でより具体的に粒立ち、可愛さそのものが結晶化する。

 堀田茜主演の『好きなオトコと別れたい』(テレビ東京、2024年)では、折り目正しく猛アタックする後輩キャラを演じ、着実に演技の幅を広げている。そもそも木村は、FANTASTICS from EXILE TRIBEのパフォーマーとして、Jr.EXILE世代に区分され、LDHの次世代を担っている。

 FANTASTICSがヒット歌謡をカバーする舞台『BACK TO THE MEMORIES』でも、パフォーマンス以外に女性役で演技していた。イヴ役とは違い、甲高い声のぶりっ子キャラで終始おどけていたが、絶妙なギャグセンスでこれまた可愛かった。いずれにしろ、演技のポテンシャルがかなり高く、LDH所属の“パフォーマー兼俳優”としての存在感を強めている。

◆俳優としての進路

『よるのブランチ』では、尊敬する先輩のひとりとして岩田剛典の名前を挙げていた。三代目 J SOUL BROTHERSのパフォーマーとして2010年にデビューした岩田は、パフォーマーばかりか、俳優、ソロアーティストの三足の草鞋を履いて跳躍を続けている。驚異的なバイタリティの先輩に憧れる木村は、着実に(パフォーマー以外の)俳優としての進路を見定めているのだ。

 第2話を見ると、その意気込みは十分だと思った。美紅が悠久に内緒で、イヴのカフェが出店するフリーマーケットに行く場面。その日のイヴのコーデは、ガーリー寄りのメンズスタイル。薄水色のジャケットが鮮やか。

 悠久が不意打ちでやって来る。自分は美紅の彼氏だとあからさまにマウントを取ってまろやかに威嚇する。バチバチな雰囲気。美紅と悠久が帰ったあと、イヴは出店スペースのイスに座ってマドレーヌを一口。ひとり、しょげて寂しそうな雰囲気を控えめに漂わせる木村の演技が、すごくいい。

 引きの画面内。こごぞというポジショニングと動作でピタリとおさまるのは、長年のパフォーマー経験から応用した演技の作法だろうか。ジェンダーフリー男子というアクチュアルな役柄を得た木村慧人は、パフォーマー兼俳優としての豊かな才能を大きく飛躍させようとしている。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu

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