ニューヨーク&さらば青春の光がMCを務める、ABEMAのドキュメントバラエティ番組 『愛のハイエナ』。イケメン俳優・山本裕典が本気でホストを目指す『山本裕典、ホストになる』が看板企画だが、常に山本を支え導く師匠として存在感を発揮し、同番組をヒットに導いたのが、ホスト指導のプロフェッショナル“軍神”こと心湊一希(みなといつき)だ。
ホストとして売上を上げるだけでなく、人間力も高める軍神の指導法はビジネスの場面や日常の人間関係にも応用できると大好評! そこで、『愛のハイエナ』の中でもバズった「褒め方の技術」をはじめ、成長を促す見守り方や叱り方など、職場や家庭で今日から使えるコーチング術を軍神にレクチャーしてもらった。
◆褒める、叱る、その行為自体に意味はない
――軍神の指導は厳しいけど愛がある。キャストからも慕われている。軍神流の上司心得があったりするんですか?
軍神:「相手を知る努力をする」と「相手のこれからを思って指導をする」、その2点を大事にしています。特に、「相手を知る」、「その人をしっかり見る」そこは関係性を築いていく上で必須の部分なので。自分の言葉を受け入れてもらえるかどうかはそこにかかっているので。
軍神:普段、自分を見もしない人に怒られると腹立ちません? 見てもいないくせにって。逆に良い結果を出したときだけ褒めてくる人も腹立ちません?
――たしかに。
軍神:自分を知ろうともしない相手の言葉って響かないんです。褒める、叱る、その行為自体にはそんなに意味はない。「この人はいつも私のことを見てくれている」が大事なんです。そこで関係値が築けていたら、叱っても愛だし、褒められたら素直に嬉しい。もっと頑張ろうってなるんです。
◆成果を見るのではなくその人自身に目を向ける
――指導には「相手を知るステップ」がまず必要ということ?
軍神:そうです。仕事の向き合い方、価値観、仕事終わりはどんなふうに過ごしているのか、趣味は何か…。ちゃんと相手を見て知る。「私はちゃんとあなたを見ていますよ」という“承認”を相手が認知することではじめて言葉は入ってくるんです。それは職場でも家庭でも一緒ですよね。そこができていたら厳しく叱っても愛されます。そのために普段からコミュニケーションを取る。
――人を育てるって手間ひまかかるんですね!
軍神:指導って本来そういうものです。でもね、変にあれこれ聞かなくても、興味関心を持ってその人を見る、気に掛ける、それだけで全然違うと思います。その人の能力や成果に興味を持つのではなく、その人自身に興味を持てば情報は自然と入ってくるので。
◆相手を幸せにするための『利他褒め』
――『愛のハイエナ』では「短文で褒めない。根拠となる前提文を作ってから褒める」という褒めの技術がバズりましたが、前提文ってパッと思いつくものなんでしょうか?
軍神:あのときの前提文は、「ショートカットってかわいい女の子しか似合わないよね」でしたね。基本、前提の部分は原理原則をそのまま言えばいいです。「これはこういうものだよね」っていう部分。かわいい女の子がショートカットが似合うのは原理原則ですから。「顔が小さい女の子しか似合わないよね」でもいいですね。これも原理原則。
軍神:でも、技術に走らなくても“褒め”には大事なポイントがあって。自分がいつも言っているのは『利他褒め』です。利他的に褒める。これは、「相手のために叱る」の逆で、「相手のために褒める」。そこを考えていったら褒めるポイントはいくらでも出てきますよ。
――『利他褒め』初めて聞きました。
軍神:自分が勝手に作った言葉なので、知らなくて当然です(笑)。お世辞ってその人に良く思われたいから褒める行為じゃないですか。その逆と思ってください。その人を幸せにするために褒めるんです。相手を肯定する褒め方、それが「利他褒め」です。
