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「残業禁止」がハラスメント!?承認欲求おばけの部下を気遣った結果…

女子SPA! 2024年8月23日 8時47分

 会社での地位を利用して嫌がらせを行うパワハラをはじめ、SNSでもトレンド入りしたマタハラなど、組織内にはさまざまなハラスメントが潜んでいます。

 部下への接し方に頭を悩ませる上司も多い中、アパレルメーカーで係長を務める萌さん(仮名・35歳)は「何でもハラスメントと言われると困ってしまう」と言います。萌さんは部下から「ホワイトハラスメント」被害を訴えられたことがあるそうで……。

◆難しい仕事を与えないのは「ハラスメント」?

 4年ほど前、係長に昇進した萌さんは自身の考えるマネジメントの心得をこう話します。

「業務をいかに効率的かつ無駄なコストを使わずに完遂するかを常に考えて回しています。その中で部下一人ひとりの能力を見極め、彼・彼女たちが成長したときの体制も見据えながら、適切に仕事を割り振っているつもりです」

 部下の成長は本人の給与やモチベーションが上がるだけでなく、「組織においても大きな貢献」と萌さん。そのため、特性やキャリアビジョンも踏まえながら、個々に合わせたスキルアップの環境を用意しているとのこと。

「ドラマ『9ボーダー』(TBS系/2024年4月期)をきっかけに、ホワイトハラスメントーーつまり難しい仕事などを与えないのもハラスメントだと話題になりましたが、まさか私も非難される側になるなんて思いもしませんでした」と、職場での出来事を語ってくれました。

◆「認められたい」女性社員が起こしたトラブル

 部下の結佳さん(仮名・34歳)は、難関私立大学卒で華々しいキャリアを持つ女性。専門性の高い仕事をこなす姿から「経験から積み上げてきた確固たる自信を感じる」と萌さんは言います。

 一方で、その自信からか異なる意見を聞き入れられなかったり、自身が納得できるまで議論をやめなかったりと、周囲を困らせることもあったそう。

「会社のことを考えれば、自身の提案よりも良い意見が出てきたときに発展させる議論ができるはずです。ですが彼女の場合は、『自分が認められる』ことに必死になってしまう傾向があるように見えました」

◆適切な配置のはずが、本人は納得せず

 そして新規プロジェクトの立ち上げ時、参加を熱望していた結佳さんを会社はメンバーに選びませんでした。代わりに選出されたのは、結佳さんと同期入社だった別の女性。

「結佳さんとその女性のスキルは同じくらいです。ただ、彼女は周囲の動きをよく見ているし改善につなげる努力もできた。このプロジェクトに参加してもらうことで、大きな成長が見込めるというのが役職者全員の見解でした」

 また、他の仕事も進行している結佳さん。同時にできると本人は意気込んでいましたが、残業が増えることは必至。さらに、高いプライドで周囲と揉めるのではなく調和できるようになってほしいため、優秀な社員と触れ合うことができる既存のプロジェクトへ加えることにしたのです。

◆「昇給の機会を与えてもらえない」「正しく評価されてない」

 しかし、そんな上司たちの思いは届きませんでした。同期の女性が学歴もキャリアも年齢も結佳さんより下だったことで、「私だけ昇給の機会を与えてもらえない」「ハラスメントじゃないか?」と周囲にこぼしていたそう。

 さらに、参加したプロジェクトでも2回ほど続けて提案を却下されたことから「後から入ったからわかってないと思われている」「正しく評価してもらえる環境じゃない」と、ぞんざいな振る舞いが目につくようになったそうです。さらに、より認めてもらおうと必死になったのか、勝手に業務を増やし残業が増える日々。

「これでは彼女の精神も身体もまいってしまう。そうなる前にと必要のない業務はせず、残業はしないようにと伝えたのですが、それもまた『成長する機会を奪われている』と捉えてしまったようです。

 結佳さんは未熟ではあるもののよい視点を持っていたので、周囲がフォローしましたが、彼女の受け止め方が変わることはありませんでした」

◆会社組織では「スキル」以外の点も大事

 ホワハラで注目された「仕事を与えない」といった上司の振る舞い。個人的な感情を持ち込んだり、人間性を否定したり、部下にとって不利益になるとわかってやる等の行為は、もちろんハラスメントに値するでしょう。

 一方で、結佳さんのように、スキルはあってもその他の点を踏まえると任せられないと判断することはあります。引き取ったほうが総体的なコストダウンにつながるようなら、そうすることも。

 会社によって異なる部分はありますが、一概にハラスメントだと思い込んでしまうと、逆に成長の機会や上司の期待を手放す可能性もあるかもしれません。

◆客観的に見て疑問があれば、悩む前に打ち明けよう

  受け手の感情を重視することも大事ですが、適切なマネジメントかそうではないかは当事者が判断しにくいものです。

 ハラスメントではなくても、つらい、悲しいと感じるときは率直な思いを上司にぶつけて本心を聞いてみると、認識とは異なるものが見えてくるのかも。

<文/はつ>

【はつ】
各々が遭遇した小説より奇なる日常にスポットをあてるフリーライター。趣味は心理学的観点からの人間観察と全国の赤提灯巡り

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