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「原作に忠実じゃない」不倫ドラマが、大ヒットした理由。マンガ原作者が喜んだ”変更点”とは。プロデューサーに聞く

女子SPA! 2024年9月2日 18時20分

 専業主婦の如月みのり(松本まりか)が、妻に隠れて“もう一つの家庭”を持っていた夫・勇大(竹財輝之助)に復讐する様子を描いた不倫ドラマ『夫の家庭を壊すまで』(テレ東系、月曜よる11時6分~)。本作は赤石真菜氏が原作・脚本、MUGEN FACTORYが作画制作を手がけた同名漫画が原作になっている。

 8月にはTVerのドラマ部門のランキングで1位を獲得するなど、注目度を上げている本作。今回ドラマ化した経緯、制作するうえでの苦労など、本作のプロデューサーを務める祖父江里奈氏(テレビ東京)に話を聞いた。

◆熱量を生む“不倫・復讐コンテンツ”の勢い

 まず本作をドラマ化するに至った経緯として、原作の面白さを挙げつつ、「不倫・復讐を扱ったコンテンツの勢いがすごいからです」という。

「不倫は古くからの人気ジャンルです。最近でも『サレ』『シタ』などSNSに不倫関連の言葉が散見され、いずれも大きな反響を集めています。こういった現状が良いか悪いかを判断する立場に私はありませんが、熱量を生むトピックであることは間違いありません。そういった背景からドラマ化するに至りました」

 続けて、祖父江氏は「不倫・復讐モノに頼ってしまうと、『不倫ドラマばかり作っているテレビ局』というイメージがついてしまいやすい。なにより、似たり寄ったりな作品が多くなってしまい、結果的にドラマのクオリティを落としかねません」と不倫・復讐モノという“劇薬”に頼りすぎることの危険性も口にする。

 また、原作は漫画アプリ「HykeComic」で2023年10月から連載を開始している。連載開始から1年以内でドラマ化というのは少々早すぎな気もするが、「毎クール40本以上のドラマがスタートする今の時代、各テレビ局だけではなく動画配信プラットフォームも、面白い作品を見つけると早い段階でドラマ化に向けたアプローチを始めます。加えて、ドラマ化が決まった時点で原作の第1章は完結した時期ですので、本作のドラマ化が早すぎるということはありません」と語った。

◆縦スクロールのウェブ漫画が原作だからこその苦労

 漫画原作のドラマは珍しくないが、本作は“ウェブトゥーン(スマホで読みやすく作られた縦スクロール漫画)”が原作である。ページをめくって読み進めるタイプの漫画と比較して、ウェブトゥーンを原作にする場合、ドラマ制作において異なる点はあるのだろうか。祖父江氏は「少なくないです」と回答。

「まず、ウェブトゥーンは次々とクリックさせて読ませるコンテンツなので、続きが気になるように刺激的な内容で物語の展開が早いのが特徴です。

 登場人物の心理描写が丁寧に描かれた内容よりは、ジェットコースターのような目まぐるしいストーリーが展開される内容のほうが好まれやすい。

 とはいえ、ぶっ飛んだ展開は二次元だからこそ成立しており、生身の人間が演じると視聴者の違和感につながります。そこで、原作の面白さを生身の人間が演じても伝わるように、脚本作りをはじめ、制作チームではいろいろな場面でかなりの時間を使い話し合いました」

◆ドラマについて「原作者が喜んでくれた」部分は

「生身の人間が演じても違和感を与えない脚本を作る」ということは、オリジナル要素を多く足すことを意味する。実際、本作は原作通りにストーリーが進むものの、合間合間に原作では見られないシーンも少なくない。そのため、原作者にオリジナル要素を追加して良いのかを確認する作業も多かったようで、「原作者の赤石さんとは本当に密にコミュニケーションを取りました」と振り返る。

 1つの話が完成した時には毎回赤石さんに完成品を送るのですが、いつも喜びの感想をいただきました。その中には『自分が描きたかったけど描けなかった部分をドラマで描いてもらえて良かったといった声もあり、本当に『ドラマ化して良かった』と感じる瞬間でした」

◆ドラマの役者陣へ事前に伝えたこと

 さらには、役者陣には事前に「役を原作のキャラクターに無理に寄せて演じてほしいとは思っていません」と伝えたという。漫画原作のドラマ化とは違う配慮が発生するため、制作陣としてはいろいろと考えを巡らせる必要があったことが伺える。

 とはいえ、その甲斐あって、ドラマだからこその登場人物の繊細な心理描写が丁寧に描かれつつも、ウェブトゥーンらしい派手な展開も楽しめるドラマに仕上がっていた。原作の持つ派手さと、制作陣が作り上げた繊細さをどちらも楽しめる本作が、今後どのように展開を見せるのか楽しみだ。

<取材・文&人物写真/望月悠木>

【望月悠木】
フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。Twitter:@mochizukiyuuki

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