ショートカットの例で言えば、ロングヘアの人がばっさり髪を切ったとき、欲しい言葉は「ショートカットのあなたも素敵だよ」という肯定ですよね。こちらの好みや印象どうこうじゃない。その褒めは誰のためになっているのか? その人のためなんです。「似合うね」と言われたら嬉しいじゃないですか。嬉しいってことはそこで何かしらの生産性を生むんです。たとえば笑顔とか。気分がよくなるっていうことも生産性ですよね。
◆職場において「叱る」と「褒める」は理性
軍神:「相手を幸せにする」という視点に立つと、人が褒められたいところ、肯定されたいところが見えるようになってきます。職場や家庭、友人関係、いろんな集団のなかで『利他褒め』をして下さい。生産性を生みますから。家族間であれば家庭円満、会社であれば成果を上げることにつながります。
職場に嫌な上司やムカつく部下がいるなら、部署やチームの人全員でその人を褒めまくってください。上司であれば「○○さんに相談すると的確な答えをくれるので嬉しいです」とかね。こういったことを全員に言われてみて下さい。「あ、自分ってそういうやつなんだ」と、ポジティブな部分を伸ばしたくなる。もっとみんなのために頑張ろうという意識になる。承認を満たされると気持ちいいですから、もっと貢献したくなるんです。
――嫌いな人を褒めるのは嘘臭くなりそうな気が…。
軍神:大丈夫! ムカつく人でも良いところは必ずあります。それも「相手を知る」です。人に嫌われたくて行動する人なんかいない。それなのになぜ嫌われてしまうかというと、それが嫌われる行動だとわかってないから。そこを踏まえ上で相手を知っていくと良いところも見えてくる。そこを褒めまくるんです。
――感情は置いといて良いところ褒める?
軍神:そう、職場において叱ると褒めるは理性です。ムカつくからで叱らない。好きだからで褒めない。ちゃんと相手のことを思って叱る、褒める。すべては彼らを良い方向に導くためです。
◆後輩や子供にはたくさん失敗をさせてあげよう
――部下や後輩、あるいは子供が失敗しそうなとき、つい口を出したくなりますが、上手な見守り方や方向の正し方はありますか?
軍神:そこはちゃんとタイミングを見計らう。「こういうことをしたらこうなるよ」といくら知識を授けても、知識と体験が合わさらないと経験にならないので学べない。フォローする心構えだけしておいて、失敗するであろう前提で見守る。人を育てるのはこれがベースです。
明らかに失敗するとわかることであれば、おおまかに「こうなると思うけど、まあやってみなさい」と言っておくのはいいと思います。それで失敗したら「あの人の言っていたことは本当だったんだ」と信頼関係も作れますし。
自分の場合、「たくさん失敗しなさい」と思ってます。自分もたくさん失敗してきましたしね。世の中の人はみんな失敗しまくるから、いいんですそれで。失敗して落ち込みましょう。落ち込んだときが上司や先輩、親が出陣するタイミングです。そのときにメンタリングとコーチングをするんです。
◆絶対にやっちゃいけないこととは?
軍神:部下や後輩、子供が失敗したとき、「ほら見ろ!」と責めないことも指導のポイントです。「でもね、経験をして一個成長できるんだから、今落ち込んだり悩んだりしていることは素敵なことなんだよ」と、起きてしまったことを肯定してあげる。そうじゃないと、失敗を恐れて行動しない人間になってしまうので。失敗を責める、それは絶対にやっちゃいけない。
――たしかに。軍神は失敗して落ち込んでいる人を責めないですね。
軍神:失敗を上司や親が責めると、「失敗したくない、怒られたくない」で、顔色をうかがう人間になるだけで本人の成長につながらない。「いいじゃないの、思い切ってやって失敗しなさいよ。自分がケツも拭くしフォローもするから。安心して行ってらっしゃい」というのが自分のやり方です。
――最後に一つ。軍神はどんな未来を描いてホストたちを指導しているんですか?
