『わたし史上最高のおしゃれになる!』『お金をかけずにシックなおしゃれ』などの著書があるファッションブロガー小林直子さんが、愛用しているアイテムをご紹介します。
◆できる限り天然繊維のものを選ぶのは
衣服を作るために使われる素材は、大きく分けて天然繊維と化学繊維の2種類があります。
天然繊維は木綿、麻、絹、獣毛、皮革など、草木、あるいは動物の一部を利用して作られた繊維です。一方、化学繊維とは石油由来の繊維であり、ポリエステル、アクリル、ナイロンが代表的なものになります。
その他としては、ポリエステルコットンや、レーヨンシルクなど、天然繊維と化学繊維を混紡して作られた素材、レーヨンやリヨセルなど、木材パルプを溶剤で溶かした糸で作られた素材もあります。
これら素材を使って織地や編地が作られ、それぞれの特徴によって、サテンやポプリン、シャギーやツイードなどというように名付けられ、生地として販売されます。
私は化学繊維よりも天然素材のほうが好きです。年を取れば取るほどこの傾向は強まり、最近では、アウトドアウエアやスポーツウエアなど、化学繊維のほうが適しているウエアで以外については、できる限り天然繊維のものを選ぶようにしています。
理由は、着ていて心地がいいから。化学繊維だと肌がかゆくなったり、真夏は暑すぎたりするからです。
◆昔から好きなのは麻。中でもリネンが大好き
中でも昔から好きなのは麻です。麻とは植物に含まれる繊維の総称。実際、日本で麻と呼ばれる素材となる植物は一種類ではありません。
日本で主に衣服として使用される麻はラミー、リネン、ヘンプです。それぞれイラクサ科の苧麻、アマ科の亜麻、クワ科の大麻という名前の植物で、全く別物です。
日本で売られている素材でよく使われているのが、亜麻から作られたリネンです。フレンチリネン、ベルギーリネンなどが有名です。麻の中でも繊維が細く繊細な素材で、私もこのリネンが大好きです。
◆ラミーとヘンプの製品はそれほど多く売ってはいない
好きが高じて、私はこのリネンの種を庭にまいて、育ててみたことがあります。
園芸にはまっていた30代のころ、英国王立園芸協会の会員でした。会員になると、年に1回、カタログの中から好きな種30種類のプレゼントがありました。その中にリネンの種があったのです。
リネン好きとしては、これは植えてみなければということで注文。その他たくさんの未知の種と一緒にリネンの種がイギリスより送られてきました。
庭に種をまくこと数週間。ひょろひょろとひ弱な茎と、薄い緑色の小さな葉っぱが伸びてきて、その先端に咲いたのは、これまた消え入りそうな薄い水色の可憐な小花でした。これがリネンになるのね、と感動したのもつかの間、ひょろひょろのリネンはうまく育たず、一年草として、その年で枯れて終わってしまいました。
リネンも好きですが、その他の麻も気になります。けれどもラミーとヘンプの製品はそれほど多く売ってはいません。特に2000年より前は、ヘンプの服など見たことがありませんでした。
しかし麻を探していたある年、ラミーと記載されているインポートのサファリジャケットを発見したのです。早速買ったラミーのサファリジャケットは、適度な硬さと耐久性のある素材でできており、色、デザインともお気に入りの一着だったので、すり切れるまで着続けました。
◆ヘンプは今サステナビリティから注目されている素材
最後にヘンプです。実はこのヘンプ、今、サステナビリティの観点から大変注目されている素材なのです。
理由は、成長が早いこと、農薬や化学肥料が不要、または少量で済むこと、荒れ地でも育つことなど。ヘンプの重要性については、edXのサステナブルファッションのコースでも特に強調されていました。
日本に木綿が輸入される前に衣服に使われていたのはヘンプ(大麻)です。日本では長い間使われてきた馴染みがある素材です。
それが1948年、GHQにより大麻禁止法が施行され、大麻の所持、栽培、使用がすべて禁止されました。その影響もあって、ヘンプ素材の衣服は、長い間、日本から消えていました。
しかしこれからはヘンプです。麻好きな私としてはぜひ着てみたい。そう思っていろいろ見ていたのですが、まだまだ市場に多く出回ってはいないこと、またあったとしても高価なものが多いことなどから、ずっと保留にしていました。
そんな折、いつもながめていた生地屋さんで、お勧め素材としてヘンプが出ていることに気付きました。それならば、生地を買って何か作りましょう、ということで今回、巻きスカートを作製してみました。
◆猛暑の日々には麻が涼しい
初めて触るヘンプは、感触としてはリネンとほとんど変わりありません。しなやかで、光沢があり、扱いやすい生地でした。
作ったのは、家の中と、ちょっと近所への買い物時に、レギンスの上から履きたいなと思った巻きスカート。久々にデザイン、パターン、縫製と全部やってみました。
まだまだ高価な素材のヘンプですが、生地を買って自分で作る分には手が届くと思います。何より猛暑の日々には上下とも麻が涼しい。
環境負荷が少なく、真夏でも涼しく、長もちし、美しく、洗濯するほどにしなやかになり着やすくなる。しわになりやすいという欠点があってもなお、麻はやっぱり愛おしく素敵な素材なのです。
◆筆者私物:ヘンプ40番手平織りソフト(有限会社福田織物)
<文/小林直子>
【小林直子】
ファッション・ブロガー。大手ブランドのパターンナー、大手アパレルの企画室を経て独立。現在、ファッション・レッスンなどの開催や、ブログ『誰も教えてくれなかったおしゃれのルール』などで活躍中。著書『わたし史上最高のおしゃれになる!』など。
