南海トラフ地震への注意が叫ばれる昨今。静岡県は、地下で4つのプレートが接していることや、多くが海に面していること、富士山に近いことなどから、かねてから大地震に襲われると言われてきました。そのため、静岡県民にはとてつもない防災意識が備わっているといいます。
その意識は他の県では考えられないレベルなのだとか…!? 静岡県で生まれ育ち、大学進学を機に上京してきた元静岡県民の千穂さん(仮名・44歳)に聞きました。
◆避難訓練は命がけ。ふざけてると「死にますよ!」
静岡県民はみな、幼い頃から学校や家庭で「いつか必ず東海地方に大地震が来る」と刷り込まれ、地震から生き延びるための教育を受けて育っていると千穂さんは話します。
「小学校の避難訓練では、先生がストップウォッチを持ってタイムを計っているんです。おしゃべりをしていたり、ノロノロしていたりすると先生に『学校までの津波到達予測は7分です。そんな態度ではあなたたちはすでに死んでいますよ!』などと叱られました。
避難訓練の時間は知らされず、授業中や給食時間はお構いなしのサプライズでした。年に何度も実施しますが、いつも先生たちは真剣なんです」
私達にとっては“笑えるギャグマンガ”である『ちびまる子ちゃん』のある回に関しても、千穂さんの捉え方は少し違ったよう。
「まる子たちが避難訓練をする『避難訓練に余念のない県民』という回があるんですが、盛り込まれるエピソードに“あったあった!”と共感する静岡県民は多いと思います。脚色は少々あると感じますが、ふざけていた生徒が全校生徒の前でさらしあげになる姿などは、けっこう“ガチ”ですね」
◆上京してびっくり。他県民との防災意識の違い
また、小学生の頃から地震防災教育をされているために、大人になってからもこんなことがあったそうです。
「大学時代、他県出身の友人とルームシェアをした際、タンスや本棚の大型家具を突っ張りなどで耐震補強しておらず『その部屋でよく眠れるなぁ』と価値観を疑いました」
「また、結婚してから夫と最初に話し合いになったのが、風呂に水をためておくか否かです。潔癖(けっぺき)な夫は最後に風呂に入ったら、すぐ水を抜いて掃除する人だったんですが、私は何かあった時のために風呂の水をためておくことが習慣。
最終的には夫の意見を聞き入れましたが、実は毎日が不安でたまりません……」
千穂さんの家の玄関には、非常用リュックやヘルメットももちろん常備されているといいます。
「家に人が来るたびにいつも驚かれるんですが、逆に『みんな置いてないの!?』と不思議です」
◆住む家は耐震を最要視。ハウスメーカーも余念がない
また、引越し先にもこだわりがあるとか。首都圏でのハウスメーカーCMは「まっすぐ帰りたくなるような家に」「洗練された居住空間」などと雰囲気重視のもの目立ちますが、静岡県ではちょっと違うようです。
「確認するのはまず、施行会社と耐震性です。県内のハウスメーカーのCMも耐震性をうたったものが多いですよ。東京に出てきた今でも、ハウスメーカーの『♪百年住宅~』とか『♪地震に強い家 セキスイハイム』などという、地震に強い家をアピールしたCMのフレーズが頭から離れません」
それは千穂さんだけではなく、同県出身の友人も「家を借りる際、親が耐震性に強いあるメーカーや施工会社の物件でないと許してくれなかった」のだと言います。
「不動産会社も慣れているのか、施工会社を聞けばすんなり答えてくれます」
また、地域によっては、頑丈で階数のある一般家庭が避難場所に指定されていることもあるのだとか。
「親戚の家は川や海に近い5階建てのビルだったため、地域から指定された津波の避難場所になっていました。毎年夏になると、近所の人たちを呼び、屋上で花火見物をするのですが、親戚に聞けば実はこれも『有事の時に遠慮なく入ってこれるように』という訓練の一部みたいです」
防災が生活や年中行事に根付いているからこそなのでしょう。
◆ちょっと過剰?「考えすぎ」と批判を浴びることも…
一方で、何十年にもわたって「大地震が来る」と構えている静岡県民は、いざ小さな震度であっても「Xデーが来た!」と極度に神経質になったり、過剰になってしまうという側面もあるそうです。
「大きめの地震が起こった際、数日後にママ友と予定していたレジャーの中止を呼び掛けたところ、『考えすぎ』と猛反発を受けました。結局決行し、無事に何も起こらず安心したのですが『だから言ったでしょ』と得意げなママ友にイラっとしました」
「ある大地震が起こった際にはSNSで被害地域の備えの不備を指摘し、今後の懸念を述べました。親切心のつもりだったのですが、他県のフォロワーに『寄り添って欲しい』と注意されてしまいました……」
謙虚な県民性と言われる静岡県民ですが、なぜか防災に関してはグイグイ前に出たり、上から目線になって言及しまうのだと千穂さんは言います。
「備えることに疎い他県民を下に見たり、相手の立場に立たない空気を読まない発言をしないよう気を付けたい」とも話しました
========
静岡県民の防災意識は、他県民にとっては多少オーバーに思えたり、不安になりすぎだと感じてしまう所はあるかもしれません。しかし、危険性を考えれば当然のこと。その備えはきっと無駄ではないはずです。
これをきっかけにいま一度、自宅や自分の意識の中の防災対策を見直してみてもいいかもしれませんね。
<文/小政りょう>
