「使い続けているうちにスマホが熱くなってしまった」という体験はありませんか?
しかも気温30℃超えが続く夏、うっかり暑い部屋や直射日光が当たる場所にスマホを置いてしまい、ますます熱くなることも。
スマホに負荷がかかると、いずれ故障につながります。ではスマホが熱くなったときにはどう対処すればいいのか? また熱くなったスマホをそのまま放置するとどうなるのでしょうか?
そこで、スマホの内部構造を熟知している専門家に聞いてみました。答えてくれたのは、Androidスマホ「arrows」などを手がけているFCNTの開発チームです。(以下、コメントはFCNT開発チーム)
◆ネットで見る“スマホの熱さ対策”は間違いだらけ
スマホが熱くなった時のさまざまな対処方法が、ネットにアップされています。そこで、いくつかの対策方法をピックアップして、それらが本当に効果のある対処法なのかを、FCNTの開発チームに聞きました。
================
■スマホが熱くなった時の対処法の効果■
優先的にやった方がいいことを◎>〇>△>×(効果なし)で判定
・高温の場所から涼しい場所に移動させる ◎
・直射日光を避ける ◎
・充電をやめる ◎
・スマホケースをはずす 〇
・画面の輝度を下げる 〇
・スピーカを使わずにイヤホンにする △
・冷却グッズを使用する △ *1
・十円玉をのせる ×
・クーラーにあてる× *2
・スマホを再起動させる ×
・使用していない時はスリープではなく電源をオフする ×
*1 スマホ用の冷却グッズ(結露するため急冷しないように)、扇風機、うちわ等で空冷する
*2 急冷しないように要注意
================
■スマホが自動的に対処すること■
・充電電流を徐々に下げる 〇*3
・明るさを徐々に下げる 〇*3
*3 スマホがスマホの内部の温度を監視していて、ある温度以上になると、それ以上温度が上がらないようにスマホの動作を制限したりしています。
================
みなさんが、いつもやっていた方法は効果的な方法だったでしょうか?
やってしまいがちですが、クーラーにあてる、保冷剤で冷やすといった急冷はNGです。内部に結露ができて故障の原因になります。冷却グッズを使うのならファンなど空冷できるものがおすすめです。
◆専門家がすすめるスマホが熱くならないようにする3つの工夫
それでは、スマホが熱くならないようにするにはどうしたらいいのでしょうか。
それには
・電気を食わないような使い方にする
・環境を変える
ことが大切とのこと。具体的な対策を3つ挙げてもらいました。
◆1.ダイレクト給電機能を使う
ダイレクト給電とは、バッテリーを介さずスマホへ直接電気を送る機能です。これを利用すれば、バッテリーに負担をかけないので、充電中でもスマホを使用することができます。
注)arrows(2024年以降のモデル)にはこの機能がありますが、ダイレクト給電機能がないスマホもあります。iPhoneにはダイレクト給電機能はありません。
◆2.発熱する前から、冷却グッズを使っておく
また、手持ちの冷却グッズも使い方を変えるだけで、より効果的な対策になります。
スマホが熱くなってからではなく、熱くなる前から冷却グッズを使用するのが効果的とのこと。このとき使う冷却グッズは、急冷にならないファンなどを使用するといいとのことです。
◆3.フレームレート(画質)を落とす
フレームレートとは、動画やゲームにおいて1秒間に表示される画像(フレーム)の数を示す指標で、数字が高ければ滑らかな映像になります。
スマホでは必要以上に性能を上げて使用しないことが、予防対策になります。スマホ本体やアプリの設定で、滑らかな画面表示、高画質をオフすることが有効です。オフにすると画質は劣りますが、通常の使用では問題ないレベルです。
◆熱くなったスマホを放置するとどうなる?
それでは、熱くなってしまったスマホをそのまま使い続けると、どうなるのでしょうか?
