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幼い娘を連れ3年間「車中泊」旅をした男性が語る“子どもの勉強を見るより大切なこと”

女子SPA! 2024年9月3日 8時47分

 こんにちは、コラムニストのおおしまりえです。

 2020年、東京都内に住んでいた西川こみあげさん(44歳)家族はキャンピングカーでの車中泊生活をスタート。それから3年間ほど、出発当時2歳だった娘のことちゃんとともに家族3人で日本全国を巡っていました。

 その様子は、YouTubeチャンネル「ビビりの家族が行くキャンピングカー生活」でも多数配信されています。車中泊生活自体も勇気がいることですが、それを子連れで行うのは、なかなかできることではありません。

 旅の発案者である夫のこみあげさんは、前回の記事では当時を振り返り、車中泊での子育てについて、「メリットしかない」と話していました。

 今回はさらに踏み込み、実際の育児で発生するであろう問題について、どう対応したのか教えていただきました。

◆コロナ禍の旅は「人々の温かさが身に沁みた」

 子どもというのは、どんな健康な子でも体調を崩すことは避けられませんし、健やかな成長を見守るという意味では、定期健診などのケアも必要になります。また、保育園や幼稚園などに通うようになると、地域とのつながりも生まれていきます。

 車中泊生活は定住場所が定まらないわけですが、こうした子育てに紐づくタスクは、どう対応していたのでしょうか。

「3歳児健診は、僕の実家がある北海道に戻ってきたタイミングで受けていました。車中泊生活中の住民票は、北海道に置いたり、長期滞在する場合はその土地に移したりもしました。例えば、鹿児島のトカラ列島に移住していた時期がありますが、その時は子どもを通園させたい関係で、鹿児島に住民票を移していましたね」

 こみあげさんが車中泊生活を行っていた期間は、コロナ禍真っ只中の2020年です。この頃は、県外から来る人への風当たりも強かったと思いますが、車中泊に影響はなかったのでしょうか。

「現地の人々との交流には地域差がありましたが、基本的にはどの土地でもウェルカムな空気を感じました。当時はニュースで大々的に報道され、人と人との距離が難しい時期でしたが、だからこそ受け入れてくれる人々の温かさが身に沁みました。日本という国の素晴らしさを改めて感じました」

◆車中泊子育てで気をつけたのは“YouTubeの見せすぎ”

 車中泊子育ての最中に気をつけるべきこと。これを事前に考えたとき、筆者が思い浮かんだことはケガでした。自然の中で転んだり虫に刺されたりなど、さぞサバイブした勲章があるだろうと思い質問をぶつけると、こみあげさんからの回答は意外にも「YouTubeを見させすぎないこと」との回答が……そこは普通の家庭と同じなのでしょうか?

「車中泊生活中は、YouTubeやテレビの見すぎには気をつけました。動画の視聴は否定しませんが、僕ら夫婦は、子どもの『リアルな体験』を重要視していたので、なるべく動画視聴しないで済むようにしていました。それでも仕方ないときは、時間を区切ったり、視聴後に『何を見たのか』などコミュニケーションを取ることで、娘のバランスを考えサポートするようにしていました。

キャンピングカーで生活することの最大のデメリットは、天候に日々の生活が大きく左右されることです。天気が悪い日が続くと、電気も作れないのでやることがなくなります。道の駅など施設を利用することもありますが、なかなか近隣で見つからないケースもあります。そういう時には、スマホを渡すこともありますが、見せすぎには本当に気をつけますね。

あとは健康管理には気をつけますが、避けられない部分はあります。ちなみに車中泊中に1人が風邪を引くと、全員もれなくうつります。一時保育に通わせた際に、娘がコロナをもらってきた際は、その後夫婦も感染しましたね」

 こうした経験は、一見すると不自由も多いように感じますが、こみあげさんは「旅をしてると腹がすわる」と語ります。普通の生活とは違う困り事も多いからこそ、一つひとつを対処する中で、より人間的になれるのだと言います。

◆小学生になった娘は「集団生活にも馴染めている」

 車中泊育児に限らず、“特徴的な子育て”を送った場合、子どもが良くも悪くも“個性的”に育つことがあり、その結果、集団生活に馴染めないことがあると聞いたことがあります。

 あくまでもこれは筆者が聞くイメージですが、こみあげさんの場合はどうなのでしょう。

「車中泊子育てをするデメリットを、僕自身は現状感じていません。娘は現在小学1年生ですが、すごく積極的で社交的な子どもに育っています。集団生活に馴染めないといったことはなく、小学校も大好きです。僕らも常々娘には『人の目をそこまで気にせずやりたいことをやってね』と伝えているので、それが効いているかなと思っています」

◆大切なのは「夫婦が一致した方針で子どもに寄り添うこと」

 また車中泊生活中は、学習面でのケア(ひらがな等の先取り習得)は行わなかったといいます。筆者の周りでは、当たり前のように読み書きを早期に教える家庭も多いです。現在小学生となった娘さんの学習面については、当時どう考えていたのでしょう。また、現在の様子も教えていただきました。

「僕ら夫婦としては、2~5歳の時期に学習することも重要かもしれませんが、草がなんで生えているのかをリアルに知ったり、親と一緒に過ごす経験をより重要視したいと考えました。これは親の考え方次第だと思いますが、私たちの場合は、車中泊生活中に娘の感性を直接刺激する体験をたくさんさせ、教えていくことに重きを置きました。

娘は集団生活に問題なく馴染めていますし、勉強や給食も楽しんでいるようです。とはいえ、これから成長していったらどうなるかはわかりません。どうなったとしても、夫婦でちゃんと話し合い、一致した方針で寄り添っていくことが重要ではないでしょうか。

子どもにどういう学習経験を積んでもらうかより、夫婦の関係をきちっとしていくことが大事かなと僕は考えます。具体的には、ちゃんと会話し、考えていることを一致させる時間を取るということです。車中泊生活中は一緒の時間が長いぶん、この考えの重要性は痛感しましたね」

 車中泊生活について、娘さんも当時を振り返るとポジティブな言葉が多いようで、「また宝島(鹿児島県トカラ列島にうかぶ人口約130人の島)に行きたい」など、思い入れのある土地に思いを馳せることもあるのだとか。

 2~5歳という時期だからこそ実現する生活スタイルですが、3年という長期でなくとも、自然としっかり触れ合い子どもの感性を刺激する生活は、筆者も思わず「いいな~」という言葉が漏れてしまうのでした。

<取材・文/おおしまりえ>

【おおしまりえ】
コラムニスト・恋愛ジャーナリスト・キャリアコンサルタント。「働き方と愛し方を知る者は豊かな人生を送ることができる」をモットーに、女性の働き方と幸せな恋愛を主なテーマに発信を行う。2024年からオンラインの恋愛コーチングサービスも展開中。X:@utena0518

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