【小政りょう】
映画・テレビの制作会社等に出入りもするライター。趣味は陸上競技観戦
その意識は他の県では考えられないレベルなのだとか…!? 静岡県で生まれ育ち、大学進学を機に上京してきた元静岡県民の千穂さん(仮名・44歳)に聞きました。
◆避難訓練は命がけ。ふざけてると「死にますよ!」
静岡県民はみな、幼い頃から学校や家庭で「いつか必ず東海地方に大地震が来る」と刷り込まれ、地震から生き延びるための教育を受けて育っていると千穂さんは話します。
「小学校の避難訓練では、先生がストップウォッチを持ってタイムを計っているんです。おしゃべりをしていたり、ノロノロしていたりすると先生に『学校までの津波到達予測は7分です。そんな態度ではあなたたちはすでに死んでいますよ!』などと叱られました。
避難訓練の時間は知らされず、授業中や給食時間はお構いなしのサプライズでした。年に何度も実施しますが、いつも先生たちは真剣なんです」
私達にとっては“笑えるギャグマンガ”である『ちびまる子ちゃん』のある回に関しても、千穂さんの捉え方は少し違ったよう。
「まる子たちが避難訓練をする『避難訓練に余念のない県民』という回があるんですが、盛り込まれるエピソードに“あったあった!”と共感する静岡県民は多いと思います。脚色は少々あると感じますが、ふざけていた生徒が全校生徒の前でさらしあげになる姿などは、けっこう“ガチ”ですね」
◆上京してびっくり。他県民との防災意識の違い
また、小学生の頃から地震防災教育をされているために、大人になってからもこんなことがあったそうです。
「大学時代、他県出身の友人とルームシェアをした際、タンスや本棚の大型家具を突っ張りなどで耐震補強しておらず『その部屋でよく眠れるなぁ』と価値観を疑いました」
「また、結婚してから夫と最初に話し合いになったのが、風呂に水をためておくか否かです。潔癖(けっぺき)な夫は最後に風呂に入ったら、すぐ水を抜いて掃除する人だったんですが、私は何かあった時のために風呂の水をためておくことが習慣。
最終的には夫の意見を聞き入れましたが、実は毎日が不安でたまりません……」
千穂さんの家の玄関には、非常用リュックやヘルメットももちろん常備されているといいます。
「家に人が来るたびにいつも驚かれるんですが、逆に『みんな置いてないの!?』と不思議です」
◆住む家は耐震を最要視。ハウスメーカーも余念がない
また、引越し先にもこだわりがあるとか。首都圏でのハウスメーカーCMは「まっすぐ帰りたくなるような家に」「洗練された居住空間」などと雰囲気重視のもの目立ちますが、静岡県ではちょっと違うようです。
「確認するのはまず、施行会社と耐震性です。県内のハウスメーカーのCMも耐震性をうたったものが多いですよ。東京に出てきた今でも、ハウスメーカーの『♪百年住宅~』とか『♪地震に強い家 セキスイハイム』などという、地震に強い家をアピールしたCMのフレーズが頭から離れません」
それは千穂さんだけではなく、同県出身の友人も「家を借りる際、親が耐震性に強いあるメーカーや施工会社の物件でないと許してくれなかった」のだと言います。
「不動産会社も慣れているのか、施工会社を聞けばすんなり答えてくれます」
また、地域によっては、頑丈で階数のある一般家庭が避難場所に指定されていることもあるのだとか。
「親戚の家は川や海に近い5階建てのビルだったため、地域から指定された津波の避難場所になっていました。毎年夏になると、近所の人たちを呼び、屋上で花火見物をするのですが、親戚に聞けば実はこれも『有事の時に遠慮なく入ってこれるように』という訓練の一部みたいです」
防災が生活や年中行事に根付いているからこそなのでしょう。
◆ちょっと過剰?「考えすぎ」と批判を浴びることも…
一方で、何十年にもわたって「大地震が来る」と構えている静岡県民は、いざ小さな震度であっても「Xデーが来た!」と極度に神経質になったり、過剰になってしまうという側面もあるそうです。
「大きめの地震が起こった際、数日後にママ友と予定していたレジャーの中止を呼び掛けたところ、『考えすぎ』と猛反発を受けました。結局決行し、無事に何も起こらず安心したのですが『だから言ったでしょ』と得意げなママ友にイラっとしました」
「ある大地震が起こった際にはSNSで被害地域の備えの不備を指摘し、今後の懸念を述べました。親切心のつもりだったのですが、他県のフォロワーに『寄り添って欲しい』と注意されてしまいました……」
謙虚な県民性と言われる静岡県民ですが、なぜか防災に関してはグイグイ前に出たり、上から目線になって言及しまうのだと千穂さんは言います。
「備えることに疎い他県民を下に見たり、相手の立場に立たない空気を読まない発言をしないよう気を付けたい」とも話しました
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静岡県民の防災意識は、他県民にとっては多少オーバーに思えたり、不安になりすぎだと感じてしまう所はあるかもしれません。しかし、危険性を考えれば当然のこと。その備えはきっと無駄ではないはずです。
これをきっかけにいま一度、自宅や自分の意識の中の防災対策を見直してみてもいいかもしれませんね。
<文/小政りょう>
【小政りょう】
映画・テレビの制作会社等に出入りもするライター。趣味は陸上競技観戦