「スマホは、熱くならないように自動的にスマホの動作に制限をかける動きをします。スマホの内部(基板)には、いくつかの温度センサがあり、スマホの内部の温度を監視しています」とのこと。
ある温度以上になると、スマホが勝手に下記のような動作制限をかけるようになっています。
・充電が遅くなる…充電する電流を温度があがるごとに徐々に少なくする
・画面が暗くなる……画面輝度を温度が上がるごとに徐々に暗くする
・動作が遅くなる……CPUの処理能力を温度が上がるごとに徐々に落としていく
・カメラが使えなくなる……カメラが使えなくなる予告後、停止
そして、最後は予告後、電源が切れるそうです。スマホの画面が急に暗くなったりするのは、そういうことだったのですね。
注)上記の動作制限は、スマホごとに温度の上がり方、仕様も違うため、スマホごとに異なります。
◆気温35℃以上などの環境では、ゲームや動画を避ける
いろいろ調べていくうちに、スマホには「適正な利用気温(環境温度)と湿度」が定められていることがわかりました。iPhoneの適正使用温度は「0~35℃」で、他の機種も基本的に同じぐらいだそう。
しかし今夏は気温が35℃を超える日もありました。そんな日にスマホを使うにはどうしたらいいのでしょうか。
「スマホの利用は、電話やメール程度にとどめておくほうがいいです。ゲームや動画などはNGです。もっとも、高温の場所でゲームなどをプレイすると画面がカクカクしたりするので、使いづらいと感じるのではないでしょうか」
使わないのが一番ですが、スマホにあまり負荷がかからない使い方なら大丈夫そうです。
◆ふつうの気温差なら、結露はあまり心配なし
スマホは結露に弱いため、急激に冷却することはNGですが、どれくらいの気温差に注意すればいいのでしょうか。
ウエザーニュースによると、結露が発生するのは、湿度が80%の場合は気温差たった約3℃とあります。執筆時の湿度84%。屋外から冷房のきいた部屋に入れば3℃ぐらい下がるでしょうが、これは結露の心配があるのでしょうか?
「スマホでは、熱を伝えて(熱伝導/熱拡散)、スマホ内部の熱を均一にし、スマホが熱くならないような工夫がされています。そのため、外気温との差でできる室内の結露よりも、気温差は緩和されます」とのこと。(スマホの熱拡散のしくみは後述)
急激な冷却はNGですが、それほど神経質にならなくても大丈夫そうです。
◆プロが普段やっている熱さ対策を教えて!
スマホの内部構造を熟知しているFCNTの開発チームの人は、日ごろどんな対策をしているのか、聞いてみました。
「フレームレートの設定を変更したり、アプリ設定でも高画質モードを使わないようにして、熱くならないよう対策をしています。
それでも熱くなってしまった時は、スマホを手のひらに密着させるることで冷やしたり、ファンで風をあてて熱を逃すような工夫をしています。充電しながらスマホを使いたいときにはダイレクト給電を利用していますね」
◆熱くならないように工夫されている内部構造
最後に、スマホが熱くならないよう、内部にはどんな工夫が施されているのか、スマホの内部構造を図説してもらいました。
スマホの内部では、発熱する部品の熱をスマホの内部に拡散することでヒートスポットを緩和し、熱をおさえています。
サーモビュア―で測定した結果を見てみると、何も施さないスマホにあった赤色の高音箇所が、熱拡散をおこなうことで、なくなっているのがわかります。
そのために、ぎっしりと詰まっている部品のいろいろな箇所に熱拡散をおこなうための金属や熱伝導シート(テープ状)が施されています。
スマホの過熱は心配の種ですが、通常の使用方法であれば突然の故障や爆発を心配しすぎなくてもよいことがわかりました。でも、過度な負荷をかけることは避けるべきです。
これを機にスマホが熱を持った際の効果的な対処法や、事前にできる対策、設定を確認し、安心して快適に使用できる環境を整えてみてはいかがでしょうか。
※取材先:FCNT合同会社
プロダクト事業部/春藤和義氏、谷定昌弘氏、長友克夫氏、近藤洋一氏
プロダクトマーケティング統括部/森田博典氏 広報室/芦田研一氏
<取材・文/栗山佳子>
【栗山佳子】
損害保険会社で情報誌の編集に携わったのち、生活情報誌、住宅情報誌の編集を経てフリーランスに。現在はライターとして、ライフスタイルやスマホ関連の記事を中心に執筆中
しかも気温30℃超えが続く夏、うっかり暑い部屋や直射日光が当たる場所にスマホを置いてしまい、ますます熱くなることも。
スマホに負荷がかかると、いずれ故障につながります。ではスマホが熱くなったときにはどう対処すればいいのか? また熱くなったスマホをそのまま放置するとどうなるのでしょうか?