軍神:関わるすべての人たちの人生を彩り、ホスト業界と社会を繋ぐこと、それが自分のミッションだと思って指導をしています。自分はお金持ちになりたいとか、成功したいとか、そういう欲は一切ないんです。その人がより良くなる手助けをする、人を幸せにする、それが自分の人生の意味なので。これからもそのために生きていきます。
<取材・文/ささきみどり 撮影/瑞姫>
【ささきみどり】
ライター、インタビュアー。建築会社勤務後、出版社、編集プロダクションを経てフリーに。女性誌、ライフスタイルを中心に執筆。趣味は温冷浴とスクラッチキャットのぬい撮り。ぬいぐるみをさも生きている風に撮ることに命がけ。
Instagram:@midori6497
ホストとして売上を上げるだけでなく、人間力も高める軍神の指導法はビジネスの場面や日常の人間関係にも応用できると大好評! そこで、『愛のハイエナ』の中でもバズった「褒め方の技術」をはじめ、成長を促す見守り方や叱り方など、職場や家庭で今日から使えるコーチング術を軍神にレクチャーしてもらった。
◆褒める、叱る、その行為自体に意味はない
――軍神の指導は厳しいけど愛がある。キャストからも慕われている。軍神流の上司心得があったりするんですか?
軍神:「相手を知る努力をする」と「相手のこれからを思って指導をする」、その2点を大事にしています。特に、「相手を知る」、「その人をしっかり見る」そこは関係性を築いていく上で必須の部分なので。自分の言葉を受け入れてもらえるかどうかはそこにかかっているので。
軍神:普段、自分を見もしない人に怒られると腹立ちません? 見てもいないくせにって。逆に良い結果を出したときだけ褒めてくる人も腹立ちません?
――たしかに。
軍神:自分を知ろうともしない相手の言葉って響かないんです。褒める、叱る、その行為自体にはそんなに意味はない。「この人はいつも私のことを見てくれている」が大事なんです。そこで関係値が築けていたら、叱っても愛だし、褒められたら素直に嬉しい。もっと頑張ろうってなるんです。
◆成果を見るのではなくその人自身に目を向ける
――指導には「相手を知るステップ」がまず必要ということ?
軍神:そうです。仕事の向き合い方、価値観、仕事終わりはどんなふうに過ごしているのか、趣味は何か…。ちゃんと相手を見て知る。「私はちゃんとあなたを見ていますよ」という“承認”を相手が認知することではじめて言葉は入ってくるんです。それは職場でも家庭でも一緒ですよね。そこができていたら厳しく叱っても愛されます。そのために普段からコミュニケーションを取る。
――人を育てるって手間ひまかかるんですね!
軍神:指導って本来そういうものです。でもね、変にあれこれ聞かなくても、興味関心を持ってその人を見る、気に掛ける、それだけで全然違うと思います。その人の能力や成果に興味を持つのではなく、その人自身に興味を持てば情報は自然と入ってくるので。
◆相手を幸せにするための『利他褒め』
――『愛のハイエナ』では「短文で褒めない。根拠となる前提文を作ってから褒める」という褒めの技術がバズりましたが、前提文ってパッと思いつくものなんでしょうか?
軍神:あのときの前提文は、「ショートカットってかわいい女の子しか似合わないよね」でしたね。基本、前提の部分は原理原則をそのまま言えばいいです。「これはこういうものだよね」っていう部分。かわいい女の子がショートカットが似合うのは原理原則ですから。「顔が小さい女の子しか似合わないよね」でもいいですね。これも原理原則。
軍神:でも、技術に走らなくても“褒め”には大事なポイントがあって。自分がいつも言っているのは『利他褒め』です。利他的に褒める。これは、「相手のために叱る」の逆で、「相手のために褒める」。そこを考えていったら褒めるポイントはいくらでも出てきますよ。
――『利他褒め』初めて聞きました。
軍神:自分が勝手に作った言葉なので、知らなくて当然です(笑)。お世辞ってその人に良く思われたいから褒める行為じゃないですか。その逆と思ってください。その人を幸せにするために褒めるんです。相手を肯定する褒め方、それが「利他褒め」です。
ショートカットの例で言えば、ロングヘアの人がばっさり髪を切ったとき、欲しい言葉は「ショートカットのあなたも素敵だよ」という肯定ですよね。こちらの好みや印象どうこうじゃない。その褒めは誰のためになっているのか? その人のためなんです。「似合うね」と言われたら嬉しいじゃないですか。嬉しいってことはそこで何かしらの生産性を生むんです。たとえば笑顔とか。気分がよくなるっていうことも生産性ですよね。
◆職場において「叱る」と「褒める」は理性
軍神:「相手を幸せにする」という視点に立つと、人が褒められたいところ、肯定されたいところが見えるようになってきます。職場や家庭、友人関係、いろんな集団のなかで『利他褒め』をして下さい。生産性を生みますから。家族間であれば家庭円満、会社であれば成果を上げることにつながります。
職場に嫌な上司やムカつく部下がいるなら、部署やチームの人全員でその人を褒めまくってください。上司であれば「○○さんに相談すると的確な答えをくれるので嬉しいです」とかね。こういったことを全員に言われてみて下さい。「あ、自分ってそういうやつなんだ」と、ポジティブな部分を伸ばしたくなる。もっとみんなのために頑張ろうという意識になる。承認を満たされると気持ちいいですから、もっと貢献したくなるんです。
――嫌いな人を褒めるのは嘘臭くなりそうな気が…。
軍神:大丈夫! ムカつく人でも良いところは必ずあります。それも「相手を知る」です。人に嫌われたくて行動する人なんかいない。それなのになぜ嫌われてしまうかというと、それが嫌われる行動だとわかってないから。そこを踏まえ上で相手を知っていくと良いところも見えてくる。そこを褒めまくるんです。
――感情は置いといて良いところ褒める?
