7月25日から配信開始されたNetflixシリーズ『地面師たち』(全7話)。2017年に実際に起きた被害額約55億円に上る「積水ハウス地面師詐欺事件」をモデルにした新庄耕氏による同名小説が原作の本作。
リーダーのハリソン山中(豊川悦司)を筆頭に、後ろ暗い過去を持つ交渉役・辻本拓海(綾野剛)、うさんくさい関西弁が特徴的な元司法書士の法律屋・後藤善雄(ピエール瀧)、なりすまし役のキャスティングを行う手配師・稲葉麗子(小池栄子)、土地や物件の情報を収集する情報屋・竹下(北村一輝)、身分証や公的証書の偽造を手掛けるニンベン師・長井(染谷将太)が所属する地面師グループが、不動産企業を罠にかける姿を描いたクライムサスペンスとなっている。
※本記事には同作品の一部ネタバレを含みます。
◆豊川の溢れんばかりの色気が、暴力的なシーンの緩衝材に
Netflixの日本トップ10(テレビ部門、7月22日~28日)で初登場1位に君臨、週間グローバルトップ10(テレビ・非英語部門)でも8位にランクイン。国内外から大きな注目を集めており、しばらくはランキング上位を維持していきそうな本作。これだけ注目を集めている要因として、原作の面白さがあってこそなのは言わずもがな。加えて、こちらも大きな話題を集めたドラマ『エルピス-希望、あるいは災い-』(フジテレビ・関西テレビ系、2022年)の演出を務めた大根仁が脚本と監督を担当していることも挙げられる。
ただ、地面師グループを束ねる謎多き男・ハリソン役を務める豊川の色気の凄まじさに、心を奪われている人が多いことも主要因と言って良い。現在62歳と知って驚いた。
ハリソンは人が殺される瞬間がとにかくお好みなようで、1話終盤で“役目を終えた”なりすまし役の高齢男性がトラックにひかれる映像を見ながら、ウィスキーをクイっといくシーンがある。“ハリソンという登場人物の異常性”を視聴者に紹介するドラマ序盤における重要なシーンだ。豊川は表情としぐさだけで、そのことに説得力を与えていた。豊川の溢れんばかりの色気があったからこそ成立できていたように思う。
◆女性の髪を掴む姿までも官能的で味わい深い
さらには、豊川の色気がバイオレンスなシーンの緩衝材になっていることにも驚いた。6話で住職・川井菜摘(松岡依都美)のなりすまし役を手配できない稲葉に対して、稲葉自身に川井のなりすまし役をやるように指示。頭髪を剃らなければいけないため稲葉は抵抗するが、ハリソンは稲葉の髪を掴んで命令する。「大男が女性の髪を掴む」というただただ暴力的なシーンではあるが、官能的な味わい深いシーンに昇華していた。恐怖を与えられつつも、恐怖ではない違った感情を植え付けられたが、これもまた、豊川の色気があってこそなせる技ではないか。
◆色気だけじゃない、圧倒的な“強キャラ感”
ハリソンに心を奪われる理由として、圧倒的な“強キャラ感”も挙げられる。先述した通り、ハリソンはハードコアなフェチを有しているが、決して荒々しい言動を見せるわけではない。ですます調で話し、感情を高ぶらせることはほとんどなく、常に余裕を持った態度を見せている。ジェントルマンな言動に加え、色気もだだ漏れ。そこに猟奇的な嗜好を持っており、強キャラ感が留まることを知らない。
そんな強キャラ感を遺憾なく見せつけたシーンがある。それは6話でハリソンが、裏切った“ある人物”に制裁を加えるシーンだ。ハリソンは、ウエスタンブーツでその人物の顔を何度も踏みつける、という“最もフィジカルで、最もプリミティブで、そして最もフェティッシュなやり方”を選択。最終的に裏切り者の顔は大破してしまう。
本来、人間に踏みつけられ続けたとしても、顔がグチャグチャになることは容易にイメージできない。だがハリソンが強キャラとしての重厚さを確立してきたからこそ、凄惨な殺害ができたことにも納得感を覚えた。
トヨエツの色気や強キャラ感にしっかりと溺れられる『地面師たち』。今後も多くの人達を魅了していくドラマになるだろう。
<文/望月悠木>
【望月悠木】
フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。Twitter:@mochizukiyuuki
リーダーのハリソン山中(豊川悦司)を筆頭に、後ろ暗い過去を持つ交渉役・辻本拓海(綾野剛)、うさんくさい関西弁が特徴的な元司法書士の法律屋・後藤善雄(ピエール瀧)、なりすまし役のキャスティングを行う手配師・稲葉麗子(小池栄子)、土地や物件の情報を収集する情報屋・竹下(北村一輝)、身分証や公的証書の偽造を手掛けるニンベン師・長井(染谷将太)が所属する地面師グループが、不動産企業を罠にかける姿を描いたクライムサスペンスとなっている。
※本記事には同作品の一部ネタバレを含みます。
◆豊川の溢れんばかりの色気が、暴力的なシーンの緩衝材に
Netflixの日本トップ10(テレビ部門、7月22日~28日)で初登場1位に君臨、週間グローバルトップ10(テレビ・非英語部門)でも8位にランクイン。国内外から大きな注目を集めており、しばらくはランキング上位を維持していきそうな本作。これだけ注目を集めている要因として、原作の面白さがあってこそなのは言わずもがな。加えて、こちらも大きな話題を集めたドラマ『エルピス-希望、あるいは災い-』(フジテレビ・関西テレビ系、2022年)の演出を務めた大根仁が脚本と監督を担当していることも挙げられる。
ただ、地面師グループを束ねる謎多き男・ハリソン役を務める豊川の色気の凄まじさに、心を奪われている人が多いことも主要因と言って良い。現在62歳と知って驚いた。
ハリソンは人が殺される瞬間がとにかくお好みなようで、1話終盤で“役目を終えた”なりすまし役の高齢男性がトラックにひかれる映像を見ながら、ウィスキーをクイっといくシーンがある。“ハリソンという登場人物の異常性”を視聴者に紹介するドラマ序盤における重要なシーンだ。豊川は表情としぐさだけで、そのことに説得力を与えていた。豊川の溢れんばかりの色気があったからこそ成立できていたように思う。
◆女性の髪を掴む姿までも官能的で味わい深い
さらには、豊川の色気がバイオレンスなシーンの緩衝材になっていることにも驚いた。6話で住職・川井菜摘(松岡依都美)のなりすまし役を手配できない稲葉に対して、稲葉自身に川井のなりすまし役をやるように指示。頭髪を剃らなければいけないため稲葉は抵抗するが、ハリソンは稲葉の髪を掴んで命令する。「大男が女性の髪を掴む」というただただ暴力的なシーンではあるが、官能的な味わい深いシーンに昇華していた。恐怖を与えられつつも、恐怖ではない違った感情を植え付けられたが、これもまた、豊川の色気があってこそなせる技ではないか。
◆色気だけじゃない、圧倒的な“強キャラ感”
ハリソンに心を奪われる理由として、圧倒的な“強キャラ感”も挙げられる。先述した通り、ハリソンはハードコアなフェチを有しているが、決して荒々しい言動を見せるわけではない。ですます調で話し、感情を高ぶらせることはほとんどなく、常に余裕を持った態度を見せている。ジェントルマンな言動に加え、色気もだだ漏れ。そこに猟奇的な嗜好を持っており、強キャラ感が留まることを知らない。
そんな強キャラ感を遺憾なく見せつけたシーンがある。それは6話でハリソンが、裏切った“ある人物”に制裁を加えるシーンだ。ハリソンは、ウエスタンブーツでその人物の顔を何度も踏みつける、という“最もフィジカルで、最もプリミティブで、そして最もフェティッシュなやり方”を選択。最終的に裏切り者の顔は大破してしまう。
本来、人間に踏みつけられ続けたとしても、顔がグチャグチャになることは容易にイメージできない。だがハリソンが強キャラとしての重厚さを確立してきたからこそ、凄惨な殺害ができたことにも納得感を覚えた。
トヨエツの色気や強キャラ感にしっかりと溺れられる『地面師たち』。今後も多くの人達を魅了していくドラマになるだろう。
<文/望月悠木>
【望月悠木】
フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。Twitter:@mochizukiyuuki