そこで、スマホの内部構造を熟知している専門家に聞いてみました。答えてくれたのは、Androidスマホ「arrows」などを手がけているFCNTの開発チームです。(以下、コメントはFCNT開発チーム)
◆ネットで見る“スマホの熱さ対策”は間違いだらけ
スマホが熱くなった時のさまざまな対処方法が、ネットにアップされています。そこで、いくつかの対策方法をピックアップして、それらが本当に効果のある対処法なのかを、FCNTの開発チームに聞きました。
================
■スマホが熱くなった時の対処法の効果■
優先的にやった方がいいことを◎>〇>△>×(効果なし)で判定
・高温の場所から涼しい場所に移動させる ◎
・直射日光を避ける ◎
・充電をやめる ◎
・スマホケースをはずす 〇
・画面の輝度を下げる 〇
・スピーカを使わずにイヤホンにする △
・冷却グッズを使用する △ *1
・十円玉をのせる ×
・クーラーにあてる× *2
・スマホを再起動させる ×
・使用していない時はスリープではなく電源をオフする ×
*1 スマホ用の冷却グッズ(結露するため急冷しないように)、扇風機、うちわ等で空冷する
*2 急冷しないように要注意
================
■スマホが自動的に対処すること■
・充電電流を徐々に下げる 〇*3
・明るさを徐々に下げる 〇*3
*3 スマホがスマホの内部の温度を監視していて、ある温度以上になると、それ以上温度が上がらないようにスマホの動作を制限したりしています。
================
みなさんが、いつもやっていた方法は効果的な方法だったでしょうか?
やってしまいがちですが、クーラーにあてる、保冷剤で冷やすといった急冷はNGです。内部に結露ができて故障の原因になります。冷却グッズを使うのならファンなど空冷できるものがおすすめです。
◆専門家がすすめるスマホが熱くならないようにする3つの工夫
それでは、スマホが熱くならないようにするにはどうしたらいいのでしょうか。
それには
・電気を食わないような使い方にする
・環境を変える
ことが大切とのこと。具体的な対策を3つ挙げてもらいました。
◆1.ダイレクト給電機能を使う
ダイレクト給電とは、バッテリーを介さずスマホへ直接電気を送る機能です。これを利用すれば、バッテリーに負担をかけないので、充電中でもスマホを使用することができます。
注)arrows(2024年以降のモデル)にはこの機能がありますが、ダイレクト給電機能がないスマホもあります。iPhoneにはダイレクト給電機能はありません。
◆2.発熱する前から、冷却グッズを使っておく
また、手持ちの冷却グッズも使い方を変えるだけで、より効果的な対策になります。
スマホが熱くなってからではなく、熱くなる前から冷却グッズを使用するのが効果的とのこと。このとき使う冷却グッズは、急冷にならないファンなどを使用するといいとのことです。
◆3.フレームレート(画質)を落とす
フレームレートとは、動画やゲームにおいて1秒間に表示される画像(フレーム)の数を示す指標で、数字が高ければ滑らかな映像になります。
スマホでは必要以上に性能を上げて使用しないことが、予防対策になります。スマホ本体やアプリの設定で、滑らかな画面表示、高画質をオフすることが有効です。オフにすると画質は劣りますが、通常の使用では問題ないレベルです。
◆熱くなったスマホを放置するとどうなる?
それでは、熱くなってしまったスマホをそのまま使い続けると、どうなるのでしょうか?