◆できる限り天然繊維のものを選ぶのは
衣服を作るために使われる素材は、大きく分けて天然繊維と化学繊維の2種類があります。
天然繊維は木綿、麻、絹、獣毛、皮革など、草木、あるいは動物の一部を利用して作られた繊維です。一方、化学繊維とは石油由来の繊維であり、ポリエステル、アクリル、ナイロンが代表的なものになります。
その他としては、ポリエステルコットンや、レーヨンシルクなど、天然繊維と化学繊維を混紡して作られた素材、レーヨンやリヨセルなど、木材パルプを溶剤で溶かした糸で作られた素材もあります。
これら素材を使って織地や編地が作られ、それぞれの特徴によって、サテンやポプリン、シャギーやツイードなどというように名付けられ、生地として販売されます。
私は化学繊維よりも天然素材のほうが好きです。年を取れば取るほどこの傾向は強まり、最近では、アウトドアウエアやスポーツウエアなど、化学繊維のほうが適しているウエアで以外については、できる限り天然繊維のものを選ぶようにしています。
理由は、着ていて心地がいいから。化学繊維だと肌がかゆくなったり、真夏は暑すぎたりするからです。
◆昔から好きなのは麻。中でもリネンが大好き
中でも昔から好きなのは麻です。麻とは植物に含まれる繊維の総称。実際、日本で麻と呼ばれる素材となる植物は一種類ではありません。
日本で主に衣服として使用される麻はラミー、リネン、ヘンプです。それぞれイラクサ科の苧麻、アマ科の亜麻、クワ科の大麻という名前の植物で、全く別物です。
日本で売られている素材でよく使われているのが、亜麻から作られたリネンです。フレンチリネン、ベルギーリネンなどが有名です。麻の中でも繊維が細く繊細な素材で、私もこのリネンが大好きです。
◆ラミーとヘンプの製品はそれほど多く売ってはいない
好きが高じて、私はこのリネンの種を庭にまいて、育ててみたことがあります。
園芸にはまっていた30代のころ、英国王立園芸協会の会員でした。会員になると、年に1回、カタログの中から好きな種30種類のプレゼントがありました。その中にリネンの種があったのです。
リネン好きとしては、これは植えてみなければということで注文。その他たくさんの未知の種と一緒にリネンの種がイギリスより送られてきました。
庭に種をまくこと数週間。ひょろひょろとひ弱な茎と、薄い緑色の小さな葉っぱが伸びてきて、その先端に咲いたのは、これまた消え入りそうな薄い水色の可憐な小花でした。これがリネンになるのね、と感動したのもつかの間、ひょろひょろのリネンはうまく育たず、一年草として、その年で枯れて終わってしまいました。
リネンも好きですが、その他の麻も気になります。けれどもラミーとヘンプの製品はそれほど多く売ってはいません。特に2000年より前は、ヘンプの服など見たことがありませんでした。
しかし麻を探していたある年、ラミーと記載されているインポートのサファリジャケットを発見したのです。早速買ったラミーのサファリジャケットは、適度な硬さと耐久性のある素材でできており、色、デザインともお気に入りの一着だったので、すり切れるまで着続けました。
◆ヘンプは今サステナビリティから注目されている素材
最後にヘンプです。実はこのヘンプ、今、サステナビリティの観点から大変注目されている素材なのです。
理由は、成長が早いこと、農薬や化学肥料が不要、または少量で済むこと、荒れ地でも育つことなど。ヘンプの重要性については、edXのサステナブルファッションのコースでも特に強調されていました。
日本に木綿が輸入される前に衣服に使われていたのはヘンプ(大麻)です。日本では長い間使われてきた馴染みがある素材です。
それが1948年、GHQにより大麻禁止法が施行され、大麻の所持、栽培、使用がすべて禁止されました。その影響もあって、ヘンプ素材の衣服は、長い間、日本から消えていました。
しかしこれからはヘンプです。麻好きな私としてはぜひ着てみたい。そう思っていろいろ見ていたのですが、まだまだ市場に多く出回ってはいないこと、またあったとしても高価なものが多いことなどから、ずっと保留にしていました。
そんな折、いつもながめていた生地屋さんで、お勧め素材としてヘンプが出ていることに気付きました。それならば、生地を買って何か作りましょう、ということで今回、巻きスカートを作製してみました。
◆猛暑の日々には麻が涼しい
初めて触るヘンプは、感触としてはリネンとほとんど変わりありません。しなやかで、光沢があり、扱いやすい生地でした。
作ったのは、家の中と、ちょっと近所への買い物時に、レギンスの上から履きたいなと思った巻きスカート。久々にデザイン、パターン、縫製と全部やってみました。
まだまだ高価な素材のヘンプですが、生地を買って自分で作る分には手が届くと思います。何より猛暑の日々には上下とも麻が涼しい。
環境負荷が少なく、真夏でも涼しく、長もちし、美しく、洗濯するほどにしなやかになり着やすくなる。しわになりやすいという欠点があってもなお、麻はやっぱり愛おしく素敵な素材なのです。
◆筆者私物:ヘンプ40番手平織りソフト(有限会社福田織物)
<文/小林直子>
【小林直子】
ファッション・ブロガー。大手ブランドのパターンナー、大手アパレルの企画室を経て独立。現在、ファッション・レッスンなどの開催や、ブログ『誰も教えてくれなかったおしゃれのルール』などで活躍中。著書『わたし史上最高のおしゃれになる!』など。