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「推しを語りたいのに『やばい!』しかでてこない…」推し活を充実させるコツとは?

女子SPA! 2024年8月27日 15時46分

「もうとにかくやばい」「やばすぎてやばい」。自分の中で、何かとんでもないことが起きているのに、“何か”がまったく伝わらない。推しを語るあなたの語彙、やばくないですか?

◆推しのために語彙力を身につける

『推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しか出てこない 自分の言葉でつくるオタク文章術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、あなたの胸の内を的確かつ斬新に表現するための文章読本です。

推しがあなたに与えた感動は、あなたの手のひらでとけた初雪の涼やかさときらめきなのでしょうか、初夏の木漏れ日のような清々しさなのでしょうか。あなたにとって最高に尊い推しを、「やばい!」の連呼で片付けてしまうのは、あまりにも切ないですよね。

全細胞がうずき、人生を捧げる覚悟の推し。自分の言葉を見つけると、推しのさらなる魅力も発見できるのです。簡単なコツを覚えて、推しライフをもっと充実させてみませんか。

◆自分だけの感情を探そう

推しを語るときに一番大切なことは、何だと思いますか。それは「自分だけの感情」と本書。

文才も知識も必要なく、ただあなた自身がどう感じたか、それを素直に語るだけでいいのです。なるほど!と意欲がわいてきましたか?

ところが、世の中には「ありきたりな言葉」があふれていて、私達の心も無意識にそれらに支配されているのです。

・「泣ける」

・「やばい」

・「考えさせられた」

本書によると、この3つが典型的な「ありきたりな言葉」です。喜怒哀楽のすべての感情において、あなたがつい「やばい」を使ってしまうのも、世の中に「ありきたりな言葉」が蔓延しているからにほかなりません。

この3つの言葉をいったん忘れましょう。「やばい」と発しそうになったら、「やばい」の中に本当はどんな感情が潜んでいるのか、じっくりと探してみるのです。

推しの歌を聴いていると、自分の輪郭(りんかく)がとけて光と融合しそうな心地になるとか、大げさでもいいのです。感情に色や香りをつけるようなイメージで言葉を見つけてみてください。

◆読解力や観察力より妄想力

推しについて発信したい。この欲求の裏には、他人に知ってほしい、という願望があります。「自分だけの感情」だけなら日記にしたためればいいのですが、ブログやSNSで他人に知らしめるには、文章を工夫する必要があります。

工夫=面倒、と尻込みする人もいるかもしれません。難しく考えず、自分の感情をときほぐしていけばいいのです。

たとえば「泣ける」の代わりに、「ふるえた」という言葉を使うとしましょう。「×××を観て心がふるえた」。では、どのように心がふるえたのでしょう。

「ふるえた」という言葉から連想すると、朝露に葉が「ふるえた」とか、寒さで体が「ふるえた」など、バリエーションがあることに気づくはずです。

「スプーンでちょっとつついたゼリーがふるえるように」などでもいいのです。あなたの妄想力を総動員して、心の動きを独自に読みといていきましょう。最初は確かに面倒かもしれませんが、慣れてくれば楽しみに変わってくるはずです。

◆なぜ推しを言語化するのか

今の時代、推しとファンが交流できる場が増えてきました。だからこそ、言葉でも差別化をはかりたいと思いませんか。あなたの心を砕いて綴った文章は、そのままあなたを飾る個性になります。

LINEやメールなど、文面だけで相手の様子が浮かび上がってきた経験はありませんか。自然と、言葉には気持ちがあらわれるのです。

家族、友達、そして推しへ。見えないあなたの姿を言葉で表現するなら、できるだけよい印象にしたいですよね。しかも姿や名前なしに、ブログやSNSやファンレターを読んだだけで推しがあなたを特定してくれたら、それこそやばいくらいうれしくないですか。

語彙力をみがくのは、あなた自身をみがくのと同じことなのです。

◆「好き」を記録しておくために

「『好き』は、一時的な儚(はかな)い感情である」と本書。そんなことはない!とあなたは断言できるでしょうか。できないですよね。でもそれは「悲しいことでもなんでもなくて、そういうものなのです」。

何らかの事情で、推しが推しでなくなったとき、しばらくは食欲もなくひきこもるかもしれません。でもほとぼりが冷めれば次の推しができて、また熱狂的な日々が幕をあけます。

「好き」の気持ちが移ろいでいくから、人は悲しみから立ちなおり、生きていけるのでしょう。

ただ、「『好き』が揺らいで焼失したとしても、一度『好き』を言葉にして残しておけば、その感情は自分の中に残り続ける」と本書は言うのです。

推しもあなたの宝物ですが、推しを思うあなたの気持ちもまた唯一無二の宝物なのです。好きだった気持ちは、やがて必ずあなたを救います。

いつしか過去を振り返ったとき、あなただけの言葉で推しや好きな気持ちが語られていたとしたら、どんなにか素敵でしょうか。

ある意味、推しは自分を映す鏡なのかもしれません。あなたに、愛に満ちた世界をおしえてくれた推し。推しをとおして、自分の新たな可能性、言葉や文章の魅力を知ってみませんか。

<文/森美樹>

【森美樹】
小説家、タロット占い師。第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『主婦病』(新潮社)、『私の裸』、『母親病』(新潮社)、『神様たち』(光文社)、『わたしのいけない世界』(祥伝社)を上梓。東京タワーにてタロット占い鑑定を行っている。X:@morimikixxx

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