「働く人のための簡単時短レシピ」をInstagram(@moaiskitchen)で発信し、フォロワー104万人を越えるもあいかすみさん。
食品メーカー勤務時代のメニュー開発などの経験を生かし、料理研究家として活躍しています。ほんわかとした雰囲気のもあいさんですが、料理研究家として独立するまでは、会社員をしながらフリースタイルラップに挑戦したり、動画編集技術を学んだりとチャレンジを重ねていたのだそう。
また、人気YouTuberのヒカルさんの“いとこ”という意外な一面もあります。もあいさんのこれまでの軌跡や、ヒカルさんから受けた影響などについて聞きました。
◆会社勤めに物足りなさを感じ、ラッパーに挑戦
――Instagramを始める前はどんなお仕事をしていたのですか?
もあいかすみさん(以下、もあい):食品メーカーに勤めていました。栄養学が学べる大学に通っていましたし、就活の際に自分の軸について考えたとき、子どもの頃から料理が好きだったので「食を通して人に幸せを届けたいな」と思ったんです。
会社では、主に飲食店向けの業務用の商品の営業をしていました。自社の商品を使ったメニューを開発して、飲食店向けに「この商品を使った、こんなメニューはいかがでしょうか」と提案をするんです。飲食チェーン店は4月と10月にグランドメニューの改定があるので、1つの担当店につき年に2回大きなプレゼンがありました。クライアントのテキストキッチンを利用して、実際に料理を作って食べていただきながら提案していました。
――会社員時代の仕事は大変でしたか?
もあい:レシピを考えたりするのは好きなので、苦に思ったことはほとんどないんです。主に外食チェーン店を担当していたので、グランドメニュー改変時期以外は比較的、時間の余裕がありました(笑)。
入社3年目くらいにはルーティーンワークが続いてこのままでもいいのかな?という思いが強くなってきて「この会社に一生勤める人生は、物足りないかもしれない」と思い始めました。それで何でもいいから始めたくて、友達とフリースタイルラップバトルにエントリーしてみたんです。
◆ラップバトルに挑戦したことも
――どうしてフリースタイルラップだったのですか?
もあい:とにかく「今の人生が嫌だ」という気持ちが強くて、何か変えたかったんだと思います。音楽経験はまったくなかったのですが、当時『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日)というラップバトルの深夜番組が大好きで、日本語遊びがすごく面白くて。なぜか「これなら自分にもできるかも」と思って、勢いで大会に出て初めて人前でラップをしたんですが、何もできず負けました(笑)。
――会場ではどんな反応だったのですか?
もあい:普通の会社員の女子がラップをやっているのをすごく珍しがられて、主催者の方に「どうして来たの?」と聞かれました。「人生つまんなくて」といろいろ説明したら面白がられて、「イベントを手伝ってよ」と言ってもらって、YouTubeのラップバトルに出させてもらったりするようになりました。
そこでイベント会社の社長さんと知り合ったのですが、その方が私の抱いていた社長像と違って、いい意味ですごく“普通の人”だったんです。それまでは、サラリーマンという生き方しか自分の中になかったのですが、「こういう人が独立して成功しているなら、私も挑戦してみようかな」と思うようになりました。
ただ、ラップは全然向いていないので、自分に向いていることを考えた結果、料理で独立を目指すことを決めました。
◆「何でもいいから実績を作ろう」と始めたInstagram
――Instagramでの発信を始めたのはなぜだったのでしょうか。
もあい:最初は、起業して食品メーカーのパンフレットを作る会社をやりたいと思っていたんです。でも何の実績もない私が「パンフレットを作らせてください」と言っても誰も相手にしてくれないと思ったので、「何でもいいから実績を作ろう」と思って始めたのがInstagramでした。簡単なレシピと料理写真を投稿して、「料理の写真が上手い人と思ってもらえたら仕事につながるかな」と思って、フォロワー1万人を目標にして始めました。2019年4月1日から本格的にスタートして、毎日投稿を今も欠かさず続けています。
――フォロワー数を伸ばすために工夫したことはありますか?
もあい:料理写真のカメラ教室に通ったり、カメラマンの方に撮影を教えてもらいに行ったりしていました。前職の先輩で、料理系インフルエンサーとして活躍されている方がいたので、土日はその方の料理アシスタントをさせてもらいながら、どうすればうまいくか相談をさせてもらいました。
2020年にレシピ動画を投稿するようになってから、フォロワー数が伸びるようになりました。クラシルさんなどのスマホで見られるレシピ動画が流行りだしたころで、個人でレシピ動画を投稿している人があまりいなかったんです。
――動画制作は自分でやっていたのですか?