軍神:そう、職場において叱ると褒めるは理性です。ムカつくからで叱らない。好きだからで褒めない。ちゃんと相手のことを思って叱る、褒める。すべては彼らを良い方向に導くためです。
◆後輩や子供にはたくさん失敗をさせてあげよう
――部下や後輩、あるいは子供が失敗しそうなとき、つい口を出したくなりますが、上手な見守り方や方向の正し方はありますか?
軍神:そこはちゃんとタイミングを見計らう。「こういうことをしたらこうなるよ」といくら知識を授けても、知識と体験が合わさらないと経験にならないので学べない。フォローする心構えだけしておいて、失敗するであろう前提で見守る。人を育てるのはこれがベースです。
明らかに失敗するとわかることであれば、おおまかに「こうなると思うけど、まあやってみなさい」と言っておくのはいいと思います。それで失敗したら「あの人の言っていたことは本当だったんだ」と信頼関係も作れますし。
自分の場合、「たくさん失敗しなさい」と思ってます。自分もたくさん失敗してきましたしね。世の中の人はみんな失敗しまくるから、いいんですそれで。失敗して落ち込みましょう。落ち込んだときが上司や先輩、親が出陣するタイミングです。そのときにメンタリングとコーチングをするんです。
◆絶対にやっちゃいけないこととは?
軍神:部下や後輩、子供が失敗したとき、「ほら見ろ!」と責めないことも指導のポイントです。「でもね、経験をして一個成長できるんだから、今落ち込んだり悩んだりしていることは素敵なことなんだよ」と、起きてしまったことを肯定してあげる。そうじゃないと、失敗を恐れて行動しない人間になってしまうので。失敗を責める、それは絶対にやっちゃいけない。
――たしかに。軍神は失敗して落ち込んでいる人を責めないですね。
軍神:失敗を上司や親が責めると、「失敗したくない、怒られたくない」で、顔色をうかがう人間になるだけで本人の成長につながらない。「いいじゃないの、思い切ってやって失敗しなさいよ。自分がケツも拭くしフォローもするから。安心して行ってらっしゃい」というのが自分のやり方です。
――最後に一つ。軍神はどんな未来を描いてホストたちを指導しているんですか?
軍神:関わるすべての人たちの人生を彩り、ホスト業界と社会を繋ぐこと、それが自分のミッションだと思って指導をしています。自分はお金持ちになりたいとか、成功したいとか、そういう欲は一切ないんです。その人がより良くなる手助けをする、人を幸せにする、それが自分の人生の意味なので。これからもそのために生きていきます。
<取材・文/ささきみどり 撮影/瑞姫>
【ささきみどり】
ライター、インタビュアー。建築会社勤務後、出版社、編集プロダクションを経てフリーに。女性誌、ライフスタイルを中心に執筆。趣味は温冷浴とスクラッチキャットのぬい撮り。ぬいぐるみをさも生きている風に撮ることに命がけ。
Instagram:@midori6497