世の乱れを正すために、事態が少しずつ動き出している。それは一条天皇に大きな決断が求められることを意味する。
それぞれが子を為し、年を重ねていく中で、ひとつの命の灯が消えた。
◆独特の子育て
まひろ(吉高由里子)が娘を出産。自分でおむつを変えたりと、子育てに励む。0歳児に『蒙求』を聞かせるまひろ、渋い。
そこにやってきた惟規(高杉真宙)は「おでこが宣孝さまに似ているね」「耳のあたりも」と言う。まひろは「やめて」と咎めるが「娘は父親に似ると言うから」と惟規。父親は道長(柄本佑)なので、似ているとしたら道長なのだけれど、とこちらがハラハラしてしまうが惟規は「無理はしていないよ」と付け加える。もしかして、何か気がついている……? と思わずにはいられないのだけれど、どうなのだろうか。勉強は苦手だけれど、実は鋭くて、そして優しい弟。ずっとまひろの味方でいてほしい、と思わずにはいられない。
そんな娘の名は「賢子(かたこ)」。任地から戻った宣孝(佐々木蔵之介)がつけた。まひろの子なら、きっと賢い子だから、と。さりげないけれど、父親については触れないのはさすが。「機嫌のよいときのまひろに似ている」と言うなど、あくまで「自分の娘」というよりは「まひろの娘」として話をする。頭では分かっていても、これを自然とできるのがすごい。
それにしても宣孝が賢子を見て「いくらでも見ていられる」と言っていたが、作中に登場する赤ちゃんが本当にみなとてつもなくかわいい……。
◆彰子に自身を重ねる一条天皇
一方、道長は相変わらず一条天皇(塩野瑛久)について頭を悩ませていた。定子(高畑充希)を寵愛し続ける一条天皇。しかし、このままでは世が乱れるばかり。
そんな道長に安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)が提案したのは「一帝二后」。ひとりの帝に対して、皇后と中宮を立てるということだ。これは今までに前例がないことになる。
もちろん、一条天皇はこれを拒む。自分の后は定子だけ。一条天皇の中で、后をもうひとり立てれば、定子が悲しむだろう、という思いもあった。
そんな中、一条天皇は彰子(見上愛)のもとを訪れる。自身の笛を聞かせる一条天皇だが、彰子はそちら見ようとしない。なぜ自分のほうを見ないのかと問う一条天皇に彰子は「笛は聴くもので見るものではない」と答える。この答えに、一条天皇はわずかに微笑む。一条天皇は「おもしれー女」が好きなのだ。
そこで、一条天皇は、道長が彰子を中宮にすることを望んでいるがどう思っているのかと問いかける。しかし、彰子は「仰せのままに」と言うだけ。これでは一条天皇の心を掴めない……周りは落胆する。が、一条天皇は父親の言いなりになっている彰子に、自身を重ねていた。それなら、彰子を形のうえで后にしてもいいかもしれない、と心を動かす。何が良い方向に作用するか分からないものだ。
◆結局はまひろが全て
揺れ動く一条天皇の心だったが、無事に彰子の立后の儀式を終えたあと、道長は源明子(瀧内公美)のもとを訪れる。
子どもたちと会ったあと、少し休むと言った道長だが、胸に痛みを覚え、そのまま倒れてしまう。
動かすこともできずに、明子のもとで休養することになるが、そこに訪れたのは倫子(黒木華)。静かに火花がほとばしる倫子と明子。通常、北の方と妾が会うことってあるのだろうか。もうバッチバチである。おまけに、二人が着ている着物が同じ? 似ている? たまたま流行りの柄だったのか、それとも道長が贈ったものなのか……。どちらにしても少し気まずくないだろうか(おまけに冒頭でまひろも似たような柄を着ていたので、やはり流行り柄ということにしておきたい)。
道長の回復を願う倫子と明子。
しかし、道長の意識を引き戻したのはやはりまひろだった。宣孝から道長が危篤を知らされたまひろは、道長の無事を祈っていた。
「まひろ」と呼び、目を覚ます道長。
勝ち負けではないけれど、やはりまひろ、強い。あと、絶対にうわごとで「まひろ」と言っていたと思うのだけれど、いかに。
◆よもすがら……
そして、今回はなんと言っても定子の最期である。姫皇子を出産し、この世を去った定子。
印象的なのは、その前のききょう(ファーストサマーウイカ)とのシーンである。ききょうに支えられていたこと、そばにいてくれたことへの感謝を口にする定子。ききょうはその言葉に感激の表情を浮かべる。
振り返ると、心から定子のことを思っていたのはききょうだけかもしれない。もちろん、一条天皇も定子を愛しているけれど、自分の想いをぶつける割合のほうが大きい。もし、もっと違う方法がとれたなら、定子の負担も違ったかもしれない。
ききょうが、つわりが辛い定子に差し入れた「青ざし」。麦のお菓子だ。そんな菓子を敷いた紙に、定子がききょうへの歌が書く姿がなんとも美しいものであった。
定子が最期に詠んだ歌。
「よもすがら 契りしことを 忘れずば 恋ひむ涙の 色ぞゆかしき」
「一晩中約束したことをお忘れでないなら、死んだあとにあなたは泣いてくれるでしょう。その涙の色を知りたい」
もちろん、一条天皇のことを詠んだ歌なのだろうけれど、死にゆくとき、定子が思い浮かべたのは誰のことだったのだろう。きっと、ききょうのことも心にあったのでは、と思わずにはいられない。
<文/ふくだりょうこ>
【ふくだりょうこ】
大阪府出身。大学卒業後、ゲームシナリオの執筆を中心にフリーのライターとして活動。たれ耳のうさぎと暮らしている。好きなものはお酒と読書とライブ