もあい:動画編集を学びながら自分でやっていたので、1分の動画を作るのに5時間くらいかかっていました(笑)。ちょうどその頃、会社を退職して有休消化の期間があったので、高校時代の同級生で映像制作会社をやっている友人に動画編集を教えてもらっていました。ラップをやっているのを知ってくれていて「面白いことやってるね」とDMをくれたんです。
◆行動力の秘訣は「覚悟」
――やりたいことがあっても踏み出せない人は多いと思うのですが、もあいさんはなぜチャレンジできたのだと思いますか?
もあい:覚悟の問題なのかなと思っています。私も滅多にしないのですが、覚悟をしたことは絶対にやり切ろうと思っています。私の場合は、Instagramの毎日投稿を始める覚悟期間として1か月設けました。
――その期間は、どんなことをするのですか?
もあい:やりたいことを人に話すようにしています。「これをやりたいから見ててほしい」と人にたくさん話して結局やらないとダサい人になってしまうので、後に引けない状況を作るようにしています。
昨年、管理栄養士の資格を取ったときも、久々にこの“背水の陣戦法”を使いました。資格を取ることを自分から周囲に言いふらしていると、「合格したらこういう仕事をお願いできるから頑張ってね」と期待してもらえることもあるので、それを裏切らないよう一層頑張って勉強するようになりました。
◆親戚のYouTuber、ヒカルに学んだこと
――人から「それはやめたほうがいい」と言われたら、どうしたらいいと思いますか?
もあい:誰かに言われてやめるぐらいのことなら、結局は続かないしリスクをとれないと思うんです。それを上回ってやりたいことの方が熱量を持って挑めると思うので、人の言うことは聞かなくてもいいんじゃないかなと思います。
――もあいさんは、親戚であるYouTuberのヒカルさんと数年前に再会したそうですが、何か影響は受けましたか?
もあい:ヒカルさんの「熱量の高さを維持し続けているところ」をすごくリスペクトしています。「今つらいから頑張ろう」、マイナスをプラスにするための行動は比較的取りやすいと思うんです。でも、すごく充実している状態の人がさらに充実するためにエネルギーを使うのは、なかなか難しいと感じます。
ヒカルさんは、YouTubeがずっとうまくいっているのに、さらに上、さらに上に、とモチベーションを下げず常に全力で走り続けているのが本当にすごいなと思いますし、見習いたいです。
<取材・文/都田ミツコ>
【都田ミツコ】
ライター、編集者。1982年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。
食品メーカー勤務時代のメニュー開発などの経験を生かし、料理研究家として活躍しています。ほんわかとした雰囲気のもあいさんですが、料理研究家として独立するまでは、会社員をしながらフリースタイルラップに挑戦したり、動画編集技術を学んだりとチャレンジを重ねていたのだそう。
また、人気YouTuberのヒカルさんの“いとこ”という意外な一面もあります。もあいさんのこれまでの軌跡や、ヒカルさんから受けた影響などについて聞きました。
◆会社勤めに物足りなさを感じ、ラッパーに挑戦
――Instagramを始める前はどんなお仕事をしていたのですか?
もあいかすみさん(以下、もあい):食品メーカーに勤めていました。栄養学が学べる大学に通っていましたし、就活の際に自分の軸について考えたとき、子どもの頃から料理が好きだったので「食を通して人に幸せを届けたいな」と思ったんです。
会社では、主に飲食店向けの業務用の商品の営業をしていました。自社の商品を使ったメニューを開発して、飲食店向けに「この商品を使った、こんなメニューはいかがでしょうか」と提案をするんです。飲食チェーン店は4月と10月にグランドメニューの改定があるので、1つの担当店につき年に2回大きなプレゼンがありました。クライアントのテキストキッチンを利用して、実際に料理を作って食べていただきながら提案していました。
――会社員時代の仕事は大変でしたか?
もあい:レシピを考えたりするのは好きなので、苦に思ったことはほとんどないんです。主に外食チェーン店を担当していたので、グランドメニュー改変時期以外は比較的、時間の余裕がありました(笑)。
入社3年目くらいにはルーティーンワークが続いてこのままでもいいのかな?という思いが強くなってきて「この会社に一生勤める人生は、物足りないかもしれない」と思い始めました。それで何でもいいから始めたくて、友達とフリースタイルラップバトルにエントリーしてみたんです。
◆ラップバトルに挑戦したことも
――どうしてフリースタイルラップだったのですか?
もあい:とにかく「今の人生が嫌だ」という気持ちが強くて、何か変えたかったんだと思います。音楽経験はまったくなかったのですが、当時『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日)というラップバトルの深夜番組が大好きで、日本語遊びがすごく面白くて。なぜか「これなら自分にもできるかも」と思って、勢いで大会に出て初めて人前でラップをしたんですが、何もできず負けました(笑)。
――会場ではどんな反応だったのですか?
