女子SPA!で大きな反響を呼んだ記事を、ジャンルごとに紹介します。こちらは、「びっくり体験」ジャンルの人気記事です。(初公開日は2021年8月28日 記事は取材時の状況)
==========
ご近所付き合いはとても難しいものです。近所に住んでいるからこそ、今後のことを考えると安易にむげにすることもできません。なかには夫には言えないドロ沼情事にハマってしまった主婦もいます。
今回紹介するエピソードの主人公は瑠美さん(仮名・39歳)。結婚生活12年目に突入する、夫婦2人暮らしです。夫の一馬さん(仮名・42歳)は市役所職員で慎ましやかながらも、平穏な結婚生活を送っていました。5年前までは……
◆隣に住む初老の独身男性
瑠美さんの住むマンションの隣室に住む後藤さん(仮名・62歳)こそが、災いの元凶となる人物。
「だいぶ前に奥さんを亡くされて、一人息子もとっくのとうに家を出てしまったようです。後藤さんはそれから一人でマンションに住んでいます」
瑠美さんの田舎から届いた野菜をお裾分けした時のことでした。野菜を届けた数分後に玄関のチャイムが鳴り、後藤さんが現れます。何事かと思っていると、
「どうやら、後藤さんは焼き茄子を作って食べたかったみたいなんですけど、どうやって調理したら良いか分からなくて、私に聞きにきたのでした」
元来世話好きな瑠美さんは、後藤さん宅の台所に上がり込み、焼き茄子の料理方法をレクチャーしてあげることにしました。これが5年前のことであり、全ての始まりでした。
◆「これ以上は無理です」とお断り
それからというもの「通販で買った金目鯛の味噌漬けはどうやって焼くのか?」、「とうもろこしは茹でる方がよいのかレンジでチンする方がよいのか?」など、堰(せき)を切ったように聞いてくるようになりました。それは純粋に料理方法を聞きたいというよりも、瑠美さんとの繋がりが恋しいからのように感じられたそうです。
「さすがに頻度も多すぎましたし、私には夫がいますので、『最近少々忙しいので、これ以上は料理のレクチャーはできません』と後藤さんに直接お伝えしました」
後藤さんは、自分の要求が瑠美さんの負担になっていたことに気が付き、悲しそうな表情をして、「ごめんなさい」と謝罪し、自室へ帰っていきました。
◆困ってる人を放っておけないタイプ
瑠美さんは、根っからの世話好きで、困っている人や悲しんでいる人がいたら放っておけないタイプです。後藤さんのお願いを断った翌日から、彼のことがずっと気掛かりになってしまっていました。
「でも、こんなこと夫に相談なんてできません。それに『お前が優柔不断で色々なところに首を突っ込むのがいけないんだ。はっきり断ったんだし、以降はノータッチ!』と夫に言われることは容易に想像がつきます。でもね…」
◆料理レクチャーの再開を申し出る
瑠美さんはとても優しい性格をしているため、後藤さんの悲しそうな表情が脳裏から離れませんでした。それから一週間悩み抜いた挙げ句に、瑠美さんの方から後藤さん宅に出向き、レクチャーは止めない旨を伝えました。
「そのときに、玄関先に現れた後藤さんは、少しやつれて、たった一週間の間に随分老け込んでしまったように見えました」
しかし、瑠美さんがレクチャーの再開の旨を伝えると、ふたたび満面の笑みを浮かべ、「ありがとう、ありがとう」と何度も感謝の言葉を述べたそうです。
◆このままでいいのか、自問自答を続けた5年間
それから月日が経つのは早いものであっという間に5年間が過ぎました。この5年間、付かず離れずの関係が続き、たびたび料理のレクチャーをしに、後藤さん宅にあがっているそうです。
「本当にこのままでいいのかなあ。どうなんでしょう。これってどういう関係だと思いますか?」と筆者に尋ねる瑠美さん。とても優しそうな人柄が伝わってきました。
肉体関係があるとか不倫をしているというわけではなく、料理のレクチャーをする程度の関係が続いているだけです。
◆何となく後ろめたい
「何となく罪悪感があって後ろめたい気持ちもあります。だからでしょうね。夫にはいまだに打ち明けられずにいます。いったい、いつまでこれが続くのでしょうね。どっちかが死ぬまで続くのかもしれません」
そう言って瑠美さんは「はあ」と短くため息をつきました。
ご近所付き合いの心地よい距離の取り方というのはとても難しいものです。
<文/浅川玲奈 イラスト/とあるアラ子>
【浅川玲奈】
