【今日のにゃんこタイム~○○さん家の猫がかわいすぎる Vol.151】
動物には、人の心を丸くする力がある。パパひつじさん(@hitsuji_blg)は息子さんと愛猫の絆を見て、そう感じ、胸が熱くなりました。
癇癪がひどく、叫んで暴れることが頻繁にあった長男さん。実は過去に、発達障害グレーゾーンの診断を受けたことがあったそう。しかし、その暮らしは1匹の野良猫と出会ったことで激変しました。
◆精神的に限界な時に息子が野良猫を保護して
8年ほど前の冬、当時小学校4年生だった長男さんはガリガリの子猫を保護。「この子を飼いたい」と言われたものの、パパひつじさんは猫アレルギー。飼うことは難しいと告げました。
当時、長男さんは自分の怒りが上手くコントロールできず、ソファーをひっくり返したり、テーブルに包丁を突き刺さしたりと苦しんでいたそう。家族は、支え方に悩んでいました。
そんな中で抱いた優しい気持ちを、大切にしてあげたい。そう思い、パパひつじさんは自宅の庭にダンボールと毛布で猫の家を作り、毎日、長男さんに猫用フードを渡しました。
◆窓のサッシに子猫がチョコン
猫を飼いたいとの想いは、長くは続かないだろう。パパひつじさんは心で、そう思っていましたが、長男さんは毎日、猫のもとへ。ご飯をあげ、小さな命を守ろうとしていました。雪の日にはダンボールの向きを変え、雪が入らないように工夫していたこともあったそう。
そんな交流を数日ほど続けたある日、夕食後に窓を叩くような音が。気になり、カーテンを開けると、窓のサッシにチョコンと乗る子猫の姿がありました。言葉のない訴えを受け、家族はパパひつじさんをガン見。根負けしたパパひつじさんは、子猫を迎え入れることにしました。
◆猫との交流で長男の癇癪が激減
子猫の名前は、モコに決定。大人しく、右手が不自由でした。幸い、心配していたほどアレルギー症状はひどくなく、自身で上手く対処することに。
「モコは過去に骨折などの怪我をして、骨に異常があったようです。右手の肉球を触られるのを嫌がりました。高いところに飛び乗る、飛び降りる、走るなどの動作は見せませんでした」
その姿に重なったのは、3か月前に他界した義母。義母も右手に不自由があったため、パパひつじさんは「猫になって会いに来てくれた」と思ったのです。
モコちゃんとの生活が始まると、長男さんの行動に少しずつ変化が。大きな音が苦手なモコちゃんを気遣い、大きな声を出さなくなったのです。保護から数日で、癇癪を起こす頻度は激減。自分を愛してくれる長男さんに、モコちゃんはいつもぴったりくっついていました。
◆みんなが寝てしまうと鳴いて起こす甘えん坊
「長男いわく、動物を飼うことは小さな許しの連続で、それが人を許せることに繋がったそうです。許すことができるようになったことで、怒りのコントロールができ、癇癪が収まったと感じたようでした」
甘えん坊のモコちゃんは呼んでも呼ばなくても近くに来てくれ、家族の体に乗ることが大好き。みんなが寝ると寂しくて、鳴いて起こそうとしました。
「長男は、モコに慕われてたんだと思う。“愛される”は経験しやすいけど、“慕われる”って人間界では経験できないことも多い。“慕われる”から生まれる感情でしか育てられない人間性があるとしたら、モコとの日々はとても貴重な経験になったのだと思います」
◆長男を救ってくれた愛猫が天国へ
出会って3年経つ頃には長男さんは癇癪を起さなくなり、中学へ入学。ようやく訪れた穏やかな日々は長く続くように思われましたが、モコちゃんに異変が。
単身赴任中だったパパひつじさんは年末に帰省した際、モコちゃんの反応が鈍いことに違和感を覚えたそう。
「年始に赴任先へ戻ろうとした時、モコは足をプルプルさせ、倒れてしまいました。その後は通院し、腎臓の治療などをしていましたが、体調はよくなりませんでした」
死期を悟ったのか、モコちゃんは家族に近寄らなくなり、押し入れの奥などの静かな場所で過ごすように。そして、病院でレントゲン撮影をしている時に痙攣を起こし、天国へ旅立ちました。
長男さんはある程度、覚悟していたようで、取り乱すことなく死を受け入れたそう。
「ただ、亡くなった日は泣きながら『最後だから一緒に寝るんだ』と言い張って、硬直したモコと一緒に寝ていました」
◆モコちゃんとの思い出を自作の物語に
大切な存在を失った長男は、再び癇癪を起こすかもしれない。心配したパパひつじさんは長男さんが穏やかな気持ちで暮らしていけるよう、自作の猫物語を家族に贈りました。
「モコは長男に拾われて幸せだった。そして、俺たちもモコに救われた。いつまでも悲しんでいたらモコも悲しむから、前向いて生きていこうね!と伝える物語です」