それぞれが子を為し、年を重ねていく中で、ひとつの命の灯が消えた。
◆独特の子育て
まひろ(吉高由里子)が娘を出産。自分でおむつを変えたりと、子育てに励む。0歳児に『蒙求』を聞かせるまひろ、渋い。
そこにやってきた惟規(高杉真宙)は「おでこが宣孝さまに似ているね」「耳のあたりも」と言う。まひろは「やめて」と咎めるが「娘は父親に似ると言うから」と惟規。父親は道長(柄本佑)なので、似ているとしたら道長なのだけれど、とこちらがハラハラしてしまうが惟規は「無理はしていないよ」と付け加える。もしかして、何か気がついている……? と思わずにはいられないのだけれど、どうなのだろうか。勉強は苦手だけれど、実は鋭くて、そして優しい弟。ずっとまひろの味方でいてほしい、と思わずにはいられない。
そんな娘の名は「賢子(かたこ)」。任地から戻った宣孝(佐々木蔵之介)がつけた。まひろの子なら、きっと賢い子だから、と。さりげないけれど、父親については触れないのはさすが。「機嫌のよいときのまひろに似ている」と言うなど、あくまで「自分の娘」というよりは「まひろの娘」として話をする。頭では分かっていても、これを自然とできるのがすごい。
それにしても宣孝が賢子を見て「いくらでも見ていられる」と言っていたが、作中に登場する赤ちゃんが本当にみなとてつもなくかわいい……。
◆彰子に自身を重ねる一条天皇
一方、道長は相変わらず一条天皇(塩野瑛久)について頭を悩ませていた。定子(高畑充希)を寵愛し続ける一条天皇。しかし、このままでは世が乱れるばかり。
そんな道長に安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)が提案したのは「一帝二后」。ひとりの帝に対して、皇后と中宮を立てるということだ。これは今までに前例がないことになる。
もちろん、一条天皇はこれを拒む。自分の后は定子だけ。一条天皇の中で、后をもうひとり立てれば、定子が悲しむだろう、という思いもあった。
そんな中、一条天皇は彰子(見上愛)のもとを訪れる。自身の笛を聞かせる一条天皇だが、彰子はそちら見ようとしない。なぜ自分のほうを見ないのかと問う一条天皇に彰子は「笛は聴くもので見るものではない」と答える。この答えに、一条天皇はわずかに微笑む。一条天皇は「おもしれー女」が好きなのだ。
そこで、一条天皇は、道長が彰子を中宮にすることを望んでいるがどう思っているのかと問いかける。しかし、彰子は「仰せのままに」と言うだけ。これでは一条天皇の心を掴めない……周りは落胆する。が、一条天皇は父親の言いなりになっている彰子に、自身を重ねていた。それなら、彰子を形のうえで后にしてもいいかもしれない、と心を動かす。何が良い方向に作用するか分からないものだ。
◆結局はまひろが全て
揺れ動く一条天皇の心だったが、無事に彰子の立后の儀式を終えたあと、道長は源明子(瀧内公美)のもとを訪れる。
子どもたちと会ったあと、少し休むと言った道長だが、胸に痛みを覚え、そのまま倒れてしまう。
動かすこともできずに、明子のもとで休養することになるが、そこに訪れたのは倫子(黒木華)。静かに火花がほとばしる倫子と明子。通常、北の方と妾が会うことってあるのだろうか。もうバッチバチである。おまけに、二人が着ている着物が同じ? 似ている? たまたま流行りの柄だったのか、それとも道長が贈ったものなのか……。どちらにしても少し気まずくないだろうか(おまけに冒頭でまひろも似たような柄を着ていたので、やはり流行り柄ということにしておきたい)。
道長の回復を願う倫子と明子。
しかし、道長の意識を引き戻したのはやはりまひろだった。宣孝から道長が危篤を知らされたまひろは、道長の無事を祈っていた。
「まひろ」と呼び、目を覚ます道長。
勝ち負けではないけれど、やはりまひろ、強い。あと、絶対にうわごとで「まひろ」と言っていたと思うのだけれど、いかに。
◆よもすがら……
そして、今回はなんと言っても定子の最期である。姫皇子を出産し、この世を去った定子。
印象的なのは、その前のききょう(ファーストサマーウイカ)とのシーンである。ききょうに支えられていたこと、そばにいてくれたことへの感謝を口にする定子。ききょうはその言葉に感激の表情を浮かべる。
振り返ると、心から定子のことを思っていたのはききょうだけかもしれない。もちろん、一条天皇も定子を愛しているけれど、自分の想いをぶつける割合のほうが大きい。もし、もっと違う方法がとれたなら、定子の負担も違ったかもしれない。
ききょうが、つわりが辛い定子に差し入れた「青ざし」。麦のお菓子だ。そんな菓子を敷いた紙に、定子がききょうへの歌が書く姿がなんとも美しいものであった。
定子が最期に詠んだ歌。
「よもすがら 契りしことを 忘れずば 恋ひむ涙の 色ぞゆかしき」
「一晩中約束したことをお忘れでないなら、死んだあとにあなたは泣いてくれるでしょう。その涙の色を知りたい」
もちろん、一条天皇のことを詠んだ歌なのだろうけれど、死にゆくとき、定子が思い浮かべたのは誰のことだったのだろう。きっと、ききょうのことも心にあったのでは、と思わずにはいられない。
<文/ふくだりょうこ>
【ふくだりょうこ】
大阪府出身。大学卒業後、ゲームシナリオの執筆を中心にフリーのライターとして活動。たれ耳のうさぎと暮らしている。好きなものはお酒と読書とライブ