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松崎しげるの25歳息子は2世俳優の中でもかなりの“純朴”タイプ?小劇場で下積みをおくる泥臭さがいい!

女子SPA! 2024年8月20日 8時47分

 単なる2世俳優がいれば、そうではない独自の魅力を持った2世俳優もいる。

 松崎しげるの息子である俳優の松谷優輝は、間違いなく後者のタイプだと思う。まだまだ出演作品は多くないが、でも着実に歩を進めようとする泥臭さを感じるのだ。

 イケメン研究をライフワークとする“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、単なる2世俳優ではない松谷優輝の魅力を考える。

◆スター松崎しげるの登場

 2024年8月1日に放送された『ダウンタウンDX』(日本テレビ)の「新旧2世芸能人大論争SP」最初のテーマ「2世でちょっと損しました」が面白かった。

 松崎しげるを父に持つ俳優の松谷優輝は、卒業式の入場曲が「愛のメモリー」だったというのだ。「愛のメモリー」は1977年にリリースされたいわずもがなの松崎ヒットナンバー。

 息子である松谷のこのエピソードを聞いて、筆者もちょっと既視感がある。というのも、筆者にとっては日本大学芸術学部の先輩にあたる松崎が、(松谷とは反対に)日芸入学式直後の式典で代表曲を熱唱しながら入場する姿を好奇の眼差しで眺めたことがあるからである。

 確か音源はカラオケ。なのに生バンド演奏を従えたかのように豊かな声量が会場内を満たす。ステージを目指して歩きながら歌唱する、スター松崎しげるの登場を見送る体験は、すごく贅沢なものだったと改めて思う。誰でも知る自分の父親の曲が卒業式でかかるなんて、そりゃむず痒いだろう。

◆誰でも楽しめる演劇を届けるエンタメ集団

 父・松崎しげるの出身校である日芸つながりだと、松崎と同じオフィスウォーカーに在籍しながら、松谷が所属する劇団ショーGEKIは、日芸出身者を中心に1999年に旗揚げされた。演劇世界の老舗のひとつである。

 同劇団が主に公演を行うのが、本多劇場グループの「劇」小劇場。いわゆる小劇場演劇シーンは、ゼロ年代に昔ながらの新劇の翻訳劇から現代口語演劇がトレンドになった。2010年代はそれがデフォルト化しながら、2020年代まであらたな表現性が模索されている。

 ショーGEKIは、そうした小劇場シーンの変遷の中で25年近く活動を続けてきたが、彼らが志向する演劇世界はかならずしもシーンのトレンド感に左右されるものではない。迫力ある殺陣からお笑いまで幅広く誰でも楽しめる演劇を届けるエンタメ集団なのだ。

◆単なる2世俳優ではない泥臭さ

 その意味では、劇団というより演劇ユニットのノリに近いかもしれない。フレキシブルな演劇集団だからこそ、松谷のような新人俳優が、才能を発揮できる場所を自由に模索し、足場を固められる。

 松谷の俳優デビュー作は『ブレイブ -群青戦記-』(2021年)。同作公開時に父親が松崎しげるであることを公表している。松崎しげるの息子というブランド力は魅力的だが、でもだからといって彼が単なる2世俳優ではないことは足場を置く劇団の確かな地盤から明らかだろう。

「新旧2世芸能人大論争SP」では他に西城秀樹の息子である歌手の木本慎之介が出演していた。松谷の隣に座り、スタジオではもっとも2世的なきらきら感をまとっていた。松谷はもっと純朴というのかな。小劇場演劇で鍛練する泥臭さみたいなものが、彼特有の好感度につながっていると思う。

◆今後の飛躍は十分あり得る

 では、泥臭い好感度を俳優としての飛躍としてどう昇華させていけばいいのか。日本の芸能界では基本的に大手芸能事務所に所属していなければ、メジャーの映画やテレビドラマ作品に出演することはなかなか大変なことだ。

 ライバル俳優とのどんぐりの背比べ的な競争をうまく戦い抜けない若手を筆者は何人も見てきた。大手のオーディションを受けるには年齢制限だってある。それでも俳優を続けるなら、小劇場演劇のフィールドに身を置くことは戦略的だ。

 つまり、小劇場で着実に演技を磨くことで、戦い方次第ではメジャー作品への進出も夢ではない。すべては戦略と地道な努力次第。変にひけらかすわけでもなく、単純に自分は松崎しげるの息子なのであるという強みをごく自然にアピールすることは大きなアドバンテージ。松谷の今後の飛躍は十分あり得る。

◆父との共演作で演じた2.5次元俳優

『スクール☆ウォーズ ~泣き虫先生の7年戦争~』(TBS、1984年)など、こてこての骨太ドラマを作風とする大映テレビ制作のドラマ『噂の刑事トミーとマツ』(TBS、1979年~1982年)で松崎しげるが俳優デビューした頃から40年以上を経て、俳優となった息子との共演作『あなたもきっと騙される』(BS-TBS、2021年)がある。これが不思議と興味深い作品なのだ。

 同作は、消費者庁提供特別ドラマで、松崎扮する演劇プロデューサーに騙されたことをきっかけに、逆に騙し返してやる2.5次元俳優役を松谷が演じた。松谷の役柄があまりに象徴的ではないか?

 今や演劇世界で身を立てるなら、とりもなおさず2.5次元俳優としての成功か一番手っ取り早い。小劇場演劇の俳優である松谷がドラマの世界で別フィールドの演劇人を演じること。もし松谷優輝が、2.5次元俳優なら? という世界線を考えるのも今後の飛躍を見定める上では有益だろう。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu

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