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14歳少女が50歳男につけ込まれ性的関係を…“衝撃の実話”が示す加害者のおぞましい手口

女子SPA! 2024年8月6日 15時45分

 2024年8月2日より、映画『コンセント/同意』が公開されている。同作は2020年に出版され、フランス中が騒然となった“告発”を綴った書籍を原作としている、つまりは“実話もの”だ。

◆性加害を直接的に描く内容で「R15+」指定に

 先にはっきりと言っておかなければならないのは、本作が性加害を直接的に描いておりR15+指定がされていること。映画の公式サイトにも「ご鑑賞予定の皆様へ」と注意書きがあり、クリックすると「鑑賞されるお客様によっては、フラッシュバックを引き起こすことやショックを受けることが予想されます」などと表示される。

 意図的に強い嫌悪感を抱かせる内容でもあるため、十分な覚悟を持って鑑賞したほうがいいだろう。だからこそ、後述するように未成年者を搾取し支配するグルーミングおよび性加害が、いかに許されざる犯罪なのかを、改めて当事者の視点から“体感”する意義がある。

 その映像作品としてのアプローチへの賛否はあるかもしれないが、冒頭のテロップの「回想録『同意』を一部フィクションを交え映画化した。筆者の声を届けたい、それだけを願い、制作を行った」で示された通りの、作り手の意志を強く感じたのも事実だ。

 さらなる映画の特徴を紹介するが、未成年者への性加害の表現も含まれるので、ご留意のうえでお読みいただきたい。

◆冒頭から示される「責任を押し付ける」醜悪さ

 文学を愛する少女ヴァネッサは、50歳の作家ガブリエル・マツネフから求愛され、14歳になったときに“同意”のうえで性的関係を結んでしまう。

 映画の冒頭から、そのグロテスクさがありありと表れている。15歳のヴァネッサが「川に入ろうとする」まで精神的に追いつめらていると思しき姿が映し出され、そこにマツネフの「君は私の肌なしに私の愛撫やキスなしに生きられるのか?」「なぜ私を傷つける? 私は君にこの上なく誠実だった」など、自身の性加害を正当化し、しかも少女に責任や問題を押し付ける言葉が重なる。

 これは“脅迫”でもある。マツネフにとっては(あるいはヴァネッサもそう信じようとしていたのかもしれない)「光り輝く愛の物語」の終わりを許さない、過去のものにもしないと告げ、別れの手紙を綴った少女の「逃げ場」をなくそうとしているのだから。

◆「絶対的な価値観」を利用する恐ろしさ

 そのほかの場面でも、マツネフからの「いかにも作家らしい文学的な表現の口説き文句」のモノローグが挿入されており、ヴァネッサがその言葉に支配されてしまう感覚がわかるようになっている。

「愛」を語るような言葉の本質はグルーミングそのものなので、観客としては嫌悪感でいっぱいになる。ヴァネッサも潜在的にはそう感じてはいるようにも見えるが、それでも搾取をされ続ける様は、耳を塞ぎ目を逸らしたくなるほどに苦しかった。

 ヴァネッサは文学を愛するどころか、「偉大な愛なんて、本の中でしか知らない」とまで口にする危うさがあった。それを極端に思う人もいるだろうが、精神が不安定な思春期に「絶対的な価値観」を望むのは普遍的なことでもあるだろう。マツネフがまさにその心理につけ込んで」ヴァネッサの“同意”を促して、その後も自由意志を奪っていく様が恐ろしく醜悪に思える。

 現実でグルーミングや性加害を行う者も、子どもが好きなもの、ある種の無邪気さを“利用”し、時には他の価値観との断絶を計っているのかもしれないと、より危機感を覚えるだろう。それも本作の大きな意義だ。

◆性加害者に“居場所”を与え、社会が“正常化”していた

 劇中の多くで描かれるのはおよそ35年前の出来事であり、当時の子どもに性加害を繰り返していたことが明らかなはずのマツネフに社会が“居場所”を与え、小児性愛を“正常化”してしまったことも大きな問題だとも痛感させられる。

 何しろマツネフは、自身の小児性愛嗜好を隠すことなくスキャンダラスな文学作品に仕立て上げており、あろうことか「既存の道徳や倫理への反逆者」として世間的には称賛された人物だったのだ。

 劇中ではヴァネッサの母親がマツネフとの関係を知って「それは愛なんかじゃない。あいつは小児性愛者よ。有名な話だわ」と言い、ヴァネッサが「自分の娘をロリコンと並んで座らせたの!?」と涙ながらに激昂する場面がある。自身の娘を守らなければならない立場の母親でさえも、(さすがに性的関係は問題視するが)マツネフを「近づけたことは許容していた」事実も、また恐ろしい。

 その“正常化”の恐ろしさは、何十年も続けられ、噂もされていたがずっと罪には問われなかった、ジャニー喜多川による性加害の問題などを鑑みても、まったく他人事ではないだろう。

◆書籍や映画にある、社会全体の意識を変革させる力

 原作の反響はとても大きく、これまでマツネフの著書を出版してきた出版社が書籍の販売を中止し、国からマツネフに支払われていた文学者手当も打ち切りが決定した。その原作を映画化したこの『コンセント/同意』も、フランスで公開されると若者を中心に大きな話題を呼び、60万人以上の観客を動員する大ヒットを記録している。

 過去にも、実際のろうあ者福祉施設での性的虐待を描いた小説を原作とする2011年の韓国映画『トガニ 幼き瞳の告発』は、障害者や児童に対する性暴力を厳罰化、また時効の撤廃を定めた「トガニ法」の制定につながり、モデルとなった加害者にさらなる実刑が下されるなど、大きな影響を社会に与えたこともある。

 そのように、書籍や映画は、社会全体の意識を変革させる力がある。この『コンセント/同意』では、性被害を受けた心の傷は大人になってもずっと消えない過酷さも伝えてはいるが、「同じような性加害やグルーミングを続けさせない、繰り返させない」意志も強く感じさせた。その意志を受け取るためにも、ぜひ観てほしいと願う。

<文/ヒナタカ>

【ヒナタカ】
WEB媒体「All About ニュース」「ねとらぼ」「CINEMAS+」、紙媒体『月刊総務』などで記事を執筆中の映画ライター。Xアカウント:@HinatakaJeF

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