「スマホは、熱くならないように自動的にスマホの動作に制限をかける動きをします。スマホの内部(基板)には、いくつかの温度センサがあり、スマホの内部の温度を監視しています」とのこと。
ある温度以上になると、スマホが勝手に下記のような動作制限をかけるようになっています。
・充電が遅くなる…充電する電流を温度があがるごとに徐々に少なくする
・画面が暗くなる……画面輝度を温度が上がるごとに徐々に暗くする
・動作が遅くなる……CPUの処理能力を温度が上がるごとに徐々に落としていく
・カメラが使えなくなる……カメラが使えなくなる予告後、停止
そして、最後は予告後、電源が切れるそうです。スマホの画面が急に暗くなったりするのは、そういうことだったのですね。
注)上記の動作制限は、スマホごとに温度の上がり方、仕様も違うため、スマホごとに異なります。
◆気温35℃以上などの環境では、ゲームや動画を避ける
いろいろ調べていくうちに、スマホには「適正な利用気温(環境温度)と湿度」が定められていることがわかりました。iPhoneの適正使用温度は「0~35℃」で、他の機種も基本的に同じぐらいだそう。
しかし今夏は気温が35℃を超える日もありました。そんな日にスマホを使うにはどうしたらいいのでしょうか。
「スマホの利用は、電話やメール程度にとどめておくほうがいいです。ゲームや動画などはNGです。もっとも、高温の場所でゲームなどをプレイすると画面がカクカクしたりするので、使いづらいと感じるのではないでしょうか」
使わないのが一番ですが、スマホにあまり負荷がかからない使い方なら大丈夫そうです。
◆ふつうの気温差なら、結露はあまり心配なし
スマホは結露に弱いため、急激に冷却することはNGですが、どれくらいの気温差に注意すればいいのでしょうか。
ウエザーニュースによると、結露が発生するのは、湿度が80%の場合は気温差たった約3℃とあります。執筆時の湿度84%。屋外から冷房のきいた部屋に入れば3℃ぐらい下がるでしょうが、これは結露の心配があるのでしょうか?
「スマホでは、熱を伝えて(熱伝導/熱拡散)、スマホ内部の熱を均一にし、スマホが熱くならないような工夫がされています。そのため、外気温との差でできる室内の結露よりも、気温差は緩和されます」とのこと。(スマホの熱拡散のしくみは後述)
急激な冷却はNGですが、それほど神経質にならなくても大丈夫そうです。
◆プロが普段やっている熱さ対策を教えて!
スマホの内部構造を熟知しているFCNTの開発チームの人は、日ごろどんな対策をしているのか、聞いてみました。
「フレームレートの設定を変更したり、アプリ設定でも高画質モードを使わないようにして、熱くならないよう対策をしています。
それでも熱くなってしまった時は、スマホを手のひらに密着させるることで冷やしたり、ファンで風をあてて熱を逃すような工夫をしています。充電しながらスマホを使いたいときにはダイレクト給電を利用していますね」
◆熱くならないように工夫されている内部構造
最後に、スマホが熱くならないよう、内部にはどんな工夫が施されているのか、スマホの内部構造を図説してもらいました。
スマホの内部では、発熱する部品の熱をスマホの内部に拡散することでヒートスポットを緩和し、熱をおさえています。
サーモビュア―で測定した結果を見てみると、何も施さないスマホにあった赤色の高音箇所が、熱拡散をおこなうことで、なくなっているのがわかります。
そのために、ぎっしりと詰まっている部品のいろいろな箇所に熱拡散をおこなうための金属や熱伝導シート(テープ状)が施されています。
スマホの過熱は心配の種ですが、通常の使用方法であれば突然の故障や爆発を心配しすぎなくてもよいことがわかりました。でも、過度な負荷をかけることは避けるべきです。
これを機にスマホが熱を持った際の効果的な対処法や、事前にできる対策、設定を確認し、安心して快適に使用できる環境を整えてみてはいかがでしょうか。
※取材先:FCNT合同会社
プロダクト事業部/春藤和義氏、谷定昌弘氏、長友克夫氏、近藤洋一氏
プロダクトマーケティング統括部/森田博典氏 広報室/芦田研一氏
<取材・文/栗山佳子>
【栗山佳子】
損害保険会社で情報誌の編集に携わったのち、生活情報誌、住宅情報誌の編集を経てフリーランスに。現在はライターとして、ライフスタイルやスマホ関連の記事を中心に執筆中