その物語のおかげか、長男さんは「モコは俺を救ってくれた。そんな俺がいつまでも悲しんでいたらモコが悲しむ」と前を向いてくれたそう。長男さんの部屋には“骨壺”という形で、モコちゃんと生きた証が大切に飾られています。
◆二代目にゃんこ「チビ太」との生活で次男に変化が
現在、パパひつじさん宅では、チビ太くんという猫が生活中。チビ太くんは、多頭飼育崩壊の環境から保護された猫出身。地元紙に載っていた里親募集を見て、譲り受けました。
「最初からチビ太と呼ばれていたので、名前は変えませんでした。生後半年と書かれていましたが、実際は1歳くらいで名前の割にデカすぎる姿に家族で笑いました」
チビ太くんはモコちゃんとは対照的で、気まぐれ。基本的には呼んでも来ず、次男さんにだけ甘えます。
「次男以外に甘えるのは、ご飯貰うための社交辞令(笑)。長男との交流も、社交辞令程度です」
チビ太くんとの生活で、次男さんにはある変化が。これまでは、どちらかというと面倒を見られる側でしたが、面倒を見ることを覚え、ご飯や水が切れていないか気遣うようになりました。
◆不登校に関するブログを立ち上げたパパひつじさん
そして、パパひつじさんも新たな一歩を踏み出しました。我が子が不登校になった経験から、不登校に関するブログ「まよひつ」を立ち上げ、正解のない問題に向き合う親子や発達障害との向き合い方に悩む親子に「ひとりじゃない」とエールを送り始めたのです。
「我が子が不登校になると、親子共に苦しい。登校する学生を見ては世間から取り残されたような感覚に陥り、孤独も感じる。だから、同じ思いをする仲間はたくさんいると伝えたくて。我が家も同じで、こんな考え方もあると伝えることで誰かの苦しさが少しでも和らげば嬉しいです」
大切なのは悪いところではなく、頑張っているところや良いところに目を向け、子どもを認めてあげること。そして「今」を大切にしながら笑顔で過ごすこと。そうすれば、きっと数年後の未来は明るいはず。
パパひつじさんがそう前向きになれたのも、モコちゃんのアニマルセラピーがあったからなのかもしれません。
<取材・文/愛玩動物飼養管理士・古川諭香>
【古川諭香】
愛玩動物飼養管理士・キャットケアスペシャリスト。3匹の愛猫と生活中の猫バカライター。共著『バズにゃん』、Twitter:@yunc24291
動物には、人の心を丸くする力がある。パパひつじさん(@hitsuji_blg)は息子さんと愛猫の絆を見て、そう感じ、胸が熱くなりました。
癇癪がひどく、叫んで暴れることが頻繁にあった長男さん。実は過去に、発達障害グレーゾーンの診断を受けたことがあったそう。しかし、その暮らしは1匹の野良猫と出会ったことで激変しました。
◆精神的に限界な時に息子が野良猫を保護して
8年ほど前の冬、当時小学校4年生だった長男さんはガリガリの子猫を保護。「この子を飼いたい」と言われたものの、パパひつじさんは猫アレルギー。飼うことは難しいと告げました。
当時、長男さんは自分の怒りが上手くコントロールできず、ソファーをひっくり返したり、テーブルに包丁を突き刺さしたりと苦しんでいたそう。家族は、支え方に悩んでいました。
そんな中で抱いた優しい気持ちを、大切にしてあげたい。そう思い、パパひつじさんは自宅の庭にダンボールと毛布で猫の家を作り、毎日、長男さんに猫用フードを渡しました。
◆窓のサッシに子猫がチョコン
猫を飼いたいとの想いは、長くは続かないだろう。パパひつじさんは心で、そう思っていましたが、長男さんは毎日、猫のもとへ。ご飯をあげ、小さな命を守ろうとしていました。雪の日にはダンボールの向きを変え、雪が入らないように工夫していたこともあったそう。
そんな交流を数日ほど続けたある日、夕食後に窓を叩くような音が。気になり、カーテンを開けると、窓のサッシにチョコンと乗る子猫の姿がありました。言葉のない訴えを受け、家族はパパひつじさんをガン見。根負けしたパパひつじさんは、子猫を迎え入れることにしました。
◆猫との交流で長男の癇癪が激減
子猫の名前は、モコに決定。大人しく、右手が不自由でした。幸い、心配していたほどアレルギー症状はひどくなく、自身で上手く対処することに。
「モコは過去に骨折などの怪我をして、骨に異常があったようです。右手の肉球を触られるのを嫌がりました。高いところに飛び乗る、飛び降りる、走るなどの動作は見せませんでした」
その姿に重なったのは、3か月前に他界した義母。義母も右手に不自由があったため、パパひつじさんは「猫になって会いに来てくれた」と思ったのです。