平安京で生まれ江戸で育ったアラサー文学少女、と自分で言ってしまう婚活マニア。最近の日課は近所の雑貨店で買ってきたサボテンの観察。シアワセになりたいがクチぐせ。
==========
ご近所付き合いはとても難しいものです。近所に住んでいるからこそ、今後のことを考えると安易にむげにすることもできません。なかには夫には言えないドロ沼情事にハマってしまった主婦もいます。
今回紹介するエピソードの主人公は瑠美さん(仮名・39歳)。結婚生活12年目に突入する、夫婦2人暮らしです。夫の一馬さん(仮名・42歳)は市役所職員で慎ましやかながらも、平穏な結婚生活を送っていました。5年前までは……
◆隣に住む初老の独身男性
瑠美さんの住むマンションの隣室に住む後藤さん(仮名・62歳)こそが、災いの元凶となる人物。
「だいぶ前に奥さんを亡くされて、一人息子もとっくのとうに家を出てしまったようです。後藤さんはそれから一人でマンションに住んでいます」
瑠美さんの田舎から届いた野菜をお裾分けした時のことでした。野菜を届けた数分後に玄関のチャイムが鳴り、後藤さんが現れます。何事かと思っていると、
「どうやら、後藤さんは焼き茄子を作って食べたかったみたいなんですけど、どうやって調理したら良いか分からなくて、私に聞きにきたのでした」
元来世話好きな瑠美さんは、後藤さん宅の台所に上がり込み、焼き茄子の料理方法をレクチャーしてあげることにしました。これが5年前のことであり、全ての始まりでした。
◆「これ以上は無理です」とお断り
それからというもの「通販で買った金目鯛の味噌漬けはどうやって焼くのか?」、「とうもろこしは茹でる方がよいのかレンジでチンする方がよいのか?」など、堰(せき)を切ったように聞いてくるようになりました。それは純粋に料理方法を聞きたいというよりも、瑠美さんとの繋がりが恋しいからのように感じられたそうです。
「さすがに頻度も多すぎましたし、私には夫がいますので、『最近少々忙しいので、これ以上は料理のレクチャーはできません』と後藤さんに直接お伝えしました」
後藤さんは、自分の要求が瑠美さんの負担になっていたことに気が付き、悲しそうな表情をして、「ごめんなさい」と謝罪し、自室へ帰っていきました。
◆困ってる人を放っておけないタイプ
瑠美さんは、根っからの世話好きで、困っている人や悲しんでいる人がいたら放っておけないタイプです。後藤さんのお願いを断った翌日から、彼のことがずっと気掛かりになってしまっていました。
「でも、こんなこと夫に相談なんてできません。それに『お前が優柔不断で色々なところに首を突っ込むのがいけないんだ。はっきり断ったんだし、以降はノータッチ!』と夫に言われることは容易に想像がつきます。でもね…」
◆料理レクチャーの再開を申し出る
瑠美さんはとても優しい性格をしているため、後藤さんの悲しそうな表情が脳裏から離れませんでした。それから一週間悩み抜いた挙げ句に、瑠美さんの方から後藤さん宅に出向き、レクチャーは止めない旨を伝えました。
「そのときに、玄関先に現れた後藤さんは、少しやつれて、たった一週間の間に随分老け込んでしまったように見えました」
しかし、瑠美さんがレクチャーの再開の旨を伝えると、ふたたび満面の笑みを浮かべ、「ありがとう、ありがとう」と何度も感謝の言葉を述べたそうです。
◆このままでいいのか、自問自答を続けた5年間
それから月日が経つのは早いものであっという間に5年間が過ぎました。この5年間、付かず離れずの関係が続き、たびたび料理のレクチャーをしに、後藤さん宅にあがっているそうです。
「本当にこのままでいいのかなあ。どうなんでしょう。これってどういう関係だと思いますか?」と筆者に尋ねる瑠美さん。とても優しそうな人柄が伝わってきました。
肉体関係があるとか不倫をしているというわけではなく、料理のレクチャーをする程度の関係が続いているだけです。
◆何となく後ろめたい
「何となく罪悪感があって後ろめたい気持ちもあります。だからでしょうね。夫にはいまだに打ち明けられずにいます。いったい、いつまでこれが続くのでしょうね。どっちかが死ぬまで続くのかもしれません」
そう言って瑠美さんは「はあ」と短くため息をつきました。
ご近所付き合いの心地よい距離の取り方というのはとても難しいものです。
<文/浅川玲奈 イラスト/とあるアラ子>
【浅川玲奈】
平安京で生まれ江戸で育ったアラサー文学少女、と自分で言ってしまう婚活マニア。最近の日課は近所の雑貨店で買ってきたサボテンの観察。シアワセになりたいがクチぐせ。