もあい:普通の会社員の女子がラップをやっているのをすごく珍しがられて、主催者の方に「どうして来たの?」と聞かれました。「人生つまんなくて」といろいろ説明したら面白がられて、「イベントを手伝ってよ」と言ってもらって、YouTubeのラップバトルに出させてもらったりするようになりました。
そこでイベント会社の社長さんと知り合ったのですが、その方が私の抱いていた社長像と違って、いい意味ですごく“普通の人”だったんです。それまでは、サラリーマンという生き方しか自分の中になかったのですが、「こういう人が独立して成功しているなら、私も挑戦してみようかな」と思うようになりました。
ただ、ラップは全然向いていないので、自分に向いていることを考えた結果、料理で独立を目指すことを決めました。
◆「何でもいいから実績を作ろう」と始めたInstagram
――Instagramでの発信を始めたのはなぜだったのでしょうか。
もあい:最初は、起業して食品メーカーのパンフレットを作る会社をやりたいと思っていたんです。でも何の実績もない私が「パンフレットを作らせてください」と言っても誰も相手にしてくれないと思ったので、「何でもいいから実績を作ろう」と思って始めたのがInstagramでした。簡単なレシピと料理写真を投稿して、「料理の写真が上手い人と思ってもらえたら仕事につながるかな」と思って、フォロワー1万人を目標にして始めました。2019年4月1日から本格的にスタートして、毎日投稿を今も欠かさず続けています。
――フォロワー数を伸ばすために工夫したことはありますか?
もあい:料理写真のカメラ教室に通ったり、カメラマンの方に撮影を教えてもらいに行ったりしていました。前職の先輩で、料理系インフルエンサーとして活躍されている方がいたので、土日はその方の料理アシスタントをさせてもらいながら、どうすればうまいくか相談をさせてもらいました。
2020年にレシピ動画を投稿するようになってから、フォロワー数が伸びるようになりました。クラシルさんなどのスマホで見られるレシピ動画が流行りだしたころで、個人でレシピ動画を投稿している人があまりいなかったんです。
――動画制作は自分でやっていたのですか?
もあい:動画編集を学びながら自分でやっていたので、1分の動画を作るのに5時間くらいかかっていました(笑)。ちょうどその頃、会社を退職して有休消化の期間があったので、高校時代の同級生で映像制作会社をやっている友人に動画編集を教えてもらっていました。ラップをやっているのを知ってくれていて「面白いことやってるね」とDMをくれたんです。
◆行動力の秘訣は「覚悟」
――やりたいことがあっても踏み出せない人は多いと思うのですが、もあいさんはなぜチャレンジできたのだと思いますか?
もあい:覚悟の問題なのかなと思っています。私も滅多にしないのですが、覚悟をしたことは絶対にやり切ろうと思っています。私の場合は、Instagramの毎日投稿を始める覚悟期間として1か月設けました。
――その期間は、どんなことをするのですか?
もあい:やりたいことを人に話すようにしています。「これをやりたいから見ててほしい」と人にたくさん話して結局やらないとダサい人になってしまうので、後に引けない状況を作るようにしています。
昨年、管理栄養士の資格を取ったときも、久々にこの“背水の陣戦法”を使いました。資格を取ることを自分から周囲に言いふらしていると、「合格したらこういう仕事をお願いできるから頑張ってね」と期待してもらえることもあるので、それを裏切らないよう一層頑張って勉強するようになりました。
◆親戚のYouTuber、ヒカルに学んだこと
――人から「それはやめたほうがいい」と言われたら、どうしたらいいと思いますか?
もあい:誰かに言われてやめるぐらいのことなら、結局は続かないしリスクをとれないと思うんです。それを上回ってやりたいことの方が熱量を持って挑めると思うので、人の言うことは聞かなくてもいいんじゃないかなと思います。
――もあいさんは、親戚であるYouTuberのヒカルさんと数年前に再会したそうですが、何か影響は受けましたか?
もあい:ヒカルさんの「熱量の高さを維持し続けているところ」をすごくリスペクトしています。「今つらいから頑張ろう」、マイナスをプラスにするための行動は比較的取りやすいと思うんです。でも、すごく充実している状態の人がさらに充実するためにエネルギーを使うのは、なかなか難しいと感じます。
ヒカルさんは、YouTubeがずっとうまくいっているのに、さらに上、さらに上に、とモチベーションを下げず常に全力で走り続けているのが本当にすごいなと思いますし、見習いたいです。
<取材・文/都田ミツコ>
【都田ミツコ】
ライター、編集者。1982年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。