モコちゃんとの生活が始まると、長男さんの行動に少しずつ変化が。大きな音が苦手なモコちゃんを気遣い、大きな声を出さなくなったのです。保護から数日で、癇癪を起こす頻度は激減。自分を愛してくれる長男さんに、モコちゃんはいつもぴったりくっついていました。
◆みんなが寝てしまうと鳴いて起こす甘えん坊
「長男いわく、動物を飼うことは小さな許しの連続で、それが人を許せることに繋がったそうです。許すことができるようになったことで、怒りのコントロールができ、癇癪が収まったと感じたようでした」
甘えん坊のモコちゃんは呼んでも呼ばなくても近くに来てくれ、家族の体に乗ることが大好き。みんなが寝ると寂しくて、鳴いて起こそうとしました。
「長男は、モコに慕われてたんだと思う。“愛される”は経験しやすいけど、“慕われる”って人間界では経験できないことも多い。“慕われる”から生まれる感情でしか育てられない人間性があるとしたら、モコとの日々はとても貴重な経験になったのだと思います」
◆長男を救ってくれた愛猫が天国へ
出会って3年経つ頃には長男さんは癇癪を起さなくなり、中学へ入学。ようやく訪れた穏やかな日々は長く続くように思われましたが、モコちゃんに異変が。
単身赴任中だったパパひつじさんは年末に帰省した際、モコちゃんの反応が鈍いことに違和感を覚えたそう。
「年始に赴任先へ戻ろうとした時、モコは足をプルプルさせ、倒れてしまいました。その後は通院し、腎臓の治療などをしていましたが、体調はよくなりませんでした」
死期を悟ったのか、モコちゃんは家族に近寄らなくなり、押し入れの奥などの静かな場所で過ごすように。そして、病院でレントゲン撮影をしている時に痙攣を起こし、天国へ旅立ちました。
長男さんはある程度、覚悟していたようで、取り乱すことなく死を受け入れたそう。
「ただ、亡くなった日は泣きながら『最後だから一緒に寝るんだ』と言い張って、硬直したモコと一緒に寝ていました」
◆モコちゃんとの思い出を自作の物語に
大切な存在を失った長男は、再び癇癪を起こすかもしれない。心配したパパひつじさんは長男さんが穏やかな気持ちで暮らしていけるよう、自作の猫物語を家族に贈りました。
「モコは長男に拾われて幸せだった。そして、俺たちもモコに救われた。いつまでも悲しんでいたらモコも悲しむから、前向いて生きていこうね!と伝える物語です」
その物語のおかげか、長男さんは「モコは俺を救ってくれた。そんな俺がいつまでも悲しんでいたらモコが悲しむ」と前を向いてくれたそう。長男さんの部屋には“骨壺”という形で、モコちゃんと生きた証が大切に飾られています。
◆二代目にゃんこ「チビ太」との生活で次男に変化が
現在、パパひつじさん宅では、チビ太くんという猫が生活中。チビ太くんは、多頭飼育崩壊の環境から保護された猫出身。地元紙に載っていた里親募集を見て、譲り受けました。
「最初からチビ太と呼ばれていたので、名前は変えませんでした。生後半年と書かれていましたが、実際は1歳くらいで名前の割にデカすぎる姿に家族で笑いました」
チビ太くんはモコちゃんとは対照的で、気まぐれ。基本的には呼んでも来ず、次男さんにだけ甘えます。
「次男以外に甘えるのは、ご飯貰うための社交辞令(笑)。長男との交流も、社交辞令程度です」
チビ太くんとの生活で、次男さんにはある変化が。これまでは、どちらかというと面倒を見られる側でしたが、面倒を見ることを覚え、ご飯や水が切れていないか気遣うようになりました。
◆不登校に関するブログを立ち上げたパパひつじさん
そして、パパひつじさんも新たな一歩を踏み出しました。我が子が不登校になった経験から、不登校に関するブログ「まよひつ」を立ち上げ、正解のない問題に向き合う親子や発達障害との向き合い方に悩む親子に「ひとりじゃない」とエールを送り始めたのです。
「我が子が不登校になると、親子共に苦しい。登校する学生を見ては世間から取り残されたような感覚に陥り、孤独も感じる。だから、同じ思いをする仲間はたくさんいると伝えたくて。我が家も同じで、こんな考え方もあると伝えることで誰かの苦しさが少しでも和らげば嬉しいです」
大切なのは悪いところではなく、頑張っているところや良いところに目を向け、子どもを認めてあげること。そして「今」を大切にしながら笑顔で過ごすこと。そうすれば、きっと数年後の未来は明るいはず。
パパひつじさんがそう前向きになれたのも、モコちゃんのアニマルセラピーがあったからなのかもしれません。
<取材・文/愛玩動物飼養管理士・古川諭香>
【古川諭香】
愛玩動物飼養管理士・キャットケアスペシャリスト。3匹の愛猫と生活中の猫バカライター。共著『バズにゃん』、Twitter:@yunc24291